北井 珠樹 院長の独自取材記事
ハートフルクリニック北井内科
(鈴鹿市/鈴鹿駅)
最終更新日:2021/10/12
2007年に開院した「ハートフルクリニック北井内科」は、鈴鹿中央総合病院の北に位置する。医院はピンクのタイルを張った外観で、駐車スペースは20台分を確保。天井が高く明るい待合室には、資料がラックに並べられ、ウォーターサーバーや膝掛けなども用意し、患者目線の環境を整えてくれている。院長の北井珠樹(きたい・たまき)先生は、三重県内や東京都の総合病院で循環器内科を専門に研鑽。現在は内科全般の診療を行い、診察時間は7時30分からと、スタッフとともに患者に寄り添う診療と接遇の向上に力を入れている。明るく、歯切れの良い丁寧な話ぶりで、安心感を与える北井先生に、医院独自の取り組みと診療への思いを聞いてみた。
(取材日2019年11月5日)
早朝7時30分から昼休みなしで診療する
ハートフルクリニックという医院名に込めた思いを聞かせてください。
「真心を込めて」「患者さんに親身になって」という思いを前面に出したくて、「ハートフルクリニック北井内科」としました。私は三重県志摩市の出身で、2007年に開院する前はすぐ近くの鈴鹿中央総合病院に勤務していました。そのご縁もあって、こちらに開院しました。循環器内科を専門としていますが、一般の方には「循環器って何?」というイメージがあると思いますので、何か少しでも気になる症状があれば気軽に来ていただけるよう内科と標榜しています。実際、患者さんは高血圧・高血糖・高脂血症などの生活習慣病の管理や治療を必要とされる方が中心で、これらは循環器内科の専門性が生かされる領域なんですよ。
午前7時30分から診療をされているそうですね。
はい、毎朝7時30分から昼休みなしで、診療をしています。このような診療時間帯の医院は珍しいかもしれませんね。私自身が勤務医時代から早朝の回診を習慣としていましたし、早朝から並んでいる患者さんを見て気づいたことがきっかけで始めました。病院というのはできれば行きたくない場所ですし、行っていることをあまり人に知られたくない方もいます。皆さん、並んでいるのは、早く診てほしいのではなくて、早く済ませて帰りたいからだと感じました。だから早朝から診療をしています。私の起床は午前3時40分くらいです(笑)。朝起きて、入浴しながらストレッチをするのが日課になっていて、それをしないと気持ちが悪いですね。帰宅後にはジョギングもしています。
勤務医時代には、どのような診療をされていたのですか?
研修先の三重大学医学部附属病院では、半強制的に早朝勤務でした。その後、桑名市の総合病院に勤務した時、それまで通り朝食前に入院患者さんの回診をしていたら、院長にすごく褒められたのがうれしくて(笑)。以来、早朝勤務を続けています。総合病院では、循環器内科で検査や手術にも携わったのですが、私は外来診療こそが一番やりたい仕事だと感じました。その後、東京の医院に勤務した時、病気だけを診るのではなく、患者さんに寄り添って、一人の人間として見ることで、頼りにしてくださる方の数が増えてきているのに気づいたんですね。そこで開業を一つの選択肢にしてもいいんじゃないかと思いこのクリニックを開院しました。
サービスのプロに学ぶ勉強会で、接遇をレベルアップ
ほかに医院で力を入れている取り組みを教えてください。
血液検査については、特別な検査を除いて当日中には結果がわかるようにしています。また薬剤は院内処方をしています。私は、受付をして、診察して、薬をもらって、会計を済ませるまでが診療時間だと思っています。院外処方でそこからまだ次があるのならば、診療時間の延長になってしまいますよね。また診療時間を短くすることと、患者さんに寄り添うコミュニケーションをとることの両方が大切ですので、私があまり診察時間をとれない時は、スタッフに患者さんの話を聞いてもらい、後程伝えてもらうようにしています。スタッフとの会話も、患者さんにとっては大切な診療時間であると考えています。
患者さんへの接遇をレベルアップするために、勉強会をされているそうですね。
