乾癬(かんせん)とは?
早期の受診と診断で、適切な治療へ
多恵皮ふ科
(蕨市/戸田駅)
最終更新日:2023/03/28


- 保険診療
慢性の皮膚疾患、乾癬(かんせん)。聞いたことはあるが、具体的にどのような病気なのか、またどのような治療法があるのかなどは、あまりよく知られていないのが現状だ。一般的な乾癬の症状とその変遷としてはまず皮膚に赤い発疹ができ、盛り上がり厚くなる。その表面を徐々に銀白色の細かいかさぶたが覆うようになり、フケのようにボロボロと剥がれ落ちていくといった症状が出る。ほか、爪の変形、関節の痛みが起こるなどの症状も。乾癬か他の病気なのか、区別しにくい症状があれば皮膚の検査を行って診断し、適切な治療へと結びつけていく必要がある。頭や髪の生え際、手足など目立つところに症状が現れることが多く、日常生活に支障を来しかねない乾癬について、専門家に話を聞いた。
(取材日2022年9月21日)
目次
長引くフケは乾癬の可能性も。原因や症状を正しく知って、皮膚科での早期受診と診断、適切な治療へ
- Q聞きなじみのない病気ですが、どのような病気なのですか?
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A
▲関節リウマチに似た症状が現れる場合も
主に頭や髪の生え際、体や手足などの目立つところの皮膚が赤くなって発疹がたくさんできたり、それらの表面を覆う細かいかさぶたがフケのように剥がれ落ちるなどの症状が現れる病気です。患者さんによっては、自分が不潔にしているからだと考えて、高いシャンプー、トリートメントを購入したり、頭のつぼ押しをしたりなどの試行錯誤に奔走してしまう方もいらっしゃいます。皮膚症状と同時に、関節の腫れや痛みなど関節リウマチと似た症状が現れる場合もあるため、整形外科やリウマチ内科を受診するケースもあります。乾癬はリウマチの検査に引っかからないことで見分けられ、近年は、リウマチ科の先生の間でも乾癬に対する理解が広がっています。
- Q原因やなりやすい人について教えてください。
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A
▲不規則な生活が乾癬を引き起こすこともあるという
最近の研究で、乾癬の原因には免疫機能の異常が関与していることがわかってきました。そこにケガや感染症、ストレスや乾燥、食生活の乱れ、肥満やメタボリック症候群などが加わって発症するのではないかと考えられています。乾癬の好発年齢は30~40歳ぐらいの働き盛りの年代が多く、不規則な生活からメタボリック症候群になり、乾癬を発症することもあります。その場合は、減量することで改善につながることがあるので、今のように治療薬が発展していなかった過去には、減量のための生活指導を行っていたこともあります。人への感染はありませんが、病気自体があまり知られておらず、誤解を受けてつらい思いをする人が多くいらっしゃいます。
- Q診断する上でのポイントについて教えてください。
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A
▲患者の健康に誠実に向き合ってくれる
皮膚科を受診すれば、問診、視診、触診などを行うことで乾癬と診断することができます。また、乾癬と区別しにくい症状が見られる場合には、皮膚の生検が最もスタンダードな診断方法です。皮膚の一部を取り、表皮や真皮の状態を顕微鏡で調べることで精密な診断が可能になります。乾癬と診断されれば治療が始まりますが、治療内容は重症度によって異なります。皮膚症状などの身体的なつらさだけでなく、女性であればノースリーブの洋服や水着が着られない、男性であればスーツの肩にフケがついてしまうなど精神的な悩みも伴います。乾癬が疑われる症状があったら、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
- Qどのような治療があるのですか?
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A
▲乾癬は医師と患者とで治療に取り組んでいく病気と話す院長
治療の適応範囲や改善が期待できる度合いを表した「乾癬治療ピラミッド」という概念があり、症状や重症度、日常生活に及ぼす影響、患者さんの年齢や仕事などを考慮して、段階に応じて治療法を選択します。ステロイド外用薬などを用いた外用療法や光線療法などの局所療法と、免疫抑制剤などの内服療法、そして生物学的製剤を注射する全身療法に分けられます。生物学的製剤による治療は主に大規模病院で行われていますが、埼玉県内では数軒のクリニックでも受けることができます。乾癬の根本的な治療法はまだ見つかっていませんが、治療法の進歩により、症状がほとんどない状態を長くキープすることが望めるケースも少なくありません。
- Qこちらの医院で行う治療の特徴は何でしょう?
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A
▲患者自身で注射を打てるよう打ち方を指導してくれる
当院では、生物学的製剤の注射療法を行っています。さいたま赤十字病院に勤務していた頃、週末や平日の会社帰りに診療してくれるクリニックはないかというご相談が非常に多かったので開業医となって生物学的製剤の治療に注力しようと考えたこと、また、大規模病院で増え続ける患者さんの受け皿として、しっかり様子を診ていく必要性を感じたことが始めた理由です。生物学的製剤は特定の物質に作用する抗体というタンパク質を用いた製剤で、症状の重症度に合わせて定期注射をします。2週間に1回など頻繁な注射が必要な場合は、打ち方を指導しご自身で注射していただきます。デバイスを利用して比較的簡単にご自身で注射することができますよ。