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宮木 大 院長の独自取材記事

在宅療養支援クリニックかえでの風 やまと

(大和市/鶴間駅)

最終更新日:2020/07/31

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グループ4つめのクリニックとして、2019年9月に開院した「在宅療養支援クリニックかえでの風 やまと」。同院の院長であり、グループの理事長でもある宮木大院長は、救急の医師として研鑽を積み、その後、在宅診療と出会い最初のクリニックを立ち上げた。「在宅だからこその大変さは多いですが、つらさはありません」と話す宮木院長。「患者の思い」を実現するための医療、それが宮木院長がめざす在宅医療の在り方だ。冗談を交えながら的確にインタビューに答えてくれる宮木院長の話からは、厳しい在宅医療の現場が温かな生活のワンシーンとして伝わってくる。在宅医療ならではの視点と工夫、今後のクリニック展開などを宮木院長に聞いた。
(取材日2020年7月16日)

患者の「自宅へ帰る」望みを断らない在宅医療

こちらにはどのような患者さんが多いのですか?

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全体の約75%が末期がんの患者さんです。末期がんの方々は、今のご自身の状態をすごくよく理解していらっしゃるので、例えば病院と同じ医療を受けたいといった要望ではなく、どちらかというと、医者に自分の話を聞いてもらいたいという気持ちのほうが大きいと思います。私たちはあえてさまざまな治療方法があるということを声高に叫ぶつもりはなく、患者さんのご希望に沿って、患者さんの「思い」を実現させるための在宅医療に取り組んでいます。昨年、輸血部を立ち上げて在宅輸血をさせていただいたり、採取した腹水をろ過して体内に戻すCART療法、吐いた息で二酸化炭素濃度を測定できる機器を導入するなど、常にさまざまな治療法を取り入れていますが、それはあくまでも手段であって、目的であってはいけないと思っています。

遠方からの相談などもあるのですか?

大和市はいろいろな市区に隣接しており、さまざまな地域からご相談をいただきます。一番遠いところでは藤沢市内からご依頼をいただいていますね。患者さんの中には、いろいろな在宅療養クリニックを当たってみたけれどすべて断られたという方もいらっしゃいます。その方をうちが断ったら、自宅に帰れないですよね。だから、「できない」ではなく行くんです。われわれにそれ以外の選択肢はありません。これまで私たちが診させていただいた患者さんの最高齢は102歳、一番下の患者さんは生後6ヵ月です。小児のことは専門ではありませんが、入院中の担当医と治療方針の相談をしながら診させていただいています。

診療で大事にしていることは?

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とにかく聞くことですね。ある自動車メーカーでは、状況を改善するときに”5WHY”という手法を使うそうです。物事に対して「なぜか」という問いを5回繰り返していくと、限りなく真相に近づいていけると言われていて、私たちもそれを重要視しています。一例として、当院にリハビリテーションをやらない90歳を過ぎた心不全の患者さんがいらっしゃいました。言われ続けてやっと始めたけれど、ほんの2mぐらいのところを3往復して終わってしまう。そこで、「なぜそれだけしか歩かないのですか」と、聞いてみたんですね。そしたら、その方は若い頃戦艦長門の下士官で、甲板でこの距離を担当していたと言うんです。「じゃあ、甲板を1日往復した回数の1/10から始めましょうか」ということでリハビリが始まりました。戦艦長門の秘話も知ることができ、直に人生の先輩から話を聞けるというのは在宅医療の醍醐味だと思いましたね。

自分らしい人生を過ごしてもらうための医療介入を提案

在宅医療に携われるようになった経緯は?

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私が医師を志したのは高校3年生のとき、ニュース番組で「国境なき医師団」が災害現場で活躍している姿を観たことがきっかけでした。災害医療分野を志望しましたが、専門的に取り組んでいる病院は限られていると知り、大学卒業後は慶應大学病院の救急科に9年間勤めました。その後、関連の川崎市立川崎病院の総合診療科に勤めていた頃、3~4年目の若手医師を指導する立場を経験。若手の面倒を見ながら、自分の仕事にも取り組まなくてはいけないという状況の中で、しっかりとマネジメントについて学ぶ必要があると感じ、ビジネススクールで学び始めました。そこで出会ったのが当グループの創立者です。彼と医療の在り方、社会の在り方などについて意見を交わす中で「一緒に社会を変えよう」と声をかけられ、在宅医療の道に進みました。

病院での医療と在宅医療の違いは?

