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石川 慎一 院長の独自取材記事

岸辺こころのクリニック

(吹田市/岸辺駅)

最終更新日:2019/08/28

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JR京都線岸辺駅。北大阪健康医療都市計画が進むこのエリアは、駅北側に移転してきた国立循環器病研究センターや市立吹田市民病院が立ち並ぶ。JR岸辺駅より阪急正雀駅方面に向かって歩くこと約5分。昔ながらの家々が連なる一角に「岸辺こころのクリニック」がある。院長を務める石川慎一先生は京都大学医学部付属病院や兵庫県災害医療センター、滋賀県立精神医療センター、西神戸医療センターなどで勤務医として経験を積んだ後、2016年当院を開業した。「大切なのは孤立せず、他者とつながること」と語る石川先生に心の在り方や精神医療の展望について話を聞いた。
(取材日2019年1月23日)

「人の心」への探求心が精神科への道を歩ませる

先生は工業大学を卒業後、一般企業での就労経験がおありなんですね。

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はい。通信会社で勤務していました。10代の頃は人間への興味からロボットを作ってみたいと思い、大学では機械工学を専攻していました。勉強を進める中で「人の心」について考えるようになり、関心がハードウェアからソフトウェアへ変わったんです。大学院では組織の中におけるコミュニケーションについて研究し、その経験を生かせる仕事をしたいと思いました。就職した会社の研究所では音声認識の開発などに携わりました。実際に仕事をしているといろいろと厳しい現実があり、考えた末に辞職しました。周りからは心配されたり叱られたり。私自身ゼロから人生を考え直す機会となり、本当に自分のしたいことが何なのか自問しました。以前からあった人の心に対する興味が深くなり、そこに関わる一番の近道は精神科医になることではないかと思い至りました。医学部に入ってからは、それこそ後がないので必死で勉強しましたよ。

さまざまな基幹病院、公的医療機関での勤務経験をお持ちですね。

関西の基幹病院だけでなく、九州の離島でも診療を行いました。さまざまな病院、地域に患者さんがおられ、一人ひとりが皆違います。おかれている社会背景もさまざまで、それぞれにフィットした診療が必要であるということを身をもって体感してきました。一日でも早く患者さんをしっかり診られるようになりたかったので、いろんな症例を診ることができて良かったと思います。私は医師としてのスタートが他人より10年遅いです。年齢の割にキャリアの短い私は、勤務医のままではやりたい仕事をすることができずに定年を迎えてしまうのではないかというい思いも湧いてきました。それを意識した時に開業を考えるようになったんです。

岸辺に開業されたのはなぜですか? どのような患者さんが来られますか?

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岸辺は祖父母が住んでいた場所で、私は隣の市で生まれ会社員だった父について長く関西を離れていました。しかし研修医のときから、再び吹田市で暮らす機会がありました。この地域は私にとってスタートの場所だったんです。開業を考え始めた頃、国立循環器病研究センターや市立吹田市民病院の移転をはじめとする医療関連の機能集積が進む北大阪健康医療都市整備事業を知り、自分もそうした動きの潮流に乗って一緒に活動してみたいと思いました。クリニックには子どもさんからご年配の方まで幅広い世代の方がいらっしゃいます。学生さんや働き始めたばかりの若い方は人間関係、働き盛りの世代の方は職場でのストレスや子どもさんについて、ご年配の方は気持ちが落ち込んでしまってうまく生活ができない、といった内容で相談に来られます。皆さんこのクリニックを大事にしてくださるので、こちらもより丁寧に接したいという気持ちになりますね。

ヨットセラピーをはじめ、広範囲な精神医療を提供

先生が診療時に心がけておられることは何ですか?

