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牧 貴子 院長の独自取材記事

まきこどもクリニック

(名古屋市瑞穂区/瑞穂区役所駅)

最終更新日:2022/07/27

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瑞穂区役所駅3番出口から、徒歩2分。瑞穂通り沿いのビルの1階に「まきこどもクリニック」はある。院内は優しいクリーム色の色調で統一され、ほっと包み込んでくれるような優しい雰囲気だ。同院の院長である牧貴子先生は、子育てをしながら、名城病院など中核病院に勤務し、小児循環器を中心に数々の治療を行ったベテラン医師。定年退職後の2005年に同院を開業し、地域の子どもたちの健康を見守ってきた。時に優しく、時に厳しく診療を行う牧先生に、開業のきっかけから勤務医時代のエピソード、日々の診療についてまで幅広く話を聞いた。

(取材日2022年6月23日)

小児循環器科の医師として勤めたのち、地元で開業

明るくてすてきなクリニックですね。

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暗いのは嫌だったので、たくさん光が入ってくるようにと建築士さんにお願いしたんです。クリニックの入り口や窓ガラスは外から中が見えにくいようにすりガラスになっているところが多いのですが、当院ではあえて透明の2重ガラスにしました。そのほうが開放感も出ますし、窓から外が見えたほうが待っている間子どもが退屈しないでしょうから。ささやかですがキッズスペースも作りました。子どもたちが真っ先に向かってくれるので、作って良かったなと思います。

小児科に進路を決めたきっかけや、こちらに開業された経緯について教えてください。

学生時代、病棟実習で小児科を経験したことがきっかけですね。初めは内科志望でしたが、小児科を経験したら子どもたちの持つパワーに驚かされました。医師として“子どもの未来”に関わっていく仕事がしたいと思ったんです。勤務医として経験を積み、実は40代の時に一度、開業を考えたこともあるのですが、その時はまだやりきれていない、やり足りないことがあると思い、見合わせたんです。大規模病院ならば一人の患者に対しても数人の医師で診るので、もし自分に見落としがあったとしても他の人が指摘をしてくれます。けれど、一人だとそれがないので怖いという思いもありました。自信を持って完璧に近いと言える診療ができるよう研鑽を積まなくてはと。そしてさらに研鑽を積んだ定年の少し前から、他の病院などからも声をかけていただきましたが、家族からの要望もあり実家の隣に当院を開業しました。

診療の際、心がけていることはどんなことでしょうか?

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一人ひとりに丁寧にきっちりと対応することですね。それに、入って来た時の顔色や様子、機嫌などをしっかりと観察することです。子どもは大人と違い自分の病状を細かく説明できたりはしませんが、うそやごまかしもありませんからよく観察すれば自ずと病状がわかってきます。また、私のポリシーの一つとして「それぞれの分野では、その道のプロに任せる」というのがあります。幸いにも、看護師ならいろいろな所で師長を経験した人など素晴らしいスタッフ達に巡り会えましたので、小さなクリニックでもプロ同士のチームワークを持って仕事ができています。

救えなかった幼い命。患者に教わったことを今も胸に

病院の勤務医時代についてお話を聞かせてください。

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やはり病院では特殊な病気を持った患者さんがみえるので、非常にたくさんの臨床経験を積むことができました。特に先天的に心疾患を患う多くの子に接しました。一般的な病気は治っていくことがほとんどですが、重篤な疾患を抱えているためにどうしても亡くなっていく子どもも少なくはなく、その度に本当にこれで良かったのかと、自責の念に駆られました。私がその時にできる、やれる範囲のことは出し尽くしたと思うのですが、後悔したことも多々あります。

中でも印象深い患者さんはいますか?

