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浅田 義孝 院長の独自取材記事

新百合ヶ丘こころのクリニック

(川崎市麻生区/新百合ヶ丘駅)

最終更新日:2021/10/12

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック main

浅田義孝院長がなじみある小田急線沿いに2015年7月に開院した「新百合ヶ丘こころのクリニック」。院内は心地良い静けさがあり、落ち着いた雰囲気にしたかったという思いが反映されている。診察室は温かい色の照明と、患者用にリクライニングチェアを利用し、じっくりと話を行うことを意識している。寝椅子を用いた自由連想法による診療もここで行われ、フロイト的精神分析療法を取り入れている。経歴や趣味を尋ねると、にっこりと穏やかな笑顔を見せて話してくれた浅田院長。にじみでる人柄こそが患者の心を癒やす薬のようにも感じた。ゆっくりと流れる時間の中で、得意とする治療法から医師をめざした意外な経緯についても話を聞いた。

(取材日2015年8月18日/情報更新日2019年9月11日)

パターンやマニュアルにとらわれず綿密な診療を行う

法学部卒業後、医学部に進まれていらっしゃいますね。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック1

そうなんです。ただ、法学部と言っても、弁護士や官僚になりたかったわけではなく、ただ歴史の勉強がしたかったんです。でも人間に興味があっても政治に興味がないことに途中で気づいて。多くの本を読むうちに、精神科の医師が書いたものをおもしろいと思うようになっていました。いよいよ就職か研究か進路を決めなければならない4年生の夏休み、ちょうど児童館で館長をしていた知り合いの神父さんを京都まで訪ねたのですが、たまたま忙しいタイミングで、待っている間に児童館の子どもたちと野球などをして遊んだんです。そうしたら「明日も来なよ」と誘われて。結局、7月後半から9月いっぱいまで児童館で寝泊まりして子どもたちと過ごしました。

子どもたちとの交流を通じて、精神科の医師をめざそうと思われたのでしょうか。

ある時のキャンプで、突然、恐怖症状を出す子がいたんです。気になって、街へ出て片っ端から本を読み歩きました。心理療法や児童文学にふれ、精神医療や精神分析に興味を持つようになって。それで臨床心理士になろうと教育学部に通いました。恩師に助言を受け、急きょ医師の道へ。当時は、うつ病の患者さんは治療法も薬を飲んで休めば治まるとワンパターンになりつつありました。今でも抗うつ薬と認知行動療法、とマニュアル化されやすいですね。しかしその30年以上前に、マニュアル化された治療では改善しない方が多数いることが専門家の間で問題になっていました。私も精神分析的な視点に基づいた診察を通じてうつ病の方を理解することが真の治療につながると考えるようになりました。この姿勢は大学病院での研修と、それ以上に恩師や先輩の背中を見て学びました。

広島市精神保健福祉センターに勉強に行かれたのはどのような理由ですか。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック2

本格的に精神分析を学ぶためロンドン留学をするか悩みましたが、お金と度胸が足りず断念しました。しかし、広島市精神保健福祉センターの衣笠所長が、ロンドンから本格的な精神分析を導入してこられたので、広島へ向かいました。先生は、もう時代遅れと思われていた寝椅子と自由連想を使い、夢を解釈し週に何回も面談を行うという古典的な精神分析を、公的機関の精神保健業務で当然のこととして行っていました。イギリスやドイツでは、精神分析は保険診療で行われ、国営の精神保健の中核をなしており、通常の臨床に役に立つのだとお話しされていましたね。先生のその言葉には勇気づけられました。

