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二村 吉継 院長の独自取材記事

二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック

(大阪市阿倍野区/西田辺駅)

最終更新日:2023/09/04

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック main

大阪メトロ御堂筋線西田辺駅から徒歩1分ほどの場所にある「二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック」。花粉症や蓄膿症、喉や耳のトラブルなどの一般診療に加え、音声を専門に扱う外来を設けて声の診療にも力を入れているため、同院には声の悩みを抱える患者が遠方からも訪れる。自らもギターを愛し音楽活動を行う二村吉継(にむら・よしつぐ)院長は、丁寧な問診を通じて声に対する患者のニーズをつかみ、適切な治療法やめざすゴールを見出すことに努めている。また発声のメカニズムに注目し、言語聴覚士による音声指導にも力を入れている。「声の不調でお困りの方は多いので、正しい声の出し方を知ってもらいたいですね」と誠実な姿勢で語る院長に、声の出る仕組みや治療について詳しく聞いた。

(再取材日2023年6月21日)

声のトラブルを扱う「音声」専門の外来

音声についての専門の外来とは、どのような診療を行うところですか?

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック1

この外来では、「声を出しにくい」「声が枯れた」などの声の不調について、診察や治療を行っています。患者さんは仕事で声を使う方が多く、学校の先生や保育士、営業職のような、常に大きな声を出したり長時間声を出さなければならない方、また歌や演劇など舞台に携わる方もいますね。真面目な人であればあるほど、無理に声を出そうとして悪化して声がまったく出なくなるような場合もあります。逆に、高齢社会の現在、退職や転居、配偶者の死別などで話す機会が少なくなったことで声が出にくくなる方もいます。声を出すためには筋力を使いますので、使う機会が減ると機能が弱ってしまうのです。このように声のトラブルを診療するのが音声を専門にする外来です。

そもそも、どのようにして声を出しているのでしょうか?

肺から出た空気が、声帯の粘膜を震わせることで、声が出ます。声帯は喉仏の裏側にあり、息の流れによって振動すると男性で1秒間に100回程度、女性だと200回程度震え、その振動が声になります。このため、声帯にポリープや結節・炎症があったりすると声帯の振動が悪くなって声が出にくくなります。また、声帯が出した音を響かせる口の形や動きも非常に重要です。管楽器に例えると、声帯はリード、口やのどは共鳴する本体です。声帯そのものに問題がなくても、音の調節がうまくいかないと、声が思うように出せなくなることもあります。さらに、歌唱の発声では共鳴のつくり方、音程のコントロールや感情表現も重要になり、人前でパフォーマンスをされる方は本番前の緊張など、精神面も大きく影響します。

診察の流れを教えてください。

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック2

まず、問診で患者さんが困っていること、生活や仕事の中でどのようにお困りなのか、また患者さんが感じている喉の症状や、患者さんのお仕事や生活全般について確認します。またVoice Handicap Indexという自分の声を評価するための質問票で、現在の声の状態をどのように感じているのかを点数で評価してもらいます。次に声帯の様子を確認します。喉の様子を見る内視鏡には口から入れるものと鼻から入れるものがあり、患者さんの状態に合わせて使い分けて、声帯付近の形状の変化、ポリープや声帯結節などがないかを確認します。さらに、声帯の動き、いわゆる振動の様子を観察するためストロボスコープという特殊な機械を使います。声帯の波動は非常に高速で、目で見ることはできませんが、このスコープは声帯の動きを目に見える速さで再現しますので、声帯の細かな振動の状態などを確認するのに有用です。

声に対する患者それぞれのニーズを見極める

治療はどのように行われますか?

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック3

薬物治療、音声指導、手術の3つの柱があります。声帯の炎症には薬を使うこともありますし、声帯ポリープなどの手術は大阪府済生会中津病院と連携して私が執刀している他、手術が必要な病気は関連病院をご紹介することもあります。そして特に力を入れているのが音声指導です。当院には常勤の言語聴覚士が4人在籍しており、常時3人以上の勤務体制で適切な声の出し方を訓練しています。声にトラブルがある方は、喉が詰まるような話し方になっていたり、喉に力を入れすぎている場合が多いため、声が出る仕組みから説明した上で、腹式呼吸法や喉をリラックスさせる方法、声帯が振動しやすい口の形などをトレーニングします。見込める改善度合いは患者さんの状態によってさまざまですが、トレーニングを続けることが大事です。

治療中は、あまり声を出さないほうが良いのですか?

