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内田 貞輔 院長の独自取材記事

静岡ホームクリニック

(静岡市駿河区/静岡駅)

最終更新日:2021/10/12

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック main

静岡市駿河区の住宅地に位置する、在宅医療を専門に取り組む「静岡ホームクリニック」。内田貞輔院長が中心となり、さまざまな領域において専門とする医師たちと連携しながら、多くの患者の生活を支えている。検査機器も充実しており、ポータブルのエックス線撮影装置は、ベッドに寝たままもしくは椅子に腰かけた状態での撮影が可能で、肺炎の診断に役立つという。また夜間の緊急時にも対応できるよう、24時間365日のサポート体制をとっている。在宅医療に対する大きなやりがいを感じながら日々診療にあたる内田院長。その思いの根幹にあるものは何か。これまでの研鑽を交えながらじっくり話を聞いた。

(取材日2018年2月16日)

医師としての経験を糧にクリニックを開業

クリニック開業の経緯を教えてください。

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック1

大学卒業後は大学病院で勤務医として、リウマチ・膠原病治療を専門に研鑽を深めてきました。外来診療では、さまざまな患者さんとの出会いがありましたね。特にリウマチ・膠原病治療において、「同じ目標を持ち患者とともに治療に取り組む」ということの大事さを学びました。一方で通院が難しくなり外来診療を中断された方、入退院後の様子がわからないという方もいらっしゃるという現実も知ることができました。そのため、内科の開業医のもとで経験を積ませていただいたり、救急医療や在宅医療に触れる機会をいただき、専門とする分野だけでなく、さまざまな医療の現場を目にすることができました。これらの経験を生かし、「患者さんに寄り添う医療の提供」を実現すべく、開業を決意しました。

リウマチ・膠原病治療と在宅医療という組み合わせは、珍しいと感じました。

そうかもしれません。しかし私にとって、リウマチ・膠原病治療の研鑽を積んだからこそ、在宅医療の道につながったのだと感じています。リウマチや膠原病という病気は、治療によって良い状態を保ち続けていくことが基本となりますから、おのずと長いお付き合いとなることが多いんです。勤務医時代には、「この患者さんは、僕が研修医の頃から診ているんだよ」と語る先輩もいて、まさに二人三脚の医療だ、と感じたのをよく覚えています。患者さんとそういった関係性を築けるのは、素敵なことですよね。それにリウマチ患者さんの中には、病状の進行により通院が困難となる方も少なくありません。リウマチ・膠原病治療と在宅医療、双方で専門性を深めてきた私だからこそ、できる医療があると思えたのです。

めざす医療を実現するため、どのような診療体制を取られているのですか?

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック2

当院のコンセプトを一言で表現するなら、「動く総合病院」です。現在、内科をはじめアレルギー科や皮膚科、リウマチ科、精神科、耳鼻咽喉科、外科や整形外科、泌尿器科、眼科を標榜し、私をはじめ、さまざまな分野において専門性を深めてきた医師と協力しながら、診療にあたっています。在宅医療を利用する患者さんは、それぞれ抱える疾患や悩みが異なる上、それが複数絡み合っていることがほとんどです。お年を召したら、何かしらの不調を抱えるのは当然のことですからね。本格的に在宅医療に従事するようになって、患者さんたちに対して必要とされる医療をきちんと届けられる体制づくりが求められると感じました。「在宅だから、その医療は受けられない」といったことにはしたくありませんから。患者さんが病院へ来られないのであれば、私たちが出向いていこうといった気持ちですね。

患者の生き方を「支える医療」の実現をめざす

診療時心がけていることは何ですか?

