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濱口 幸久 院長の独自取材記事

こまち内科クリニック

(桑名市/星川駅)

最終更新日:2021/10/12

濱口幸久院長 こまち内科クリニック main

住宅街を横切る県道142号線沿い、ファストフード店やファミリーレストランなどが林立するにぎやかな通り沿いに、「こまち内科」がある。濱口幸久院長は市中病院などの循環器内科や内科で長年経験を積んだドクター。漢方専門クリニックでも経験を積み、西洋医学と漢方のいいとこどりをした医療をめざし、「治療を進めてもどうしても良くならない症状や、病気ではないけれど体調が悪いときに、漢方を併用することは意味があります」と力を込める。更年期や婦人科系の疾患、さらに高齢に伴う不調、生活習慣病など、漢方も使いながらプライマリケアを進めたいというクリニックのコンセプトと、今後の展望、めざす医師像について濱口院長に話を聞いた。

(取材日2021年5月29日)

救急医療、循環器内科の知見を踏まえて、漢方の世界へ

医師を志したのはどうしてですか?

濱口幸久院長 こまち内科クリニック1

実家は三重県の明和町にあり、長年昆布問屋を営んでいます。将来は家業を継ぐものと考えていましたが、ある時、違う人生を歩むのも良いのではないかと思い、そこで思い浮かんだのが医師でした。しかしその時は、「人の命を助ける社会的意義の高い仕事」というイメージしか持っておらず、仕事の大変さや自分に適性があるのかまではよく考えていなかったんです。だから実際に医師になってから、とても大変だと感じましたね。滋賀医科大学を卒業した後、市立四日市病院で救急医療の現場にも立ったのですが、目の前で人の生き死にが繰り広げられ、その中で循環器内科として心臓カテーテルを数多く対応する日々は、やりがいを感じながらもそれなりに苛酷でした。

その後、どのようなキャリアを積まれましたか?

勤務医時代に少し体調を崩し、乾癬性関節炎を発症したことがありました。その時、あるクリニックで漢方の処方を受けたことをきっかけに、漢方に興味を持つようになりました。勤務医としてさまざまな病院の内科や循環器内科で診療経験を積みながら漢方医学の勉強も始め、漢方を専門的に処方するクリニックにも4年ほど勤めました。そのうち、自分のクリニックを構えて、西洋医学に漢方薬の知見を交えた治療を提供したいという気持ちが強くなり、住みやすく活気がある桑名・四日市のエリアで開業したいと考えていたら、ちょうどご縁があり、こちらで開業することになりました。

クリニック開業にあたって、気を配ったことはありますか?

濱口幸久院長 こまち内科クリニック2

悠和会さんが新しく作られたクリニックの院長を探されておりましたので、私が院長をさせていただくことになりました。そのため建物も設備も新しい状態で開業することができました。医療機器ではがんの早期発見にも有用な腹部エコーを備えており、検査の結果報告では画像を見ながら説明し、患者さんの理解度や満足度アップに役立てています。あとは折を見て、私の専門である循環器内科の診療に使う心臓エコーも導入できたらと考えています。感染症対策にも気を配っており、広いガレージを利用して、発熱した方が車中で診察を受けられるスペースを確保しました。発熱した方はまずはここで新型コロナウイルス感染症の抗原検査を受けて、その後診察します。慢性疾患で通う方、予防接種を受けに来た方なども、安心して受診できるような環境づくりに努めています。

西洋医学と漢方のいいとこどりで慢性疾患にアプローチ

漢方の処方もされるそうですが、漢方はどんな症状に適していますか?

濱口幸久院長 こまち内科クリニック3

これまで漢方薬はアトピー性皮膚炎、喘息、リウマチなどに使われてきましたが、これらの疾患に対しては新しい薬が続々と誕生してきており、正直なところ漢方薬が必要となる機会は減ってきていると思います。しかし、アトピー性皮膚炎の方を漢方的に診察すると、胃腸が冷えているのに体の上部や皮膚には熱が浮いてしまう「寒湿困脾・虚陽上浮」という病態をよく見かけます。こんな時、ステロイド外用薬を正しく使用するだけでなく、温かい食べ物を取るように勧め、体の内側を温める目的の漢方薬を、同時に処方することも多くあります。アトピー性皮膚炎の他にも月経痛や頭痛、関節痛などの症状が体の冷えからくるという漢方独自の発想を、西洋医学の治療に組み合わせることで、より満足のいく結果に近づけると思って診療しています。

