進行すれば全身への影響も
「態癖」改善を取り入れた顎関節症治療
高松歯科口腔外科クリニック
(高松市/瓦町駅)
最終更新日:2023/08/31
- 保険診療
さまざまな原因によって歯の噛み合わせが異常を来し、顎関節の痛みや雑音などを引き起こす顎関節症。「日本人の2人に1人は顎関節症の経験がある」ともいわれるが、症状を自覚しながらも治療に至っていない顎関節症患者は多い。「顎関節症は、進行すれば顎の関節だけでなく、頭や耳など幅広い部位に症状が現れるので注意が必要です」と「高松歯科口腔外科クリニック」の細江美知院長は警鐘を鳴らす。不審に思う症状があれば、早急に治療を開始するべきだろう。顎関節症患者を数多く受け入れている同院では、「態癖(たいへき)」と呼ばれる癖や習慣と顎関節症の関係性に着目。治療と並行して態癖の改善指導を行うことで、症状の緩和や再発防止を図っている。「根本的な原因の解決が重要」と語る細江院長に、同院での顎関節症の治療の流れを聞く。
(取材日2023年7月11日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q歯の噛み合わせと、顎関節症は関係しているのですか?
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A
大きく関係しています。下顎の骨は左右の関節によって上顎の骨にぶら下がっていますが、何らかの原因によって歯の山と谷が合わなくなると、下顎の位置もずれて、関節に負荷がかかりやすい状態となります。負荷のかかった顎関節は痛みを生んだり、開閉口の際に下顎の骨に引っかかって音を出したり、引っかかったままとなって、お口を開けにくくしたりします。これが顎関節症です。噛み合わせのゆがみには頬づえや横向き寝、食いしばりといった日頃の癖や習慣が大きく影響していますので、それらを改善することができれば、顎関節に不調を来すリスクの軽減につながることが期待できます。
- Q顎関節症を放置した場合の影響は?
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A
顎関節症に関しては、よほど強い音や痛みがない限りは、放置している人がほとんどでしょう。しかし、放置する中で顎関節症が進行すると、関節そのものの変形が進んだり、頭や首、肩、背中、耳など全身に痛みが生じたりします。噛み合わせもさらに不安定になりますから、力のバランスが一部の歯に集中し、そこから歯や歯の周りの組織の破壊へとつながります。全身の姿勢を保つことも難しくなりますね。顎の形は人それぞれですので、顎関節症の症状には個人差がありますが、治療による介入ができなければ改善と悪化を繰り返すことになり、完治は困難を極めるでしょう。
- Qこちらで行う顎関節症治療の特徴を教えてください。
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A
多くの場合、顎関節に悪影響を与える癖や習慣、いわゆる「態癖」は歯並びから読み取ることができます。右から押したり、左から押したりといった力の跡は、多かれ少なかれ歯並びに残っていますので、そこから患者さんにどんな態癖があるのかを見極め、態癖の改善指導をしていることが当院の大きな特徴です。もちろん、お薬を投与する治療や、スプリントと呼ばれるマウスピース型の装置を使った治療も必要に応じて行っています。しかし、私は顎関節症の原因となった態癖について患者さんにしっかりとご説明することが、最も重要だと考えています。態癖を改善することは、ひいては顎関節症の再発防止にもつながっていくのではないでしょうか。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診
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歯科医師がチェアサイドで患者の主訴を確認。虫歯や歯周病など、別の治療で訪れた患者であっても、顎関節の痛みや音、口の開け閉めにくさといった自覚症状があれば、顎関節症の治療を提案するという。
- 2基本検査
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視触診と聴診を実施。歯科医師が実際に見て、触れて、耳を澄ますことで開閉時の口の動きや、顎関節の異音などをチェックする。口腔領域をパノラマで撮影するエックス線検査では、顎の骨の変形がないかどうかを見る。
- 3診査・診断
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検査の結果に基づき、顎関節症の診査・診断を行う。この時点で自覚症状がなかったとしても、エックス線写真によって骨の変形が見つかった場合は顎関節症と診断される。進行を防ぐためにも、治療は早いほうが望ましい。
- 4インフォームドコンセント
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イラスト資料や撮影画像などを見せながら、できるだけわかりやすい言葉で患者に検査結果を説明。必要な治療や治療ごとの期間、費用といった情報を詳しく提供し、患者の納得を十分に得られたら治療計画を決定する。態癖の有無についても聞き取り、それが顎関節症の原因と思われれば、しっかりと患者に説明する。
- 5治療
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症状に合わせて、痛みの軽減を目的とした投薬治療や、スプリントと呼ばれる装置を使った保存療法をスタート。顎関節への負担を軽減するため、スプリントはできるだけ毎日、就寝時に装着する。また歯科医師の指導のもと、これらの治療と並行して態癖の改善に取り組む。歯科医院には半年に1回程度来院し、噛み合わせや顎関節の動きをチェックする。
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。