全国のドクター9,287人の想いを取材
クリニック・病院 158,646件の情報を掲載(2024年4月19日現在)

  1. TOP
  2. 愛知県
  3. 名古屋市昭和区
  4. 川名駅
  5. 小早川医院
  6. 小早川 裕之 院長

小早川 裕之 院長の独自取材記事

小早川医院

(名古屋市昭和区/川名駅)

最終更新日:2021/10/12

小早川裕之院長 小早川医院 main

名古屋市営地下鉄川名駅から徒歩10分のところにある「小早川医院」は、風邪やインフルエンザはもちろん、認知症や糖尿病に特化した内科医院だ。院内は、院長の妻が作る手作りのトールペイントのインテリアが印象的で、ヨーロッパ調のくつろげる院内は、良い意味で医療機関らしさが感じられない。この医院の大きな特徴は、独特の食事療法(緩やかな糖質制限食)を核とする糖尿病治療と家族のケアも考えた認知症治療。患者それぞれの背景を鑑みながら治療を行うという小早川院長にじっくり話を聞いた。

(取材日2016年6月3日)

一般内科のほか、糖尿病治療に注力する

診療内容についてお聞かせください。

小早川裕之院長 小早川医院1

当院は、風邪やインフルエンザで受診される方ももちろんいますが、特に糖尿病の治療に力を入れています。糖尿病は肥満の方がなりやすいというイメージを持たれている方も多いと思いますが、わが国では痩せている方の糖尿病が意外に多いのです。これは日本人ならではの体質に起因しています。日本人はもともとインスリンの分泌が少ないのです。甘いものを食べすぎてもインスリンが十分に分泌されず、太りはしないけれども簡単に血糖が上がって糖尿病になってしまうのですね。

糖尿病になると、体の中でどのような合併症を起こすのでしょうか。

大きく分けて3つあります。1つは腎症、網膜症などの細小血管合併症。血糖が上がると体内のたんぱく質に糖が結合する糖化という現象が起きます。そうなると、本来のたんぱく質の機能が障害され、体中の毛細血管がダメージを受けます。2つ目に狭心症、脳梗塞などの大血管合併症。特に食後の血糖が上がることによって動脈が傷つき、動脈硬化が起こるのです。ただ、これら2つに関しては、血糖値のコントロール、コレステロールや血圧のコントロールをしっかりすることでかなり防げるようになってきました。糖尿病の新しい合併症として今注目を集めているのが、がんと認知症ですね。糖尿病の患者さんは、そうでない人に比べるとだいたい1.5倍~2倍くらい、がんで亡くなる確率が高く、認知症になる確率も2倍ほどという調査結果も出ているのです。

糖尿病の治療をしながら、がんや認知症のチェックが必要なのですね。

小早川裕之院長 小早川医院2

がんも認知症も初期にははっきりとした症状がないことが多いのです。ですから明らかな症状が出た時には、かなり進行していることになりますね。糖尿病の患者さんは血糖をコントロールするために毎月きちんと通ってくれているわけです。毎月診察させていただいている患者さんが気づいたら進行したがんや認知症になっていたというのでは、医師として非常に不甲斐ないし、患者さんにも申し訳ないと思うのです。そこで、当院では糖尿病の患者さんには特に症状がなくても、年に1回は腹部超音波検査を受けていただくことにしています。また、70歳以上の糖尿病患者さんには年に1回必ず認知機能検査を受けていただき、必要があれば脳のCT検査なども実施しています。

早期発見の大切さと、同院ならではの食事療法

一度糖尿病と診断されるとなかなか治らないとよく聞きますが、本当でしょうか?

小早川裕之院長 小早川医院3

糖尿病の高血糖状態が長く続くと、血糖を下げるためにすい臓が頑張ってインスリンをたくさん出し続けます。この状態を放置するとすい臓が疲れ、インスリンが出なくなってしまうので、そうなる前に治療を始める必要があります。治療開始が遅れると、最初から薬をたくさん飲まなくてはならなかったり、インスリンを注射しなくてはならなかったりします。糖尿病を早期に発見して、すい臓にまだ余力が残っているうちに治療を始めれば、食事療法と運動療法だけで血糖をうまくコントロールできる場合が多いです。管理栄養士の指導の下で食事療法を続けることで食に対する意識が高まり、健康的な食生活を実践している方も多くいらっしゃいます。そうなると、食事を楽しみつつ治療を続けることが可能になります。糖尿病は完治は難しいのですが、このように食事療法を続けるだけで、その他は普段通りの生活を送る事ができる状態にコントロールすることは可能なのです。