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック3

患者さんにとって「健康創造パートナー」であるために、何においても大切にしているのが対話です。特別なことではないのですが、何気ないことであっても、いつも患者さんと同じ目線となるような姿勢でお話しするようにしています。これは私にとって一種の敬いの姿勢なんです。在宅医療を求める患者さんの多くは、高齢の方。人生の先輩として、敬意をもった姿勢で向き合うことは、人として必要なことと思っています。あとは、患者さんの体にしっかり触れることでしょうか。「手当て」という言葉の通り、手を当ててあげるだけで、自然と痛みや気持ちは和らぐもの。それにご自宅であれば、患者さんが普段通りに過ごせる空間で、じっくり腰を据えてお話しすることができます。そういった対話一つにしても、患者さんやご家族にとっては、とても喜ばれることなんだな、といつも感じています。

在宅医療であれば、ご家族との対話の場面も多いでしょうね。

もちろんです。患者さんにしろ、そのご家族にしろ、病気を抱えながら生活を送ることに、不安を抱えるのは当然のこと。普段の診療でも、病気のことだけでなく、日々の生活に関するちょっとした悩みなどもよく話をしていただきますよ。一見すると、手当てや話を聞くといったことは、「医療行為」とは取られにくい面もあるかもしれません。でも在宅医療において、多くの場合で主軸となるのは、治すことよりも、その病気とどう付き合っていくか、ということ。患者さんの日々をより良いものとするためにできることは何か、一緒に悩み、考えていくことです。病院が担う医療を「治す医療」だとすれば、在宅医療が担うのは「支える医療」。もちろん、時には希望には沿えないと判断することもあります。しかしそこで「できません」とするのではなく、「他にできることはないか?」と考えていくことは、どんな時も必要と思っています。

患者さん一人ひとりに寄り添うためには、ドクターやスタッフの皆さんの協力も不可欠かと思います。

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック4

そうですね。現在常勤の医師は私を含めて2名在籍していまして、4月には3名体制になる予定です。非常勤の協力医師も含めるとかなりの人数になりますね。看護師をはじめスタッフの皆さんなしに、当院のことは語れません。診療に帯同する看護師は、私の診療を常に間近で目にしていますので、そこで感じる診療の空気感や流れなどを、他の医師の診療の場でも示してくれているんです。ありがたいことですね。

地域にとって信頼のおける存在として成長する

在宅医療の現場で不可欠なものとは、何でしょうか?

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック5

これは私の経験に基づくことですが、在宅医療において、医師も看護師も、共通して必要なものがあると思っています。それは、目の前の相手に対する「共感力」です。先ほどもお話した通り、在宅医療は治療することがすべてではありません。相手の気持ちを受け止めて共感できなければ、一緒に考えていくことはできませんよね。これは知識や専門性以上に求められるものではないかと思っています。在宅医療という言葉から「終末期医療」や「看取り」を想像される方が多いかもしれませんが、それらはあくまでも在宅医療の中の一部。多くの場合は、数年数十年といった長いスパンでの支援が求められてきます。だからこそ、相手の思いに共感することこそが、患者さんに寄り添うということだと思うのです。これからも、私たちが診ていくのは病気ではなく、人そのものですから。

昨年には、在宅医療に関する著書も執筆されたとか。

介護職に従事する方から「在宅医療の入門書として読ませていただいています」なんてお声を頂くこともあり、うれしい限りです。本のタイトルにもある通り、患者さんのご家族に向けた内容にしたいと思ったんです。というのも、一般的に流通している在宅医療に関する本の中で、「そもそも在宅医療ってどんなものなの?」といった内容に主軸を置いているものって、実はあまりないんですよね。私としてはもっとスタート段階の部分を重点的に盛り込んで、読み手に在宅医療を身近に感じてもらえたらという思いで書き進めていきました。こういった発信が、在宅医療を検討するきっかけの一つになってくれたら喜ばしいですね。

今後の展望についてお聞かせください。

内田貞輔院長 静岡ホームクリニック6

地域の医師、コメディカルの方々と協力し合いながら、この静岡の地域で、在宅医療を当たり前の医療として定着させていきたいです。在宅医療の基盤となるものは、他でもなく患者さん一人ひとりの“生活”です。生活の中には、医療だけでなく介護や福祉が関わる場面もあります。そういった、生活に関わるすべての人たちと対等に関わり合いながら、できることに尽力していきたいです。高齢化が進む中で、在宅医療の需要は今後さらに高まっていくことでしょう。そんな時代を迎える中で、私たちが地域の皆さんにとって有益な存在、頼りになる存在として成長していきたいです。

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