生活に合わせて正しく服用を
低用量ピルで生理痛の緩和をめざす
五十嵐レディースクリニック
(川崎市多摩区/生田駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
一般的には避妊薬として知られている低用量ピルは、生理痛などで知られる月経困難症の治療にも使われることのある薬だ。「五十嵐レディースクリニック」の五十嵐豪院長は、ピルによる効能と副作用の両面に気を配り、定期的なチェックも交えて安全性に配慮した処方を行っている。仕事や生活の変化を機に相談に訪れる患者も多いといい、問診で血圧・むくみ・体重増加などを確認しながら、患者のライフスタイルに合わせた処方を行っている。「正しい情報を伝えるのも医師の役目。ピル以外にも婦人科の悩みは何でも聞いてほしい」と話す五十嵐院長に、ピルや生理痛のメカニズムについて、またピルを服用する際の注意点についても話を聞いた。
(取材日2020年3月26日)
目次
低用量ピルを正しく服用し、生理にまつわる悩みの解消をめざそう
- Q低用量ピルについて教えてください。
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A
▲一人ひとりのライフスタイルに合わせた処方を心がける
ピルの種類と患者さんの状態によりますが、最長で120日間まで服用できるものもあります。治療対象は、月経困難症と子宮内膜症に伴う痛みです。副作用を心配する患者さんもいらっしゃいますが、正しく使えばそれほど心配する必要のない薬ですね。当院では血圧・むくみ・体重増加などを確認しながら、問題ないと判断できる場合は最長で4ヵ月分を処方するなど、患者さんのライフスタイルに合わせた処方を心がけています。
- Q生理痛の緩和もめざせるのですね。
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A
▲子宮内膜の増殖や排卵を抑制することにより痛みの緩和を図る
はい。ピルの作用の仕方としては、子宮内膜の増殖や排卵を抑制することによって痛みの緩和を図っていくものになります。ちなみに子宮内膜は子宮の内側に存在するものなのですが、子宮内膜症ではその組織が卵巣など子宮以外の場所に存在しています。代表的なものが卵巣チョコレート嚢胞です。手術にはリスクを伴うため、ある程度までは経過観察となりますが、大きくなるとがんの原因になりかねません。これらは生理の回数に比例してリスクが上がるため、子宮内膜の増殖や排卵を抑えることは子宮内膜症の合併を起こさないためにも重要なポイントになるんですね。
- Qそもそも生理痛とは、どんな原因で起こるものですか?
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A
▲女性ホルモンのバランスにより、さまざまな症状が現れる
子宮内では赤ちゃんを迎える準備をしています。妊娠が成立しないとこれらは不要になり、血液とともに経血として排出されます。これが「生理」で、排出時に子宮が収縮するため生理痛が起こります。排卵時に下腹部の痛みを感じる方もいらっしゃいますがメカニズムはほぼ同じです。精子を取り込もうとして、排卵時にも子宮は収縮しているからですね。また最近では、強い生理痛は子宮内膜症のごく初期の状態ともいわれています。進行すると卵巣の腫れや排便痛、性交痛を引き起こす可能性があります。女性ホルモンの影響により、生理前にイライラ・むくみ・乳房の張りといった症状が現れることもあります。
- Qその他、ピルではどんな相談が増えていますか?
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A
▲ピルが適していると診断された場合は、院内処方をしている
仕事や生活の変化を機に「ピルで生理痛をコントロールしたい」と希望される方が増えています。ですが、すべての方に処方できるわけではありません。まず35歳以上の方で1日15本以上の喫煙習慣がある方には処方できません。重度の高血圧や前兆を伴う片頭痛のある方、50歳以上の方も血栓症のリスクが増えるため服用禁忌となります。一方で、ピルが適していると診断された場合、当院では院内処方ですぐにお持ち帰りいただけます。
- Qピルを服用する際の注意点を教えてください。
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A
▲定期的な診察と血液検査を行っている
ピルを服用する方の8割くらいに、吐き気の症状がみられます。ですが、服用を続けるうちに体が慣れて治まるケースがほとんどです。血栓症の症状が出やすいのは最初のうちです。しばらく服用して問題がなければ、その後はリスクが減っていきます。血栓症以外にも副作用はあります。副作用が治まらない場合にはピルの服用を中止し、他の治療方法に切り替えます。当院では定期的な診察と血液検査を行っていますのでご安心ください。職場の健診を受けていらっしゃる方でしたら、その結果をもとに異常がないかを確認します。