1ヵ月に1回、ミーティングを兼ねた勉強会をしています。一流ホテルやレストラン、サービス業などで働く方が書いた本を題材に、あらかじめ担当分を決めて問題をつくり、勉強会までに回答を書いて、意見交換をします。非医療系の分野をテキストにするのは、競争が激しく、サービスへの取り組みが熱心にされていると感じるからです。医療業界でも取り入れられるよう頑張ることで、何か差別化されて秀でたものが出るんじゃないかと思っています。あとは実際に著者を招いて、ミニ講演をしてもらうこともあります。生で話を聞いて、2時間ほど質疑応答をすると、すごくためになりますし、思わず背筋が伸びますね。
接遇への強いこだわりをお持ちなんですね。
朝礼では、全部で37項ある「クレド」つまり具体的な信条や行動指針から1項ずつを唱和して、それをどう実践するかなどを話し合っています。また、ある患者さんとの出会いがきっかけでスタッフ全員が手話を勉強し、検定試験で4級を取得しました。必要とする人が多いわけではありませんが、驚いたり、感激したりしていただけるので、やって良かったなと思いますね。正しい敬語の使い方など、日本語の勉強会を行ったこともあります。接遇にこだわってやり続けると、こちらも楽しくなってきますし、何かいいことができたんじゃないかという満足感があります。
お話を聞いていると、人間の心理に深い関心がおありのようですが?
東京で勤務医をしていた時、通勤時間に読むためにふと心理学の本を手に取ったのがきっかけです。「これは面白い、診療にも生かせるのではないか」と思い、多くの本を読んできました。人は本当はどう思っているんだろうという深層心理もよく考えます。生活習慣の管理がうまくいかなかった時など、医師は患者さん側の責任にしてしまうことが多いように思います。そうではなく、自分の言い方がうまく伝わらなかったのではないか、患者さんが話を忘れてしまうことを前提に話していなかったのではないか、などと考えられるようになりました。
患者の喜びを自分の喜びとすることで満足感に
先生はなぜ医師になられたのですか?
高校3年生になるまで、数学が苦手な文系でしたから、自分が医師になれるなんて到底思っていませんでした。でも、「このまま何をするんだろう」と迷った時に、「自分で決めつけて、理系の分野を諦めたことがだめなんじゃないか」とふと思ったんです。そしたら急に光が差したような気がして、進路を理系に変えました。それで遅過ぎたこともなかったですし、変更して良かったと思っています。理系の中でも、特にやりがいがあると思ったのが医学です。学生の時は注射なんか自分にできるんだろうかと思いましたが、それも勝手な決めつけで、ほかの人にもできるんだから自分にもできるはずだと同じように考え直すことができました。
診療で大切にされていることはありますか?
結局は、相手の身になって考えることですね。患者さんがどのようなことをしてほしいかをずっと考え続けていると、患者さん自身が意識していなかった欲求にも気がつき、それをこちらが指し示して、満たしてあげることもできます。ご本人が予想もしていなかったことをしてあげると、患者さんにもすごく喜んでもらえますね。例えば、病気や症状についてどう対処したらいいかわからないという患者さんには、既製のパンフレットではうまく伝わらないこともありますので、当院で作成している無料の資料やパンフレットをお渡ししています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお聞かせください。
何か壮大な目標があるわけではありませんが、こちらから患者さんのニーズを探して、できる限りの対応をしていきたいです。当院では、私を含めてスタッフ全員で、患者さんに寄り添うということに取り組んでいます。病気だけではなく、患者さんを一人の人間として見る、対応させていただくことを大切にしています。それができると「来て良かった」と患者さんにも喜んでいただけると思います。そのような診療を続けることで、医院に来ることに対して、少しでも皆さんの抵抗感が薄れるようになったら、とてもうれしいですね。