子どもが家族と暮らせる環境づくりをサポート
小児在宅医療
サニーガーデンこどもクリニック
(港区/麻布十番駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
医療の発達とともに助かる子どもの命が増え、NICUで集中的な治療を受けていた子どもや先天的な病気を抱える子どもが退院して、自宅で過ごせるようになるケースも増加している昨今。しかし一方で、その子どもたちを支える保護者の負担を軽減できるようなシステムが不足しているという課題もあるそうだ。そんな保護者をサポートしてくれるのが、医師が自宅を訪れて診療してくれる小児在宅医療。NICUで大勢の子どもたちを診てきた経験を生かし、クリニックでの外来診療と並行して小児在宅医療の提供にまい進する「サニーガーデンこどもクリニック」の首里京子院長に、小児在宅医療の詳細を聞いた。
(取材日2020年3月25日)
目次
患者だけでなく、家族とのコミュニケーションも重要。患者と家族、双方の負担を軽減して家庭生活を支援
- Q小児在宅医療は、どんな人が対象になるのでしょうか?
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A
医師が自宅を訪問して、医療的なケアを必要とする小児に対して診療を行うのが小児在宅医療です。生まれながらに合併症を抱えている方、人工呼吸器や気管切開チューブなどの医療デバイスが入っている方、経管栄養や胃ろうで生活している方、先天的な病気を持っている方などが対象になります。大きな病院のNICUなどで集中的な治療を受けていたお子さんが、症状安定期間に入り病院側で退院可能と判断された場合、在宅医療に切り替わることが多いですね。当院に来院した患者さんを診療した際に、「在宅医療に切り替えたほうがお子さんもご家族も負担が減るのではないか」と判断して、在宅医療を導入するケースもあります。
- Q具体的にどんな診療を行うのか教えてください。
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A
患者さんの重症度によって頻度は異なりますが、月に1~2回程度、定期的に患者さんの自宅を訪れて診療します。この定期的な訪問に加えて、発熱などの異変があったときに足を運ぶこともあります。点滴、注射、感染症の簡易検査、採血も行うことができますし、その場で処方箋を出すことも可能です。ご家族の負担を減らすために、薬局と連携して、薬をご自宅まで届けてもらえるように手配したこともありました。以前に、先天的な障害のため、経管栄養で生活していた患者さんがいました。ご家族と検討して、経管栄養よりも負担の少ない胃ろうに切り替えることにしたのですが、その際には大学病院と連携して手術のスケジューリングを行いました。
- Q大学病院とはどのように連携をとっているのでしょうか?
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A
インフルエンザの診療や定期的なお薬の処方は在宅医療でも可能ですが、「ここから先は大きな病院に診てもらったほうが症状が悪化しない」と判断した場合は、速やかに提携先の病院に患者さんをつなぎます。ご家族が直接、病院を受診するよりも、私たちが間に入って情報を共有することで、その後の診療がスムーズになることもあります。また、病院での治療から在宅医療に移行することが決定したら、患者さんのことをより深く知るために、退院前カンファレンスに参加するようにしています。今ある病状や今後起こりうる合併症を共有したり、ご家族の背景やお子さんの個性をヒアリングしたり、的確な在宅医療の提供のために必要な情報を収集します。
- Q先生が小児在宅医療を提供する上で大切にしていることは?
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A
一般的な医療は、医療現場に患者さんが入ってくるという形ですが、在宅医療は患者さんの生活空間の中に私たち医療者が入っていくことになります。ですから、ご家族とのコミュニケーションが非常に重要です。ご家族がどんな在宅管理を望んでいるのか、その気持ちに寄り添いながら一緒に治療方針を検討しています。中には、思うように周囲からのサポートを得られず、心身ともに疲弊しているご家族もいらっしゃいます。そんなご家族の精神面をサポートするために、「頑張っていますね」と言葉をかけることもありますし、医療のことに限らず、栄養管理や発達、療育に関する相談にも応じています。
- Q小児在宅医療の良い点は、どんなところだと思いますか?
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A
お子さんを連れての通院が困難だと感じるご家族をサポートできることはもちろんですが、お子さん本人にとってもプラスになると思っています。私がNICUに勤務していたときに、NICUを退院して家庭に戻った後、とても体重が増えて元気になったお子さんをたくさん見てきました。NICUはドクターや看護師のサポートを常時得られる恵まれた場所ではありますが、私はお子さんにとって最も良い環境は、ご家族の愛情を間近で感じることができる家庭だと思っています。できることなら、お子さんにはご家族のそばで育ってほしい、そしてそれを地域がサポートしていくべきだと考えています。