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大西 俊和 院長の独自取材記事

大西心療内科クリニック

(西宮市/香櫨園駅)

最終更新日:2019/08/28

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「大西心療内科クリニック」は、阪神本線の香櫨園駅から徒歩約10分、自然あふれる夙川公園沿いの閑静な住宅街にある。対人関係の悩みをきっかけに精神科へ進んだという大西俊和院長は、香櫨園エリアで40年以上、地域の人の心の健康を支えてきた。2018年には自身の病気治療をきっかけに前クリニックを閉院したが、療養後に移転再開院した。同クリニックで注力しているのは、大西院長自身も実践しているという、不安や恐怖感を取り除くのではなく受け入れる、“森田療法”。「人の話を聞くのが好き」と優しく微笑む大西院長に、患者に接する際に心がけていることや、注力する“森田療法”について、さらに今後の展望などたっぷりと話を聞いた。
(取材日2019年5月8日)

対人関係への苦手意識をきっかけに、精神科の道へ

精神科の医師を志した理由を教えてください。

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父が眼科、兄が内科、そして親族にも医師が多い家系に生まれ、自然と医療の道を志しました。精神科に進んだのは、私自身が人前での言動に緊張感が高まり不安や恐怖を感じる「社会不安障害」を持ち、対人関係が苦手だったことが理由です。自らの症状がきっかけで精神科に興味を持ち、同じような症状を持った方々のお力になりたいという思いもありました。ですから医学部進学の時には精神科に進もうと考えていましたね。実際に精神科に進んでみて、人前で話すことは難しくとも、人の話を聞くのが好きな私にはとても向いている分野だと思っています。

現在の患者層を教えてください。

当院は高校生以上を対象としているので、20代~50代、学生さんや主婦、働き世代の方もおみえになります。インターネットなどで調べられて来院される方も多く、昔よりもハードルが低くなっていると感じます。不安感や対人関係の悩みを訴える方が多いですね。私は話すのが苦手ですが、聞くのは得意。1~2時間、じっくりと時間をかけてお話を伺うこともあります。胸にたまっていたものを吐き出すだけで好転に向かう患者さんもいらっしゃいますし、泣きながらお話しするなど“真剣”に話してくださる方は症状が改善につながる方が多いように思います。皆さんのお話をしっかりとお聞きできるよう、また私自身の体調のこともあり、完全予約制とさせていただいています。

患者に接する際に心がけていることはありますか。

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「自分ならばどうか」と相手の立場になって考えること、そしてできるだけ薬を使わずに、体に負担をかけずに良くなっていただきたいと思っています。安定剤など症状を緩和するための薬もあり、時に医師側が頼ってしまうこともありますが、薬物療法は患者さんが薬に依存してしまうケースも多いというデメリットがあります。そのような可能性のある薬をなるべく使わず、良くなっていただきたいと考えています。また私の恩師は「本当に心を癒やすのは医者の人格のようなものだ」とおっしゃっていました。私も経験を深めて人格に磨きをかけ、技法や言葉でなく、人格でお役に立てる人間にならなくてはと思っています。

不安や恐怖感は生への欲望、否定せず「受け入れる」

森田療法に力を入れていると伺いました。

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森田療法は、東京慈恵会医科大学精神神経科、初代教授の森田正馬先生がつくり上げた日本生まれの精神療法です。西洋の精神療法は不安や恐怖感を「取り除く」という考え方が多いですが、森田療法は、不安や恐怖感は自然なものとして「受け入れる」という考え方が特徴です。不安や恐怖感が発生するのは、その人が「こうありたい」と思う欲望や願望や理想などに生きようとする「生の欲望」があるからです。例えれば、「生の欲望」は“光”のようなもので、“光”があるから死への恐怖や不安感などの“影”ができるわけです。光と影の関係から不安や恐怖の感情を「取り除く」ことは、生きる欲望そのものを否定するということになりかねません。光があれば影がある、その影は仕方がないので、影はそのままに光に向かって進んでいこうという治療です。

