かぶせ物を外さない外科的根管治療
気になるメリットや治療期間は
くりえいと歯科おおかわちクリニック
(宗像市/赤間駅)
最終更新日:2023/03/14


- 自由診療
歯の根にトラブルがある際に行われる根管治療。複雑な形をしている根管内を処置するため、再治療時はかぶせ物を外して行うのが一般的だが、「くりえいと歯科おおかわちクリニック」の大川内秀幸院長によると、外さなくて済む場合があるという。これは、外科的根管治療と呼ばれ、細菌感染した歯根の先端部を外科処置によって取り除く方法で、歯根端切除術と意図的再植術がある。外科的処置を行うメリットは、一般的な根管治療では見込めなかった症状の改善や歯の保存が期待できること。また、土台やかぶせ物を外す際は、健康な歯を削ることで少なからず負荷がかかるため、それが原因でトラブルが起きたり、将来的に歯が割れたりするリスクも。そこで今回は、より専門的な治療として有用だという外科的根管治療について、大川内院長に話を聞いた。
(取材日2023年2月7日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q一般的な根管治療について教えてください。
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A
細菌感染した根管内から感染源を除去し、再び感染しないように薬を詰めるのが一般的な治療です。治療にあたって当院では、唾液が入らないようラバーダムと呼ばれるゴム製のシートで患部以外を覆っています。これはどこでも行っている処置ではありませんが、唾液の中には数億もの細菌がいるとされ、患部に接触すると感染リスクが高まることから、当院では必須としています。感染すると、再治療(感染根管治療)や抜歯となる可能性もあるので、十分注意を払う必要があるのです。なお、当院では一般的な根管治療を行っても改善が期待できない場合、抜歯の前に外科的治療を検討することもあり、可能な場合はかぶせ物を外さずに実施しています。
- Qかぶせ物を外さなくても治療できるのですか?
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A
状態によっては可能です。かぶせ物を外す場合、中の土台や根管内の詰め物も除去する必要があり、歯をさらに削ることになります。その結果、歯がもろくなり最終的に抜歯になることも。そこで、有用なのが「歯根端切除術」で、かぶせ物をしたまま歯根の先端だけを切除し、そこから薬を詰めるという方法です。ただ、全部の歯に行えるわけではなく、根が1つの前歯や小臼歯に実施するのが基本。また口があまり開かない方や、感染部が深い場所にあり骨を大きく切除する必要がある場合は、ハイリスクのため行いません。その場合は、一度歯を抜き口腔外で根の先を切断して薬を詰めてから場所に戻すという「意図的再植術」を提案するケースもあります。
- Q痛みや治療期間についても教えていただけますか?
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A
歯根端切除の手術は、1ヵ所につき基本的に1回です。痛みの感じ方はさまざまですが、痛み止めが、手術翌日も必要な方はほとんどいないでしょう。とはいえ、外科的治療ですので多少腫れることはあります。当院では2週間後に抜糸し、そこで問題がなければ通常どおりの食事も行えるようになります。さらに、経過観察のために2週間経過した術後1ヵ月に受診していただき、エックス線写真を撮って歯の状態を確認します。その後も、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後といった間隔でエックス線撮影というのが大まかな流れです。意図的再植術もかぶせ物を外さずに行えることがありますが、一度抜歯するため、その後の経過は歯根端切除術とは異なります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診・カウンセリング・検査と説明
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問診表に記入後、トリートメントコーディネーターのカウンセリングを受ける。その後、口腔内の診査や撮影を実施。同院では、カウンセリングが45分、歯周病の有無、歯の残存本数、かぶせ物の種類などの確認、口腔内撮影といった歯科医師による検査に30分ほど時間を要するため、初回はここで終了となる。収集した資料をもとに歯科医師が立案した治療計画については、次の来院時に説明される。
- 2感染根管治療を実施
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外科的治療はリスクも伴うことから、同院では、再度根管をきれいにするための感染根管治療を第一選択肢としているそう。「他院で抜歯宣告をされた」というケースでも、口腔内を精査した結果、歯科医師が自分の歯を残すことが可能と判断した場合は、試みるとのこと。治療においては、感染防止を目的としてラバーダムを使用するとともに、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いて根管内を拡大視しながら治療が行われる。
- 3感染根管治療ができない場合、外科的根管治療を実施
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感染根管治療が上手く奏功しないもしくは治療自体できない場合は、歯根の感染部分のみを除去する外科的根管治療である「歯根端切除術」、もしくは感染部分を歯ごと一度抜き、精査して治療を施した後に元の場所に戻す「意図的再植術」を実施。それぞれに適応条件が異なるため、事前の口腔内診査や資料、患者の希望をもとに、どの治療が適しているかを歯科医師が判断する。外科的根管治療を受ける場合、手術前後2週間は禁煙が必須。
- 4術後の経過観察
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歯根端切除術後、1週間で歯が安定する人もいれば、3週間は歯が安定せず食事ができない場合もあるので、同院では手術日から1ヵ月は旅行などの予定は入れないようにとアドバイスしているそう。なお、術後3日間は抗菌薬を服用し、2週間後に抜糸を実施。患部の状態によって予後に多少の違いはあるが、同院では、術後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年とエックス線撮影を行い経過観察することを基本としている。
- 5術後のケアについて
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手術した歯は力に対して脆くなっているため同院では、歯を守るために睡眠時の歯科用マウスガード装着を推奨。睡眠時の歯ぎしりや食いしばりには、歯が割れるほど大きな力が生じることがあるため、それを軽減するマウスガードの着用が必須だという。夜間の歯ぎしりや食いしばりがまったくない人はほぼいないといわれているため、特に歯のすり減りが多い、何度も治療を繰り返している、セラミックの歯を入れているという人は要注意。
自由診療費用の目安
自由診療とは意図的再植術 44000~110000円/歯根端切除術 44000~110000円