早期発見することで、むしろ生活改善につながることもあるのですね。

糖尿病はそんなに悲観すべき状態ではなく、神様が発してくれた警告みたいなものと私は考えています。それを契機にしてもう一回、食を見直し、健康を見直せば、他の病気の予防にもつながりますよね。糖質の過剰が、例えばアトピー性皮膚炎だったり、腸の不調だったり、いろいろなことに関係してきますから。動脈硬化もしかり、体に関する危険信号だと思えば、そんなに嘆くことではないのです。糖尿病になると、食べたいもの食べられなくなってしまうと思いがちですが、そんなことはありません。当院でしっかりと栄養指導を受け、食に関する十分な知識を身につけていただければ、糖尿病の方でも十分食事を楽しむことができます。

こちらの食事療法とは、どういった内容なのでしょうか?

小早川裕之院長 小早川医院4

当院の食事療法の特徴は緩やかな糖質制限を行うことです。従来の糖尿病の食事療法では、カロリーは制限するものの糖質は制限しないので、薬を飲まないとどうしても食後に高血糖になってしまうことが多かったのです。そこで食事療法を糖質制限食に切り替えたところ、必要な薬が減って行きました。緩やかな糖質制限ですので、食べられるものがいっぱいあるわけですね。そうすると患者さんはすごく明るくなるのです。慢性疾患はかなり心身症的なところがあり、治療中に抑うつ的になる方が多いのです。そんな状態にならないためにも、厳しいカロリー制限食を続けるのではなく、楽しみながら糖質制限食を続けるにはどうしたらよいかを、患者さんと相談しながら進めていくのが当院の栄養指導のあり方ですね。当院では、患者さんに3日分の食事内容を記録していただき、これをパソコンで分析した結果に基づいて、問題を解決していくようにしています。

一人の患者との出会いではじめた心療内科の勉強

今までの治療の中で、記憶に残る出来事はありますか?

小早川裕之院長 小早川医院5

私は開業する前、大学の先輩が経営している透析クリニックに院長として10年間ほど勤務していました。ある日、週3回、透析のためにずっと通っていた女性が、突然通院しなくなってしまいました。透析の慢性的なストレスによる「うつ」だったのです。「透析しないと死んじゃうよ」と言ってもそういう言葉も響かないようでした。心療内科の受診を勧めても行く気力がない。だったら自分が診なくてはと思い、中部労災病院の心療内科で部長の診察の際に隣につかせてもらって勉強しながら、この患者さんのうつ病の治療にあたりました。その結果、彼女は再び透析のために通院してくれるようになったのです。この経験を通して、慢性疾患には身体と心の両面からのケアが欠かせないということを教えられました。

診療中、どのようなことを心がけていますか?

患者さんに寄り添うこと。具体的には、同じ病気でも、背景や年齢、性格などいろいろな条件の違いをできるだけ考慮することにしています。その後、どのように治療するか、それぞれに合った方向性を決めていきます。患者さんはどんな症状にしろ、なんとかしてほしいと思って病院に足を運ぶものです。いろいろ検査しても原因がわからず、病院から返されてしまったとしても、なんらかの形で症状を緩和させてあげたり、気にしないようにさせてあげたりする、それによって患者さんを少しでも安心させてあげる、それが私たち開業医の役割であると思います。

今後の展望をお教えください。

小早川裕之院長 小早川医院6

今後は今以上に非薬物療法を治療に採り入れ、できるだけ少ない投薬で治療することを心がけてていきたいと考えています。その一つの柱は栄養療法です。糖尿病やメタボの予防・治療法としての糖質制限食を一層洗練されたものにして行くと同時に、サプリメントや点滴療法も病気の予防・治療のために積極的に採り入れて行きます。また、認知症の予防・治療にも非薬物療法を応用します。今注目されているのが芸術療法。音楽や絵画などを通して認知症の進行を抑えるという、欧米ではすでに普及している治療法です。これらの方法を駆使して糖尿病・認知症を発症する人を少しでも減らし、たとえ発症してしまったとしても「元気で長生き」できるようにして行くことが当院の役割であると考えています。

Access