一般的に声の調子が悪いときには「声を出さないで」と言われることが多いです。しかし患者さんの多くは仕事で話すことが多いので、声を出さなければなりません。そこで、治療の最初の段階で声の衛生指導を行い、声の代わりに代用できる方法や、日常生活全般の見直しなど、患者さんご自身で気をつけてほしいことをアドバイスします。また逆に、年齢的に声を使う機会が減って声が出にくくなった患者さんには、新聞の音読やカラオケなどもお勧めして、声を出す機能を鍛えるように指導します。声を出さないことによる弊害もありますので、その見極めは大切ですね。

診療において先生が心がけていることを教えてください。

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック4

問診では、患者さんのバックグラウンドを引き出し、どのように困っているのかを把握することが大事です。声の不調は診察時にわかるものだけではなく、診察室では一見問題があるようには見えないものもあります。仕事中など限定した場面でのみ症状が悪くなることもあるからです。どこも悪くないと言ってしまえば、患者さんの抱えるトラブルは解決されないままです。特定の場面のみで声が出ない患者さんは、メンタルの問題が背景にあることもあります。このような場合、治療は容易でないこともありますが、音声指導をしながら悩みに寄り添うことも大切だと思っています。また、患者さんのニーズに応じた治療のゴール設定も大事です。客観的に声の質はあまり変わっていなくても、患者さんご自身が声を出しやすくなったと満足されて治療を終えることもあり得ます。良い声という判断は人によって違うので、患者さんの考えを尊重するように心がけています。

正しい声の出し方やケアの方法を知ってほしい

先生が音声の診療に関心を持った理由をお聞かせください。

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック5

医師であった祖父の影響があり医学部に進みましたが、中学生の頃からギターを弾いたり歌を歌うのが好きで、大学では軽音楽部でバンド活動を楽しんでいました。また、学生時代には後に声楽家となった現在の妻と知り合い、声はどうして出るのか、歌声はどうして話し声と違うのか、ますます興味を持つようになりましたね。大学卒業後は聴覚の研究で学位をいただいた後、大阪府済生会中津病院や国立病院機構大阪医療センターなどで耳鼻咽喉科の医師として勤務していましたところ、ご縁があり阿倍野区で長く音声の診療をされていた文珠敏郎先生にご指導いただくようになりました。文珠先生も音楽がお好きであり、母校の軽音楽部の大先輩でもいらっしゃいます。そんなご縁もあって、先生のご協力をいただきこの場所で開業するに至りました。

それでは、現在も音楽活動を続けていらっしゃるのですか?

アコースティックギターは1人でも楽しめますので、時間があれば演奏したり、ときには曲を作ったりして楽しんでいます。また、医師という仕事を反映した歌を作ることもあり、子どもたちへの応援歌のつもりで作った「ロックンロール中耳炎」という歌はウェブでも公開しています。また、帝塚山で開催されている音楽祭には毎年出演させていただいています。

今後の展望をお聞かせください。

二村吉継院長 二村耳鼻咽喉科ボイスクリニック6

当院は完全予約制で診療を行っています。もともと音声の診察は予約制だったのですが、一般診療にも予約制を導入して待ち時間を解消するとともに、患者さん一人ひとりに対してより一層の丁寧な診療につながるようにしました。声に関する症状はさまざまですが、コロナ禍以降、機能性発声障害が増えています。また、喋ることはできても歌うことができないという発声障害もあり、この場合は医師とボイストレーナー、言語聴覚士が連携して治療を進めます。仕事によっては声が出るか否かが人生を左右するともいえますので、今後もその重みを意識しながら治療にあたりたいと思います。声は重要なコミュニケーションツールです。音声の診療に携わる医療機関として、声に関する正しい知識やケアの方法を多くの方に知っていただければと願っています。

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