歳を重ねれば誰もが物忘れ
知れば納得。やさしい「認知症」の話
かがやきクリニック川口
(川口市/西川口駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
古くは痴呆と呼ばれていた認知症は、今や若いうちから予防する病気として認識されている。一方で、情報が広がったことにより「認知症は怖い病気」、「認知症と言われたくない」というネガティブなイメージも増幅され、なかなか自分の症状を認められない人も多いという。しかし、よく考えてみると誰にでも物忘れはある。それは子どもや若い人でも変わらない。忘れることを悪のように考える私たちだが、「認知症を誤解しないでほしい」と話す「かがやきクリニック西川口」の腰原公人院長に話を聞いていくと、脳はメモリーがいっぱいになればいらないデータを削除するコンピューターと同じ、自然の成り行きに思えてきた。「認知症とは何か」その考え方から、これからの認知症の在り方を話してもらった。
(取材日2016年10月24日)
目次
認知症は誰にでも起こる老化現象の一つ。正しく理解し、社会との関わりを大切にすることが予防につながる
- Q認知症とはそもそもどのような病気ですか?
-
A
▲認知症治療に力を入れる同院
今まで自分ができてきた社会生活、コミュニケーションなどができなくなる病気です。身体的な原因によるものではなく、思考や記憶が今までのように働かなくなる病態と考えています。とても怖い病気だと認識している人が多いと思いますが、私から見ると病気への間違った理解が広がっているような気がします。認知症は確かに一度発症したら治らない病気です。ですが、決して治療法がないわけでも、有効な薬がないわけでもありません。きちんとした治療を早くから受ければ、進行を遅らせることも、症状を緩和することもできるでしょう。怖いというイメージだけで、治療を諦めないでいただきたいですね。
- Q認知症の原因は何ですか?
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A
▲患者だけでなく、日頃の家族の協力も重要とのこと
認知症にもアルツハイマー型をはじめさまざまな種類があり、医学的にいえばそれぞれに発症の要因はあります。しかし、根本的に何が原因で認知症になるかは未だ定かではありません。脳は年齢とともに萎縮していくもので、30歳前後を境に機能が衰えていきます。認知症は「怖い病気」なのではなく、誰の身にも等しく訪れる身近な現象の一つなのです。医療者や介護の世界、社会そのものがそんな身近なものを特殊な目で見ること自体間違っていると私は感じています。足が悪くなっていけば杖を使い、歩きづらそうな人に誰かが手を貸すように、物忘れが少しずつ多くなっていったときも自然と助け合う社会の雰囲気があるべきではないでしょうか。
- Q介護するご家族に心がけてほしいポイントはありますか?
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A
▲スペースにゆとりのある診察室
私自身、親の介護で経験がありますが、身内であればあるほど認知症の方の言動は否定したくなります。他人の幻覚が見えているという言葉に「そんな人はいない」と言ってしまったり、何度も同じことを言う患者さんに対して「さっきも言った」と言ってしまったり。介護するご家族は本当に大変です。しかし、否定は患者さんを不安にさせ、孤独感や猜疑心を抱かせます。負の感情は病状を悪化させる天敵。認知症がどんどん進行していくばかりか、介護者への不信感で介護がしづらくなるでしょう。
- Q認知症の進行を遅らせる方法はありますか?
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A
▲院内からの発信にも積極的
生きがいを持つことです。認知症の段階によってもアドバイスは変わってきますが、軽度であればご自分で趣味を見つけたり、同じ趣味の仲間を持って付き合いを大事にしたり。重度であれば自分で出歩くのは難しくなりますから、介護の方と協力して患者さんの間に立ち、デイサービスなど施設の利用を勧めるなど、他者との人間関係を保てるようにお話します。生きがいとはつまり、楽しいと思える時間を持つこと。その時間が増えていくことが認知症の進行を遅らせる大きな力になっていくのです。
- Q若い世代が日常生活の中でできる認知症予防はありますか?
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A
▲臨床検査科を標榜している同院
若いうちからコミュニティに参加して、人間性を豊かにしておくことが何より重要だと思っています。人との関わりは、どんな治療よりも脳への刺激になるもの。友達とコミュニケーションが減っている、電子機器だけに頼る生活への危惧があります。これから自分の見たい情報だけ調べる電子機器や自分のしたい時に好きな相手とだけしかコミュニケーションしない世の中が広がれば、その人たちが認知症になった時、また今とは違う問題が出てきてしまうのではないかと少し怖いです。また、最近は認知症の発症と生活習慣病の結びつきが明らかになってきました。生活習慣病の予防が認知症の予防にもつながることを皆さんにも知っていただきたいです。