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棚澤 利彦 院長の独自取材記事

ペルソナクリニック

(桑名市/桑名駅)

最終更新日:2023/12/22

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック main

桑名の穏やかな雰囲気の住宅街の中に位置する「ペルソナクリニック」。脳神経外科のクリニックゆえ「脳」「脊髄」は専門だが、棚澤利彦院長が特に大切にしているのは、「痛み」に苦しむ患者にとことん寄り添うことだ。原因のはっきりしない痛みは何科にかかったらよいのかわからず、クリニックや病院を転々とする人も少なくない。棚澤院長は患者の話を聞くことを重視し、さまざまな治療法を用意、痛みの原因追究と緩和に注力する。特に神経因性疼痛に対する脊髄電気刺激療法(SCS)においては病院勤務時代から多くの実績がある。「当院に来られた方は助けて差し上げたいという気持ちです」と話す棚澤院長に、診療にかける思いを聞いた。

(取材日2021年6月1日)

原因不明の「痛み」に苦しむ患者を幅広く受け入れる

先生のご経歴や開業の経緯について教えてください。

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック1

私は名古屋大学医学部卒業後、市立四日市病院に勤務しました。その後、静岡県の病院や名古屋大学医学部附属病院、愛知県弥富市の海南病院、桑名市民病院、岐阜県の博愛会病院などに勤め、その後四日市のクリニックの院長も経験。ご縁を得て2017年、ここに開業した次第です。設計者に特に注文をつけたわけではないのですが、院内は広くて居心地の良い空間になったと思います。医院名の「Persona」は、「Person」の語源になったラテン語で人格や仮面を意味します。患者さんお一人お一人が違う人格や症状をお持ちですから、個々に適した治療を行っていくという意味で、患者さん一人ひとりに向き合っていくという当院の方針とも合っていると思います。

こちらにはどのような患者さんが来られていますか?

今はどこも患者さんの高齢化が進んでいると聞きますが、それを考えると当院には20代から60代の働き盛り世代の方が多いですね。脳卒中の後遺症のある方や、生活習慣病の方、膝や肩の痛みを訴える方、更年期障害の方なども来られます。脳神経外科の分野にとどまらず、複合的な症状で困っている方や不定愁訴で悩む方など、痛みを抱えている方全般を受け入れていることが当院の特徴といえるでしょう。女性の割合も高いです。50代以上の女性に多い帯状疱疹は、そうと診断がついたらすぐに当院に紹介してくださるクリニックの先生もいらっしゃいます。帯状疱疹は3ヵ月を過ぎると痛みが慢性化するリスクがあるので早期治療が重要です。

脳神経外科というとCTやMRIなどで検査をするイメージがありますが。

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック2

そうですね。私も病院勤務時代はそれらの検査を経た患者さんに、脳腫瘍や脳梗塞、脊髄、頸椎、腰椎などに関わる手術をほぼ毎日行っていました。現在、当院にはMRIを置いておらず、必要な場合は近隣の病院に紹介して検査をしてきてもらっています。当院で行う治療の特徴の一つは、SCS(脊髄電気刺激療法)という脊髄と脊柱の間にある硬膜外腔に電極を挿入し、微弱な電流を流すことによって痛みを和らげていく方法です。痛みの原因を取り除くというより、痛みを脳に伝わりにくくする目的の治療法で、薬では効果の期待できない神経障害性疼痛など難治性の痛みに苦しむ方が対象になります。かつて8年間ほど勤務していた岐阜の博愛会病院にて今は週1回外来を担当しており、そこでもこのSCSを行っています。

症状が深刻化する前にセカンドオピニオンも重要

痛みの緩和をめざす治療に注力されるようになったきっかけはありますか?