寝椅子を使用した精神分析の集中的な治療法を導入

クリニックの診療の特徴について教えてください。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック3

ゆったりとした椅子があるほかは他院と変わりないと思います。お話を心を全開にして聞き、役に立つと思えることが浮かべば話し、処方します。お話を伺うときはかなり感覚を研ぎ澄ませ、患者さんが伝える気持ちの細かいニュアンスを捉えようとし、いろいろと想像します。これらをあるイメージにまとめ適した治療を提案します。これは精神分析の訓練のたまもので、どの薬が合いそうか、勘が働きやすくなります。精神症状学に当てはめていくことも大切ですが、「これはうつ病だから、こういう治療」というような国際的な診断基準に当てはめただけの診療は私にはできません。また当院は、薬に偏りがちな精神医療だとなかなか対処が難しい病態にも治療の道を開くため、必要だと思われる方に精神療法を提供しようと考えており、スタッフの充実を図っています。皆、長年の訓練を経ていますよ。

精神分析を用いた治療も行っているとお聞きしました。

寝椅子を用いた自由連想法による精神療法を行っています。患者さんには頭に浮かんだことを話してもらい、医師がその話を聞いて役に立つことがあれば伝えます。寝椅子での診療はある程度心のことについて自身で話せて、育ち方や親・人間関係に悩んでいる方が中心です。人となりに合った診療を行い、ニーズがあれば精神療法を、より深い治療を望まれる方には精神分析を用いた治療を行います。この治療によって患者さんが自分自身のことを深く考え、治療終了後も自己治療が進められるように取り入れています。

患者さんとの印象深いエピソードがあれば教えてください。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック4

うつとパニック障害の症状に悩み、精神療法を求めてきた患者さんがいました。約4年治療を続けて、薬はいらなくなり、治療が終わった時「世界の見え方が前とは違う」とおっしゃっていました。治療を続けていくと、話の内容がだんだん深くなったり情緒的なやりとりが豊かになったりしていくんです。通常、医師は、不愉快な感覚や感情を感じたら、その感覚や感情を遮断しようとするよう訓練されています。精神療法や精神分析というのはそういったこちらの感情に蓋をせず、自分の心の中をじっくり見ていくことで、逆に患者さんの気持ちが実感できるようになります。

悩みは一人で抱え込まず、専門機関に受診を

どのような症状がある場合に精神科を受診したらいいでしょうか。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック5

こんな悩みで行っても良いのかなと思わず、悩んだらぜひいらしていただきたいですね。まずは悩みやその背景をよくお聞きして、何がお役に立てるか考えます。うつや不安、不眠などで来院される方が多いですが、内科で抗不安薬を処方されていることがあります。抗不安薬は良い薬だと思いますがかなり取り扱い注意の薬であることがわかってきています。かえって情緒不安定になったり衝動的になったりと、処方してはならないタイプの病気の方もいるので、精神科の医師の診断が必要です。長く服用することで、抗不安薬依存になることもありますからやはり早めに専門機関に受診してほしいですね。

先生の心の健康法がありましたら参考にさせていただきたいです。

自分を大事にしてくれる人たちと心の中で会話をすることです。実際に会うのではありません。理想的な人間関係はないと思っていますが、互いに頼り合える関係が持てたらそれだけで良いですし、そういう関係があれば、治療は早く進むことが多いです。また、自分の限界を越えて抱え込まないこと、外の光を浴びるなどして規則正しい生活を送ることも心を健やかにします。あとは趣味などの気晴らしができればいいですね。私は音楽が好きです。また、漫画やアニメも好きで、患者さんと話したりします。趣味の話など患者さんにもリラックスして話してもらえれば良いですね。

読者に向けて、メッセージをお願いします。

浅田義孝院長 新百合ヶ丘こころのクリニック6

昔のうつ病のイメージは一気に症状が出て一定期間で治まるというものでしたが、今は大きな症状はあまりなく長引いたり、ストレスが出て再発することが多いです。治まり出してからが大変で、社会・職場復帰の際のケアが重要になってきます。当院の患者さんは10〜90代と幅広く、思春期の悩みから認知症の方までさまざま。街中にあることもあって、うつ病の診療に来られる患者さんが多いですが、現代は仕事も家庭も要求されることが増え、厳しい環境にさらされているので、心の病は老若男女誰にでも起こりえます。悩みは一人で抱え込まず、調子がこじれないうちに専門家を受診してくださいね。

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