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患者さんが何を求めて来られているのかを理解することが大切です。もちろん薬も使用しますが、心の病は薬だけで治るものではありません。その方の回復力をうまく使うことが必要とされます。心のケアで一番大切なのは自己コントロールを回復させること。患者さん自身の治りたいと思う気持ちを高めてあげることです。それと同時に孤立感を取り除いてあげることも重要です。あなたの心の隣にいますよ、つながっているんですよ、というイメージを持って患者さんと向き合います。

治療の一環である、ヨットセラピーについて教えてください。

これは精神科リハビリテーションの一つと考えています。人が自己実現するためのプロセスにはいくつかの局面があります。物事がうまくいかない状態が長く続くと人はうまくいくやり方を忘れてしまいます。自分の気持ちを実現するためのプロセスがわかっていない人には新たに理解してもらい、忘れてしまっている人にはもう一度思い出してもらう。そのプロセスをクルージングを通じて行っています。これまでヨットに乗ったことのない人が出港して5回の段階を経て島に渡ることで自己実現を行うためのプロセスを学びます。「今日は○○をします」「明日は○○をします」と回を刻んでいくことで5回終えた後には次の自分の生活の中で何をしなければならないか、物事の進め方を履修するわけです。

実際に船に乗って複数のクルーとともに海を体験するのですね。

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そうです。実際に海上で風を受けて船が進むことを体験するだけでも違うと思いますよ。ヨットはエンジンを使っているわけではないので「右へ」ですぐ右へ行くわけではありません。環境と自分の意思を調和させなければうまくいかないんですよ。また今調和したと思っても風や潮流はすぐに変わるので船が進む限りその調整はエンドレスです。海は普段はなじみのない場所かと思います。そんななじみのない場所では仲間とコミュニケーションを取らざるを得ない。それが良いトレーニングになれば、と思っています。私は医学部生の時にホームステイでニュージーランドへ行きました。その時に初めてクルーザーに乗ったんです。そのときは外洋でダイナミックなセーリングで、私にとって強烈な印象を残しました。この時、セーリングは医療に絶対に良い!と直感的に思ったんです。実際のヨットセラピーは穏やかな海で行いますのでご安心ください。

社会的な動きに敏感であり続け、自院での診療に生かす

この仕事のやりがい、そして難しさとは?

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もちろん患者さんの症状が改善した時が一番うれしいです。しばらく受診しておられなかった方が「今こんな生活をしています」「大学に受かりました」「高校に行っています」と報告に来てくださることがあります。自分を取り戻して充実した生活を送っておられる姿を見ると安心します。医師になるまで回り道はしましたが、その経験も、受験生や社会人の方の診療を行う上で役に立っていると感じます。一方、相手のことを考えて取り組んでも、コミュニケーションがうまくいかないこともあります。そんな時は難しさを感じます。

今後の展望をお聞かせください。

標準的な医療を提供したいと思っています。ただ、この標準的というのが難しいのです。医学的にはもちろんですが、社会的な動きに対しても自分自身が日々研鑽を積み勉強しなければなりません。嘱託医活動や相談医活動を積極的に続け、外に出てさまざまな社会的様相を見ることが必要不可欠だと思います。現在、いろいろな組織から相談業務を依頼されており、その担当者から相手への接し方や心のケアの方法について尋ねられることがあります。そういった機会に今の世の中にどんな問題があるのかが見えてきます。こうした活動を続けることが標準的医療の提供につながるのだと思います。

最後にメッセージをお願いします。

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日常生活において心がけると良いと思うことは、自分の気持ちを客観的に見ること、感謝の気持ちや許す気持ちをもって他者とのつながりの機会を失わないことです。孤立せず皆と生きていくにはどうすれば良いかを考えるということです。私たちの持つ自我意識は独善的傾向が強いところがあります。他の人がどのように感じているかを意識し、自分の言動を調整し、一人が二人、二人が三人と大きなユニットで生きていこうとすることはとても大切なことで、まさにそれも心のなせるところなのだと思います。過言かもしれませんが、電子装置によって情報化が進んだ現代は、情報を処理する心の在り方が問われていると思います。変遷の時期なのかもしれません。新しい世の中での心を再構築しなければならないでしょう。古い自我意識の心の構造に翻弄されず、少しでも本質的な話を共有して、新しい健康的な社会を作るためには皆さんの意識が大切だと思います。

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