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宮木 大 理事長の独自取材記事

在宅療養支援クリニックかえでの風 やまと

(大和市/鶴間駅)

最終更新日:2020/09/04

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2012年在宅療養支援クリニックかえでの風として町田に開院以来、さがみ、たま・かわさきと訪問診療エリアを拡大してきた医療法人社団 楓の風。4つ目のクリニックとして2019年9月に開院された「在宅療養支援クリニックかえでの風 やまと」で院長を務める宮木大理事長によると、診療地域を広げていくこと自体は目的でも目標でもないという。インタビューから見えてきたのは、4つのクリニックに共通した「患者の利益を最大化する」という理念に向けた取り組みだ。この取り組みの結果、診療エリア外からの要望に応えられるようにと、クリニックが開院されてきた。地域に根差した活動をする同法人の取り組みから、「かえでの風」ならではの在宅医療の魅力に迫った。
(取材日2020年7月16日)

在宅医療は100%断らない医療を下支えするもの

在宅医療はどのような方が対象ですか?

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病状に波があって通院が難しい方、最期までご自宅で過ごされたい方などが対象です。治療のために通院しながら、日々の全身管理は在宅医療を利用される方もいらっしゃいます。理由は仕事がしたい、お子さまがいらっしゃる、昨今では新型コロナウィルスの影響で入院すると家族と面会できない、などさまざまです。また、疾患別に言うとこれまでに認知症、心不全、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患を診させていただきました。がんに至っては、全クリニックで50%以上を占めています。ご利用いただいている患者さんの年齢もさまざまで、幅広い世代の方々にご利用いただいています。

さまざまな疾患がある患者さんがご利用されているのですね。

当院は、総合的に診療ができるようプライマリケア志向の医師で構成されています。プライマリケアでは身体的なことだけではなく、患者さんにまつわるさまざまな悩みから病にアプローチします。時には、患者さんを医療以外の部分で支えるために地域との連携が必要な場合もあります。また、慢性疾患から救急対応までできるのが前提です。超高齢社会の今、お一人の方がいくつもの病気や症状を抱えることが珍しくありません。その場合、複数科を受診するのは大変ですし、どの科を受診すれば良いかわからない症状もあるでしょう。そのような時、ワンストップでしかも生活の場で医療を受けられる在宅医療は、患者さんにとって都合が良いはずです。

在宅医療を希望してからどのくらいで訪問診療が受けられるのですか?

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最短で当日から可能です。中には、ここ数日が山場という方も相談いただきます。そのような場合は時間との勝負ですから、たとえ診療情報がご用意できなくても「診療できません」と依頼をお断りすることはありません。病院に直接電話して担当医師から説明いただいたり、ご本人やご家族からこれまでの病歴を伺ったりして情報収集します。その方のご事情で相談日から数週間して在宅医療を導入される場合もありますが、私たちの事情で初診日が遅くなることはないように配慮しています。

病院と遜色ない医療の提供をめざして

在宅医療では、どのような治療ができますか?

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手術や放射線治療といった積極的な治療以外は、ほぼ病院と変わらない医療を提供できます。特徴的なところでお話しすると、おなかにたまった水を抜いて必要な栄養だけおなかに戻すといったCART療法や、輸血が在宅でできるのは珍しいかもしれません。通常の診療時間は30分ですが、これらの治療は4倍の2時間かかります。また、管理にも時間を要するため、在宅医療で実現するにはハードルがあります。けれども、血液疾患の方や末期がんの方にも輸血やCART療法によって、家に帰る選択肢を用意しておきたいのです。ですから、私たちはできない理由ではなく、できるようにするにはどうしたら良いかを常々考えています。

がんの患者さんが多いとのことですが、共通するケアはありますか?

緩和ケアといって生命を脅かすような病の進行に伴う、ご本人やご家族の心と体の悩みを和らげるケアになります。例えば、がんによる痛みが強いと、本来は動ける力が残っていたとしても痛みによって動けない、眠れない、精神的にもきついといった状態になります。ご家族も本人が動けないことによる介護の負担が生じます。このような痛みから生じる負の連鎖を断ち切る手段として、医療用麻薬を使って痛みが気にならない程度まで軽減するように働きかけます。そうすることで患者さんは起き上がって食事をしたり、トイレに行ったりと自律した生活ができる手助けになるので、ご家族の負担も減るといった相乗効果が生まれます。特にがんの場合は、痛みのコントロールをすることで、こうした患者さんの生活の質(QOL)を上げられるように努めています。

がんには医療用麻薬を使った痛みのコントロールが肝なのですね。

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医療用麻薬はがんの痛み緩和に使う分には、短命にしたり、依存するリスクが少ないことがわかっています。気をつけていただきたいのは、痛みが引いたからといって自己判断で使用を止めてしまわないことです。医師の指示の下、一定量を継続的に使用することを守っていただいています。私たち医師は、市販されているすべての医療用麻薬を扱えますが、薬剤師にも強力な医療用麻薬まで扱えるようにしていただいています。病院だと麻酔科出身の緩和ケアの医師と担当医でやるところを、私たちは薬剤師の協力を得て医療用麻薬の選定や処方を慎重に吟味しています。自宅で痛みが引かないときや急に痛みが走り出したとき、PCAポンプといって、ボタンを押すと設定された量の薬がでる専用機器を使用し、患者さん自身で医療用麻薬を投与することができます。機器にはロック機能がついていたり、薬がなくなっても24時間対応しますのでご安心ください。

医療は患者が自分らしい人生を送れるようにする手段

患者さんが在宅医療でしか味わえないものは何ですか。

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その方らしい人生を送ることです。われわれはその思いを実現するために、医療や介護の各専門家が意見を出し合い、ご本人やご家族が抱える悩みや不安に寄り添った選択肢を示します。患者さんはその選択肢をもとに、各専門家と納得するまで話し合い、療養生活のプランを決めます。こうした患者さんの意志決定のための知識・情報共有を「シェアード・デシジョン・メイキング(SDM)」といいます。医療を施すことが第一目的ではなく、患者さんの思いを実現することが一番の目的になります。まず患者さんの思いが中心にあって、その周りから医師や看護師、ケアマネジャー、ヘルパーが患者さんの思いにアプローチするイメージです。その輪の中にはご本人やご家族もいらっしゃいます。

患者さんとの思い出深いエピソードを教えてください。

中南米の民俗学を研究されていた大学教授の患者さんを思い出します。その先生は末期がんで、ご自身で立ったり座ったりできない状態でしたが、「今、一番何がしたいですか?」と聞いたら「授業がしたい」とおっしゃいました。では、授業をしましょうということで、デイサービスの施設内にベッドを用意して、利用者さんや職員、医師、看護師など総勢30名ほどの聴講生を前に授業をしていただきました。私たちも勉強になるし、ご本人にもわれわれの驚きや感動が直に伝わりとても良かったです。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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まずは「こんな病状で家に帰れるわけがない」とご自分で決めつけずに、訪問診療所に相談していただければと思います。一方、在宅医療は一般の方が思っているよりも多くの対応ができるということを伝えていく使命も感じています。2025年問題、2040年問題として多くのメディアが報道していますが、超高齢社会である日本では、2030年には47万人もの「看取り難民」が出てくると推計されています。もしものときのために、終末期にはどのような医療が受けられるのかを元気なうちから情報収集しておくことが大事です。そのために、私たちのような在宅医療をどうぞ活用していただければと思います。

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