西洋医学の薬と漢方薬を併用されているのですね。

例えば市販されている薬の中にも、漢方薬と西洋薬が併用されているものがありますが、体を温める漢方と炎症を鎮める西洋薬が一緒になっていたりするのを見ると、多少疑問を感じます。漢方薬の性質を踏まえた上で併用しなければ、互いに打ち消し合うようなことになってしまうからです。当院では基本、西洋医学の薬で治療を進めながら、それでもケアしきれない症状を漢方で補うという方法をとっています。漢方薬は副作用の少ないサプリメントのようなもの、という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、漢方薬にも副作用は起こり得ます。特に慢性疾患に対して長期的な服用をする場合には、気を配らないといけません。患者さんの症状はもちろん、体格、体質などを考慮して処方するのは西洋医学も漢方も変わりありません。

漢方は、「未病」と呼ばれる「病気ではない体調不良」の状態にも有用だと聞きました。

濱口幸久院長 こまち内科クリニック4

血の道症と呼ばれる、産後や更年期などの女性ホルモンの変化による不調に漢方は適しています。そのほか、便秘、慢性疼痛、加齢によるさまざまな不調などに対し予防的に使うこともでき、そうしたことからも、漢方薬はプライマリケアにマッチするものだと思います。ただし当然のことながら、多くの慢性疾患は、ただ薬を飲んでいれば治るというものではありません。食事、睡眠、運動などの生活習慣全般を整えながら、治療を進めていく必要があります。開業医として患者さんの長い人生に寄り添いながら、生活全般のアドバイスも加えて、健康づくりのお手伝いをしたいと思っています。

これまで出会った素晴らしい医師たちを目標に

お忙しい毎日ですが、お休みの日はどのようにリフレッシュされていますか?

濱口幸久院長 こまち内科クリニック5

少し前から家庭菜園を始めました。ジャガイモ、ダイコン、ナスなどを育てています。収穫があるのが楽しくて、病院の敷地にも畑を作ろうかと思ったんですが、この辺りは野生のサルが出るそうなんです。食べ物だとサルに取られてしまうので、野菜畑から花壇に切り替え、花を植え始めたところです。少し広さもあるので、歩いて花を楽しめる小さなフラワーガーデンにしたいです。園芸は素人ですが、時間のある時に土いじりをして、クリニックのスタッフにも手伝ってもらいながら造園を進めています。訪れる患者さんの小さな心の癒やしになるような花壇を作っていますので、できるのを楽しみにしていてくださいね。

医師としてのモットーを教えてください。

「当たり前のことを、きっちりやりたい」といつも思っています。患者さんとしっかり向き合い、その方に合った治療を提供する。そのためには勉強を怠ってはいけないし、患者さんとのコミュニケーションにも気を配らなければと思っています。どのように患者さんと接して、どんな医療を提供したいか。それをあらためて認識させてくれたのは、漢方の勉強会でお会いしていた女性医師の先輩でした。とても素晴らしい先生で、包容力があって、まるで母のような雰囲気でみんなと接し安心させてくれる。それでいて「医師ができることは限られているけれど、ほんの少しでも助けになれば」といつも語っていて、謙虚な姿勢を崩しません。大きなことはできないけれど、誠実に治療を続けていく姿勢を私も参考にしたいですね。

どんなに経験を重ねても、人から学ぶことを心がけていらっしゃるんですね。

濱口幸久院長 こまち内科クリニック6

そうですね。特に私は個性的な先生に会うと教えを請いたくなる性質なんです。漢方は自分から勉強の場に行かないと知識が得られませんから、そうした場所で素晴らしい先生たちに出会えたことはありがたかったと思います。最終的には、治療しなくても会うだけで患者さんが元気になれる、そんな医師になれたら最高ですよね(笑)。お声かけだけでもありがたい気持ちになれるようなオーラをまとえたらいいのですが、これはまあひと筋縄ではいきませんから、まずは地域の皆さまに知っていただき、どんな些細な気がかりでも足を運んでいただけるような、開かれたクリニックをつくっていきたいと考えています。

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