そうですね。原発性肺高血圧症と心房中隔欠損症を抱えていた女の子でしょうか。小学校6年生の時に、3度目の心不全を起こして亡くなってしまったのですが、2度目の発作を起こして入院した際、私はその子のお母さまに「もう一回発作が起こったら次は持ちません」とお話ししていたんです。「もしも次が起きたら、あえて何もせずにそっとしておいてあげたほうが良いのでは」とも。そう話した途端、お母さまはショックのあまり、卒倒されました。そして翌年の7月頃、また発作は起きてしまいました。やはりもう尽くせる手もなかったので、私はそのことを告げて「抱っこをしていてあげてください」と言ったんです。お母さまは素晴らしく立派な態度で、取り乱すこともなくしっかりとその子の小さな体を最期まで抱きしめていました。彼女はベッドの上ではなくお母さまの腕の中で息を引き取っていったんです。

それは、胸に迫るエピソードですね。

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続きがありましてね。7回忌の時、お父さまに「あの時は移植が実用段階ではなかったが、今なら救えたかもしれない」というようなことをお話ししたんです。私の中にまだ悔いがあったのかもしれません。するとお父さまは「あの子は、人生80年を12年に凝縮してしっかりと生きた。だから僕はそれを望まない」ときっぱりと仰いましたね。また、その際に1冊の本をいただいたんです。それは、女の子の手記を学校の担任の先生がまとめたものでした。担任の先生というのもとても篤実な方で、肩車をして体育に参加させるなど6年間ずっと懸命に支え、文章を書くことも教えていたのだそうです。私も診察の度、その書き綴った日記を読ませてもらっていたので、込み上げてくるものがありました。ひたむきに生きた彼女の軌跡はしっかりと残っていると。本人だけじゃなく、ご家族や周りの方からも本当にさまざまなことをたくさん教えてもらった出来事です。

これからも地域の子どもたちを見守り続ける

小児科医としてやりがいを感じる時、また開業して良かったと感じるのはどんな時ですか?

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小さい頃に診ていた子がしっかりと成長して大人になり、何かの折に連絡をくれた時などは、本当に小児科医冥利に尽きると思いますね。また、お子さんを診ていたけど、ご主人の転勤などでよその土地へ行ってしまったお母さんが、遠くからでも相談にみえたりすると、医師として誇りを感じます。開業して良かった点は、毎日いろいろな出会いもあり、自分が生き生きとできていることでしょうか。やはり小さい子からエネルギーや刺激をもらっているのでしょうね。親御さんに時に厳しい指摘をすることもありましたが、覚悟して子どもを育ててほしいとの思いがあったからです。私もいろいろな修羅場を経験してきましたからね。希望的観測ですが、その思いが伝わっていたらうれしいなと思います。

プライベートではどのようにお過ごしですか。

当院の横にある喫茶店は、私の弟がオーナーをしているんです。一日の診療が終わると、お店に寄るのが日課になっています。弟の息子、つまり私の甥が店の手伝いをしていますので、コーヒーを飲みながら、その日にあった出来事を甥と話をしていますね。休日には、自宅の片づけをしています。片づけは得意ではないですし、大変な作業ではありますが、終活のつもりで頑張っています(笑)。

最近の子どもたちについて、気になることはありますか。

最近は、学校での勉強もタブレットを使うことが多いですよね。こちらから探しに行かなくても情報を容易に得ることができる環境となり、その便利さに慣れてしまうことを危惧しています。自ら書物のページをめくって得た情報は自分の知識となり、考えるきっかけになると思うんです。私もジャンルを問わず、読書を楽しんでいます。昔に読んだ本を引っ張り出してきて、もう一度読み直すこともあります。お子さんたちには、たくさん本を読んでもらいたいと思いますね。それと、もう一点、コロナ禍が長くなるにつれ、心身症の症状を訴えるお子さんが増えました。例えば、夜眠れないだとか、朝起きられないとかそういった訴えが多いですね。せめて屋外ではマスクを外しましょう、と皆さんにはお伝えしています。

お母さま方に対してメッセージをお願いします。

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ここへ来るお子さんの多くは、風邪など急性期の患者さんです。お薬の力を借りて少しでも早く楽にして差し上げたいな、と思って診療しています。ですので、お子さんの様子が普段と違うと感じたら、目を離さないでしっかり見ていて経過を教えて欲しいですね。例えば、単に熱が出たというのではなく、いつ頃から何度熱が出たのか、食事は何時にどれぐらい食べたのかなど、ほんの少しでいいので具体的な情報をもらえるだけで、わかることがたくさんありますから。それと、お子さんが病気の時はできるだけ手を握ったり、抱きしめてあげてほしいです。お母さんと触れ合っているだけで、子どもはとても安心しますから。

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