忙しい人ほど受けてほしい
腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術
ALOHA外科クリニック
(品川区/不動前駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
超高齢社会に突入し、入院手術患者の高年齢化が進む中、入院日数を減らし、体に負担がかからない治療が求められている。鼠径ヘルニアの手術も同様だ。これまで鼠径ヘルニアの日帰り手術といえば鼠径部切開法が主流であったが、近年入院手術が当たり前と考えられている腹腔鏡手術も日帰り手術が可能になった。「ALOHA外科クリニック」の新谷隆(にいや・たかし)院長も、開業以来、腹腔鏡を使った鼠径ヘルニアの日帰り手術に注力。従来の手術より体への負担が少ないことから、高齢者にも適しているという。「多くの方に、腹腔鏡での鼠径ヘルニア日帰り手術を知ってもらい、安心して治療に臨んでいただきたいと思います」と話す新谷院長に、手術の流れや注意点について話を聞いた。
(取材日2020年9月25日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q鼠径ヘルニアの治療は手術が必須なのでしょうか。
-
A
鼠径ヘルニアは、腹腔内の腸などが、腹膜と一緒に鼠径部の隙間から皮膚の下に飛び出してくる病気で、手術でしか治せません。飛び出した内臓が戻らなくなる嵌頓(かんとん)という状態になると大がかりな手術が必要になるので、早い段階で鼠径部の隙間を補強する手術をお勧めしています。当院ではこの手術を腹腔鏡を使って日帰りで行っています。日本麻酔科学会麻酔科専門医が全身麻酔をかけ、意識のない状態で行われます。しかも今の麻酔は手術後10~20分で動けるようになるので手術当日に帰宅できます。仕事や家庭の事情で何日も休めないという方々やご高齢の方でも、日常生活のリズムを崩すことなく治療を受けられるようになってきました。
- Q入院して行う手術と比べ、どのような違いがあるのでしょうか。
-
A
入院して行う手術は、初診と検査結果を聞くための再受診を経て、手術前日に入院をします。手術後は平均して2〜3日ほど入院してから退院となるので、全体で数日程度の治療期間が必要です。当院のような日帰り手術の場合は、初診時に各種検査を行い、翌日に検査結果が出て、手術日を決定します。手術当日の滞在時間も3時間30分程度で、1〜4週間後の術後再診を含めても、原則3日で治療が終了するわけです。入院の必要がありませんからその分費用も抑えられます。
- Q手術後に注意する点はありますか?
-
A
手術後2週間は、重い物を持ったり、急に体の向きを変える動作は控えてください。ゴルフなどのスポーツは3週間以上経過してからにしましょう。48時間は飲酒を控えていただきますが、そのほかは自由です。手術当日でもシャワーは可能ですし、食事も何を食べても大丈夫です。鼠径ヘルニアの治療にはいくつかの合併症があります。治療患部の出血や肺炎などの感染症、漿液腫(しょうえきしゅ)といって、患部に体液がたまって膨らんだり、神経痛になったりすることがあります。ただ、手術後2週間でこれらが起こらなければ、それ以降に起こることはまずありません。術後数年たって再発することもありますが、0.3%弱程度といわれています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1疾患と治療方法の説明を行う
-
鼠径ヘルニアとはどういう病気なのか、将来的に起こり得るリスクも含めて患者に説明する。放っておいても良くはならず徐々に大きくなるため、早い段階での手術が必要なことを伝え、同時に患者の生活習慣などを考慮し、どのような手術方法が適切かを説明する。患者が抱く不安を丁寧に聞き出し、安心して治療に臨めるようにする。
- 2手術を行うための検査を行う
-
クリニックでは血液検査・心電図検査・呼吸器機能の検査を行い、連携医療機関で腹臥位のコンピューター断層撮影(CT検査)を行う。1ヵ所だけのヘルニアだと思っていても、実は複数箇所が合併していることもあるため、正確な診断をつけるためにも重要な検査だ。検査結果は当日そろうので、患者にどのような状態かを説明し、その日のうちに手術日を決定する。
- 3手術時間の30分前に来院し、治療スタート
-
麻酔科専門医が診察後に麻酔開始。手術は全身麻酔下で行われ、術中は痛みを感じない。腹部に5ミリ程度の穴を3ヵ所開け、そこから器具を差し込み、腹腔に炭酸ガスを入れてモニターで観察しながら進める。メッシュ(人工膜)で鼠径部の弱くなっている部分を覆い、症例によっては腹壁にピンで固定。やがて腹膜、メッシュ、筋膜が癒合して硬い膜ができ穴がふさがれていく。手術時間は片側で40〜60分、両側で60〜100分程度。
- 4麻酔が完全に切れるまでリカバリー室で休息する
-
手術後、麻酔はすぐに切れてくる。手術室のすぐ隣がリカバリー室になっており、手術後はリカバリーベッドへ歩いて移動。個室感覚でリクライニングシートがあるので、90〜120分程度、麻酔が完全に切れるまで休息をとる。体の状態に合わせて、歩行や飲水、軽食の摂取、排尿を行う。医師が経過を観察後、帰宅となる。夜間にクリニックから患者に電話をし、容体の確認をしているそう。
- 5手術後の再診
-
手術後2週間は、重い物を持たないなどのいくつかの注意点を守り、1〜4週間後に状態確認のために受診する。患部や傷口の状態などを確認し、併せて合併症の有無も確認。問題がなければ治療終了となる。クリニックによっては、3ヵ月後、半年後と受診を促すところもあるが、日帰り手術を行う患者は子育てや仕事に忙しい人が多いので、同院ではできる限り患者の生活を優先し、何かあったら受診してもらう程度にとどめているそう。