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石束 麻里子 院長の独自取材記事

ミディ漢方医院福岡

(福岡市南区/高宮駅)

最終更新日:2020/07/28

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南区の若久通り沿いにある「ミディ漢方医院福岡」は、ドアを開けると器の水面に浮かぶ紫陽花など季節の草花たちがそっと優しく出迎えてくれる。字画にもこだわったという、フランス語で「南フランス」や「昼」という意味を持つ院名。そこには石束麻里子院長の「ここ南区で患者に愛される温かなクリニックでありたい」という思いが込められている。開院以来、患者の体と心も癒やしてきた石束院長は、PMSや更年期障害など女性特有の疾患や不妊、さまざまな症状に対し東洋医学を軸に診療していく漢方を専門としている医師。不妊で悩み、諦めた時に子どもを授かった自身の経験も診療に生かせているという。「着心地が良いから」と、あえて白衣ではないスタイルで診療するその自然体の姿で、取材に応えてくれた。
(取材日2020年6月30日)

西洋医学と東洋医学を総合的につなぐ漢方専門の医師

まずは、医師として歩み始めた頃のお話からお聞かせいただけますか。

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出身は大分県別府市です。そこで父が精神科や内科の医師として、漢方や鍼灸などの東洋医学を取り入れたクリニックを開いていました。私が臨床研修を終えたばかりの頃、手術をきっかけに父が意識不明の状態になってしまい、突然父のクリニックを継ぐことになりました。結婚して福岡に居を構えて2ヵ月もたたない時でした。東洋医学に興味はあったものの、知識もない若い医者が漢方を処方することになるとは思いもよらず、父の代わりを務めた半年くらいは毎日が必死でした。この話をすると驚かれますが、漢方を扱う道は自分が選んで決めた道ではなかったのです。

予期せぬ事態が「漢方」を扱う第一歩だったのですね。そこからどのように過ごしていたのですか。

もともとは精神科の医師になりたくて医学部をめざしたのですが、臨床研修後の自分にはまだ精神科の医師としての器が足りないように感じていました。また救急外来は緊張感がある中でさまざまな病態が診れ、やりがいを感じていました。父の代わりを務める中で、東洋医学の面白さや奥深さを感じ、適応疾患が広いことがわかり、深く学んでみたくなりました。父のクリニックは診療科を変えて外科医師の兄が引き継いでくれ、夫も「勉強してきていいよ」と言ってくれたので、煎じ薬の加減法が学べて入院施設もある京都の病院で、3年間修業させていただいた後、2012年に開院しました。

開院からどのような理想を掲げ、患者さんを診てこられたのでしょうか。

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総合診療の医師として、西洋医学的アプローチが必要な病気を疑えば西洋薬をメインに扱う医師に紹介します。逆に他院から紹介を受けることも年々増えています。いわゆる「不定愁訴」は東洋医学的に理解ができることが多く、どこを受診しても原因不明でお困りの患者さんが安堵されます。また漢方は効き目が緩やかなイメージですが、とても即効性が期待できます。昔の漢方書の処方には、今でも風邪の初期によく使う葛根湯や小青竜湯などがありますが、ショック状態のような救急の病態に対応する処方も記載されています。季節の変化によって患者さんの身体反応も変わるので、処方も変更していきます。漢方のイメージが随分変わるのではないでしょうか。治癒への近道を第一に考え、枝葉の症状ではなく、根っこを診る「本治」を心がけています。

大切にしていることは患者の心のフォロー

院長ご自身も不妊で悩まれたご経験があるとお聞きしました。

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私は抗ミュラー管ホルモンという卵巣年齢が、30代前半で非常に低かったのです。生理があれば大丈夫だとか、妊娠は無理だとか、先生により仰ることが違い悩みました。子どもは諦めて先に進もうと思い開院したのですが、この8年の間に2人出産しました。私のように手放したら妊娠したという患者さんは多いですし、不妊治療においてもわからないことが多々あると不妊治療専門の医師の話を聞いたこともあり、まさに「赤ちゃんは天国からの授かりもの」だと思います。当院に来られる方は周囲からの言葉で傷ついている方がとても多いので、一番心がけていることは精神面のフォローです。リラックスするような呼吸法で自律神経を整えることや、自分自身を認めて大切にすることを話しています。