ストレスなどが原因の体の不調を改善するための「自律訓練法」について教えてください。

ストレスを受けることで消化器の症状をはじめ、肩こりや腰痛など筋肉の症状が出やすくなります。こうした症状には自律神経が関係しており、自律神経のバランスが崩れると頭痛やめまい、肩こり、腰痛、不眠、食欲減退などさまざまな症状につながってしまいます。当院では自律神経のバランスを回復させることをめざす「自律訓練法」を導入し、患者さんからのご希望があれば、指導させていただいています。この訓練法はストレス反応のコントロールをめざし、体の緊張を解きほぐしながら心をリラックスさせるための方法です。また精神を安定させ、ストレスを軽減させるといわれる神経伝達物質のセロトニンの分泌が高まるよう、日々の食事や生活習慣へのアドバイスも行っています。

先生ご自身のリラックス方法は、ご趣味の川柳でしょうか。

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私は今日まで30年ほど現代川柳を嗜んでいます。俳句が自然を対象にするのに対して、川柳は人間、もしくは自分を対象として制作いたします。川柳の目は主観的であると同時に客観的に己を見つめますので、認知療法的な側面もあります。趣味として楽しんでいることですが、川柳の経験は診療にも生かされているし、かなり影響は受けていると思います。人生の中で大きな出来事といえば、阪神・淡路大震災と私自身の病気。震災では長く診察してきた患者さんが倒壊した家の下敷きになり亡くなり、私がご遺体の検案をしました。「死体検案す即死であったこと願い」はこの時の想いを詠んだ川柳です。震災には本当にショックを受け、乗り越えるのも大変でしたが、前向きに乗り越えられたのは川柳と、過去や未来ではなく「here&now」を大切にする森田療法のおかげだと思っています。

大病経験をもとに、患者の心の痛みに寄り添いたい

先生は大病をされクリニックを閉院後、2018年に移転再開したとお聞きしました。

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実は10年ほど前に悪性リンパ腫を発病し、2018年には脳への転移が判明しました。生きるのであれば抗がん剤治療と放射線治療を受けなければならない。しかし治療を受ければその影響で認知症を発症する可能性も高いと主治医から言われました。死にたくない、しかし認知症になって妻や家族に迷惑をかけたくないと悩み、強いうつ状態から自殺念慮まで出現しました。幸い治療が成功し、徐々に体が動くようになり、本来の生活を取り戻したいと思う余裕も持てるようになり、仕事復帰をめざしました。そして、同じ香櫨園エリアで再開院したんです。

今後の展望を教えてください。

自らの病によって患者さんの心の苦しみを体験し、自分の心身でそれを理解することができました。がんや難病を持つ患者さんは、死生観への悩みに伴う「スピリチュアルペイン」に苦しんでおり、私も同様に苦しんだ経験を生かし、患者さんの心の痛みに寄り添っていきたい。がんの発病が患者さんやその家族に与える影響、また職場や地域などの社会的因子が症状や治療の経過に与える影響について学ぶサイコオンコロジーやがんと診断された患者さんができる限り変わらぬ生活が送れるように支援することが求められています。私の残された時間で、高齢の方やがんや難病を抱え、生きるつらさを持ちながらも前向きに生活している人たちの心の芯の痛みを和らげ、生きがいにつなげる仕事ができればと願っています。

読者へのメッセージをお願いします。

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例えば「完璧にやらなければいけない」との強迫的な考えから抜け出せなかったり、急に心臓がどきどきし「死ぬのではないか」と強い不安に悩んでいたりと、自分でも知らないうちに苦しめられている方も多いと思います。受診することは、緊張もしますしとても勇気のいることです。ですから家族の方が少し背中を押してあげたら患者さんも来やすいのではないでしょうか。来院は、不安なことを飛び越えて行動できたということですから、すごいこと。一人で考えているとそこから抜け出せなくなることもあります。誰かに話すだけでもずいぶんと楽になると思いますので、勇気を出して話しに来ていただきたいですね。

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