糖尿病患者に起こり得る足病変
専門のフットケアの重要性について
小島ファミリークリニック
(各務原市/新那加駅)
最終更新日:2022/10/24


- 保険診療
インスリンが十分に機能せず血液中の糖の量が増加してしまう糖尿病。高血糖の状態が続くとさまざまな病気を引き起こすリスクがあり、合併症の予防が大きな課題となっている。「小島ファミリークリニック」の小島帯院長は循環器内科が専門で、勤務医時代に、糖尿病と心血管疾患を併せ持つケースや、糖尿病による神経障害に血流障害が重なり足潰瘍、足壊疽から足切断に至ったケースなどを多く診てきた。現在はその経験を生かし、神経障害の予防に力を入れる。「神経障害があると足先の感覚が失われて病変に気づきにくいため、医療機関での定期的なフットケアは重要です」と小島院長。循環器内科医師ならではの強みや同院で行うフットケアについて、小島院長と日本看護協会糖尿病看護認定看護師の吉田明子さんに話を聞いた。
(取材日2022年4月8日)
目次
糖尿病から起こる神経障害、さらに血流障害が合わさった糖尿病足病変の予防をめざすフットケア
- Q糖尿病の現状について教えてください。
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A
▲糖尿病治療に長く携わってきた小島先生
【小島院長】糖尿病は血中の糖の量が増えて特定の物質と合体し、血管を壊したり動脈硬化を促進させたりする病気です。従来、日本人の死因は、がん、心筋梗塞などの心疾患、脳卒中など脳血管疾患が上位を占めていますが、糖尿病はさまざまな合併症を引き起こすリスクがあり、それがひいては後遺症や命に関わるような病気につながっているのではないかと考えます。近年は糖尿病患者さんの若年化が進み、小中学生にも肥満と合併して2型糖尿病の患者さんが見られるようになってきました。食事指導や運動指導のほか、内服薬の処方、初期の頃から使用できる週1回のインスリン注射により治療を進めていきます。
- Q糖尿病になると足にトラブルが起きやすいのですか?
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A
▲神経障害から起こる糖尿病足病変は、自分では気づきにくい
【小島院長】はい。糖尿病の合併症としては腎症、神経障害、網膜症が知られていますが、これらは細小血管障害といって比較的細い血管の障害として起こります。一方、大血管障害としては心筋梗塞、脳梗塞、大動脈解離、さらに足潰瘍、足壊疽などが挙げられます。糖尿病は全身の血管をくまなく悪くしていく病気といえますね。足は心臓から遠いのでその分、血流が滞りやすいと考えられ、糖尿病足病変は神経障害により足先の感覚が失われたところに血流障害が重なるので治りにくいという問題もあります。病態が進行して組織が死んでしまう壊疽に至ると、最悪の場合、足を切断することも。そのため病変の早期発見が重要になります。
- Q足の病変は早く気づくことが難しそうです。
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A
▲少しでも足に関心を持ってほしいと語る小島先生
【小島院長】足潰瘍というとひどい状態を想像されると思いますが、もとは深爪や靴擦れでできた傷などがきっかけです。放っておくと赤く腫れたり膿が出てきて熱を持ったり黒ずんだりといった症状が出ることもあります。その頃には神経障害が進行しているかもしれません。足病変は糖尿病であれば誰にでも起こり得ることですので、日頃から足に関心を持っていただきたいと思います。糖尿病で網膜症もあって足先が見にくいとか高齢で腰が曲げにくいといったこともあるかもしれませんが、病変の早期発見のために、鏡を使って見る、ご家族に確認してもらうなどして観察を続けてほしいと思います。
- Qこちらではフットケアを行っているそうですね。
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A
▲コミュニケーションを交えながら診療にあたる
【小島院長】はい。私は勤務医の頃より糖尿病の方に限らず、足に血行障害のある方のフットケアに関わり、病変の予防や再発防止に努めてきました。そこで開業しても糖尿病の神経障害予防のためにフットケアに注力したいと考え、専用の外来を設けています。月に1度の診察後、別室にて日本看護協会糖尿病看護認定看護師がフットケアを行います。潰瘍がない方には足浴を行い、専用の道具を用いて爪を切ったり肥厚している部分を削ったりします。また、おうちで行う足のケアや食事・運動内容についてもアドバイスをさせていただいています。日々のちょっとしたお悩みや困り事にもお応えできるかと思います。
- Q家ではどんなことに気をつければいいでしょうか?
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A
▲専門の看護師によるフットケア。自分の足を見直すきっかけになる
【吉田明子さん】足の爪切りは、短くせず少し指からはみ出すくらいに長めに、スクエアカットにしましょう。ただし角は落としてください。短くカットすると、特にあまり歩かれない方は陥入爪といって爪が丸まって肉に食い込み、傷となってしまうことがあります。傷口から白癬菌に感染する恐れもあります。また足の観察は、毎日のお風呂上がりと決めるなど習慣化されるといいですね。歩き方や靴も注意が必要で、当院では患者さんの足と靴、歩き方を拝見し、お仕事や生活背景も考え合わせて靴やインソールをご提案しています。糖尿病だからあれも駄目、これも駄目というのではなく、正しい知識を得てその上で快適に暮らしていただきたいと思います。