院内からもこだわりが感じられます。ここに開院された理由も教えていただけますか。

京都の漢方師匠のクリニックがカフェみたいなホッとできる空間で、診察室から壁を挟んだ受付にカルテを渡せるように小窓がついていたり、工夫が凝らされていました。とても働きやすかったので、同じ間取りで作っています。それから場所についてですが、漢方や生薬管理の知識を持つ、優れた薬剤師の先生がいらっしゃる調剤薬局がなければ、漢方内科は成り立ちません。それでこの場所になりました。南区は天神も博多も近いですし、駐車場が4台あり、バス停からも近いので、県内外から患者さんがいらっしゃっています。

子育てとの両立から診療は10時から14時までの予約制なのですね。

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はい。スタッフは事務2人と看護師1人に私という体制なのですが、お昼休みなしの通しで14時まで。みんな子どもがいるので早く帰ることのほうを重要視していて満場一致でした(笑)。診療が終わった後は、残りの仕事を片付けて帰宅して食事、家事をして保育園に迎えに行きます。子ども2人の育児は想像以上に大変で、日々子育てに悩んでいますが、頼りになるスタッフにも恵まれ、今自分にできる最大限のスタイルで仕事もできているのでありがたいです。もともと予約制だったのが幸いして、新型コロナウイルス感染症の問題でも予約制限して「密」を回避できたり、風邪症状の方は診察前に連絡をくださり、最後の枠で診察しています。

患者の歩幅で前を向き歩いていける存在でありたい

そんなさまざまな経験を重ねてこられたからこそ、患者さんに寄り添えることがたくさんあるのでは。

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自分が経験しないと患者さんの気持ちはわからないと思っています。父の件でとても悔しい思いをしたり、子どもを諦めたこともあったり、ありがたいことに授かって母親となった今も、さまざまな感情が自分の中で飛び交っています。それも私なのだと認めること、少し俯瞰して冷静に自分を観察できることって大切だと思います。そんな「余裕」が少しでも心の中に持てるように、患者さんの気持ちに寄り添って、本音が話せる存在でありたいです。

ちなみに漢方は保険適用でしょうか。また、実施されているオンライン診療についてもお聞かせください。

そうですね。基本的に漢方は保険適応です。漢方修行の場所に中国留学も考えていたのですが、中国で使える生薬が3000種類くらいある中で、日本で使えるのは10分の1もありません。いくら中国で勉強しても日本では再現できずジレンマを感じると思い、国内でできるだけ保険内で漢方治療をされている京都の先生に学ばせていただきました。保険外生薬を用いる場面は限られています。それから、オンライン診療についてですが、これは新型コロナウイルスの問題がきっかけではなく、2人目の産休中に始めたものです。需要はあるのですが、オンラインだとお互い体に触れる、触れられる安心感が得られませんので、再診の方のみとさせていただいています。

患者さんにとってどんな存在でありたいですか。そして今後の展開についてもお願いします。

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本来人間が持っている「治る力」を大切に治療しています。東洋医学のめざすところは「中庸」であり、バランスの良いところに持っていくことが私の役割だと思っています。東洋医学は一人ひとりの体質によって養生が異なります。ご自身に合った養生を実践しながら、少しの漢方の方向づけで「治る力」が自然に出てきます。患者さんそれぞれの歩幅で、前を向いて歩いていけるような存在でありたいと思っています。新型コロナウイルスから学ぶことは多く、今後したいことが明確になり、禍中に踏み出しました。その一歩として、前々からやりたかった畑仕事を、家族や仲間と一緒にしています。先日は田植えを手伝いました。食と健康は必ずつながります。実際に土に触れ、その大切さを患者さんに伝えていきたいです。

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