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック3

病院勤務時代に出会った20代の患者さんがきっかけです。もともと血管の塊がある脳動静脈奇形の方で、脳内出血を起こし、手術をしました。その後退院されたのですが、麻痺はないものの、てんかんを繰り返し起こすてんかん重積状態になってまた病院にいらして、その後、片足に激痛が出たということでした。CRPS(複合性局所疼痛症候群)といわれるもので、麻痺がないのにひどい痛みで歩けないのです。それで、SCSの治療をベテランの先生がされました。その時に難治性の慢性的な痛みで苦しむ方が結構多いということを知ったのです。当時、海外に比べて日本ではSCSの機械が少なく、治療もあまり行われていませんでした。しかし1990年代後半に保険診療となり、今は薬もいろいろ増えましたので、個人的な考えですが、従来の日本的な「痛みは我慢するもの」という考えから、「痛みはまず取るべきもの」との考えに変わってきたのかもしれませんね。

痛みがある場合、何科に行けばいいのか迷います。

痛みは全科にわたるので、自分の痛みが整形外科なのか、ペインクリニックなのか、あるいは帯状疱疹らしいから皮膚科なのかと迷われることは当然あると思います。極端な例ですが、歯が痛いと思って歯を抜いてほしいと歯科医院に行ったけれども、実は脳や神経に原因があり、顔に痛みが出る三叉神経痛という病気や非定型顔面痛という症状だったということも。もし痛み止めの薬や湿布を処方されているにもかかわらず何ヵ月も痛みが改善しないということであれば、そのまま通院を続けるのではなく、セカンドオピニオンを取り入れていただくのがよいでしょう。痛みが深刻化する前に早期に適切な治療をすることがとても大切なのです。

こちらには心因性の痛みと診断された方も来られるそうですね。

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック4

はい。「心の病」や「ストレス」と言われた方や、自傷行為を繰り返す若い方も来られます。自傷行為は、頭痛や全身痛がひどすぎて、けがのほうが痛みがましではないかと考えて自分の体を傷つけているケースもあるのです。若い方が苦しんでいるのを目の当たりにすると、本当に何とかしないとこの方の人生が駄目になってしまうと思い、こちらもつらいですね。痛みの原因が一種の脳の血流障害である場合もあり、当院では患者さんに合わせてさまざまなアプローチ方法を視野に入れています。医師は安易に「心因性」という言葉を使うのではなく、しっかりと判断した上で治療の提案をすることが重要だと思います。

痛みに苦しむ人を見捨てず救うことに努める

診療するときに先生が心がけておられることはありますか?

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック5

初めて来られた患者さんには、当たり前ですがお話をよく聞くことを心がけています。また診察室に入ってこられたときの表情、目の動きなどいろいろなところを観察して、その方の困り事を読み取るように努めます。長年痛みに苦しんでいる方は、さまざまな事柄が重なり合って自分でもどこから話していいのかわからなくなっていることもあるので、思い出してもらえるようにこちらから質問したりして促すこともありますね。痛みにしても不安な気持ちにしても、何が原因なんだろうと一緒に取り組んでいく姿勢を大事にしています。話しかけやすい雰囲気も出していると思うのですが、どうでしょうか(笑)。

お話を伺っていると、痛みに苦しむ人へ寄り添ってくださるのだなと感じます。

難治性疼痛にはもう20年関わっていますが、どのような治療が最も良いのかは治療してみないことにはわかりません。画像診断が役立つときもありますが、それで痛みの原因が究明されるわけではなく、患者さんにとっては「病名など何でもいいから、とにかく痛みを軽くしたい」というお気持ちなのだと思います。ひどい肩凝りや関節の痛みの場合、関節注射が役立つケースもあるのですが、人によっては注射に抵抗があることもあります。治療でかえって傷つけてしまうかもしれないので、どうしたら気分良く治療ができるかを考えて、注射に関しては必ず意思を確認し、微妙な表情の変化にも気をつけています。実は納得しないまま治療を受けていた、なんてことは避けたいですから。おかげさまで当院にはクチコミで来られる方が多いです。知り合いの方をご紹介いただけるのはとてもうれしいですね。

最後に読者へのメッセージや今後についてのお考えをお聞かせください。

棚澤利彦院長 ペルソナクリニック6

まず、痛みを我慢せず、諦めないでほしいです。当院へは何科に行ったらよいかわからない人、良くならないで困っている人が来られることが多いので、良くなるように患者さんと一緒に頑張っていこう、とスタッフと話しています。当院では治療法も複数の選択肢を用意しています。痛みを抱えている人は絶対切り捨てるべきではないというのが私の基本的な考えです。例えば子宮頸がんワクチンについて賛否両論がありますが、そんな議論よりも、数十万人に1人といえども副反応があるなら、その犠牲になってしまった人を見捨てないことのほうが大事だと考えます。痛みで悩んでいる方は、まずは諦めずにご相談いただきたいですね。

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