病院というのは治したい方がいらっしゃるところなので、病院にいた頃は、「人は病気になったら治したい」というバイアスがありました。しかし、在宅に携わってから、自身の健康が優先順位としては低い方がかなりいらっしゃるということがわかりました。自分の培ってきた経験、築いてきた日常生活というものが崩されるのであれば、医療機関を受診しないという方もいらっしゃるんですね。そういう方に最初にお会いした時は、パラダイムシフトというか、考え方が根本から変わりました。病気を持っていることと、自分が健康だと感じることはまったく別問題で、病気を持っていようがいまいが、自分自身としての生活を続けていきたいという方々には、ちょっと医療が介入すればもっと自分らしい人生、生活が過ごせますよということをわれわれが提案し、その方ごとの提案を日々考えていかなくてはいけないと思います。

在宅医療が診るのは患者さんの生活なのですね。

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在宅医療はよく寄り添うと言いますが、最近、心がけているのは、その寄り添うというやり方も一通りではないという考えです。例えば、初めてご自宅に伺うときは、おうちの前は人通りの多い道なのか、土なのか砂利なのかアスファルトで覆われているのか、一番近いスーパーやコンビニまでの距離はどれくらいかを確認します。ドアを開けたら玄関の匂いや靴の状態、部屋の中を歩く際には、床はたわまないか、周りにどんな物が置いてあるか、仏壇や神棚などを祀っていらっしゃるかどうか。あまり系統だってはいませんが、100項目ぐらいチェックリストがあって、その中でご本人とご家族の関係性やご家族の介護力を考え、アプローチの仕方を考えるようにしています。

患者の「思い」を実現させるためのチームの取り組み

印象深いエピソードがあれば教えてください。

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中南米の民俗学を研究されていた大学教授の患者さんを思い出しますね。その先生は末期がんで、ご自身で立ったり座ったりできない状態でしたが、「今、一番何がしたいですか?」と聞いたら「授業がしたい」とおっしゃったんです。じゃあ、授業をしましょうということで、デイサービスの施設内にベッドを用意して、利用者さんや職員、医師、看護師など総勢30名ほどの聴講生を前に授業をしていただきました。私たちも勉強になるし、ご本人にもわれわれの驚きや感動が直に伝わりとても良かったですね。

在宅医療で大事なことは何でしょう?

患者さんを中心に周りに医療従事者がいるという形で在宅医療を行うと、どうしても助けてあげる立場の人間と、助けてもらう立ち場の人間という上下関係ができてしまいます。それはあくまでも20世紀の医療モデルなのかなと思いますね。私たち「かえでの風」の考え方は、真ん中に患者さんの「思い」があって、それを実現させるためのチームが周りにいるという形です。そう考えると、医師、看護師、ケアマネジャー、薬剤師は同じチームですし、患者さんもご家族もそのチームの一員なんですね。医師は医療のプロ、看護師は看護のプロ、薬剤師は薬剤のプロ、そして患者さんは、その病気についてチームの中で一番リアルタイムで状況が伝えられる方です。ご家族は患者さん自身が気づいていないような事柄でも十分に掘り起こすことができるプロ。私たちはこれを共創関係と呼んでいます。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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今年度か来年度には、東京23区近くにもう1軒開設したいと考えています。今あるクリニックに、そこから離れた場所からの依頼が来ることがあります。それは、その地域から依頼が来る理由があるということですから、そこにクリニックを建てて診させていただくのが良いのではないかというのが、当グループの考え方です。在宅医療というのは、ご自身で通院できなくなったという方、すべてに適応されるものです。重病でなくてはならないわけではないですから、そもそも在宅医療が適応なのかどうかということも気兼ねなくご相談いただければと思います。

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