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新 英士 院長の独自取材記事

中目黒メンタルクリニック

(目黒区/中目黒駅)

最終更新日:2021/10/12

新英士院長 中目黒メンタルクリニック main

中目黒駅より山手通り沿いに1分ほど歩くと、ビルの8階に「中目黒メンタルクリニック」がある。エレベーターを降りると、そこはもうクリニックの敷地内だ。診療中は入り口の扉が開けられており開放感がある。同院で院長を務める新(あたらし)英士先生の診療方針は、ただ病気を診るのではなく、その人自身に目を向けること。患者にかかる負担を減らすために、患者が受けられる助成制度についての情報も提供している。対象となっているのに助成制度を利用していない人が多いそうで、病気の治療に専念するためにも積極的に活用してほしいという新先生。患者の立場になって治療を行う新先生に、診療に対する思いや扱う症状について聞いた。

(取材日2017年10月3日)

ドクター2人体制で患者に合わせた治療を行う

貴院の特徴を教えてください。

新英士院長 中目黒メンタルクリニック1

精神科や心療内科というと、どうしても入りづらいイメージを持つ人が多いですよね。なので、患者さんが気軽に入れるようにするにはどうすれば良いかを第一に考えています。例えば、診療時間内は入り口の扉をずっと開けておくようにし、中がどんな様子になっているのかがわかりやすいようにしました。細かいことですが、患者さんが少しでも安心できる環境になるように心がけています。また当院は、私と平沼先生の2人で診療にあたっています。私たちはそれぞれタイプが異なるので、患者さんが自分に合うと思うドクターを選んでいただくことが可能です。医師も患者さんも人間ですし、メンタルクリニックは信頼関係が大切。なので、2人のドクターで診療するというスタイルも当院の特徴ではないかと考えています。

患者さんの抱える症状や年齢層に関してはいかがですか?

当院に通われる患者さんの男女比は、約6対4で女性が多いです。全体で1日50~100人ほどの患者さんが受診されます。症状はさまざまですが、うつ病やうつ状態の方が最も多いですね。最近は発達障害に関する相談も増えてきました。発達障害に関する情報がメディアを通して多くの人に浸透してきたので、自分やご家族の症状が当てはまるのではないかと相談に来られます。当院では、発達障害の症状に合わせて適切な治療を行うように努めています。例えば、注意欠陥障害は薬物療法が中心です。自閉スペクトラム障害は薬物療法とカウンセリングを併用します。学習障害は現在の医学では効果的な治療がないとされていますが、ただ、学習障害であるという診断書を病院が出すことで、大学入試の試験時間を長くしてもらえるといった配慮が受けられます。

精神疾患の治療はどのように行われるのですか?

新英士院長 中目黒メンタルクリニック2

薬物療法が中心ですね。基本的に、精神の病気は脳内物質のバランスが乱れていることが原因です。脳内の神経伝達物質が異常を来しているのでさまざまな症状が表れる。そこで、薬を使ってそのバランスを整えるというのが精神科医療となります。ですが、薬を多く出せば治るというわけではありません。当院では、必要最小限の薬を使用することを念頭に置いています。薬は病気に対する効果がある一方、副作用が出ることもありますから。中には薬を使いたくないという患者さんもいらっしゃるので、漢方薬を使ったり、両者を併用したりしています。また、長期間にわたって多量の薬を服用することは患者さんに負担をかけるので、徐々に薬を減らしていくことを目標にしています。毎週通院することも患者さんにとっては精神的・経済的に負担ですから、症状を診ながら通院の間隔を長くするように配慮しています。

相手に共感するために自分の引き出しを増やしていく

こちらで開業するまでの経緯を教えていただけますか?

新英士院長 中目黒メンタルクリニック3

私は医師の家系で育ったわけではないので、小さな頃から医師になりたかったというわけではありませんでした。でも、中学生くらいから心理学の本を読んでおり、人間の精神領域にとても興味があったんです。それで、精神科の医師になりたいと思い医学部を志望しました。卒業後は大学病院、足立区や二子玉川の病院で勤務し、2000年にこの地で開業しました。この場所を選んだ理由は、母校の昭和大学に近くて土地勘があったことと、以前に勤務していた病院からのアクセスが良かったからです。開業前に私が診ていた患者さんの何人かが、私のクリニックに通いたいと仰ってくれたので、交通の便が良い場所を選びました。

精神科の魅力とはどんなところでしょうか?

他の仕事と比較することはできませんが、精神科は誰かの役に立っていると実感しやすいかと思います。精神科は特殊な分野なので、医師なら誰でもこの仕事ができるわけではありません。私が思うに、精神科の医師に向いているのは、相手の不安や喜び、悲しみなどの感情に共感できる人だと思います。そして、そのためには広い視野と豊かな経験が必要です。私はいろいろなことに興味があるので、それが自分の引き出しを増やし、相手に共感することにつながっていると思います。以前、先輩が「精神科の医師は、結婚して、子育てをして、なおかつ離婚をして初めて一人前になれる」と言っていましたが、確かにそうかもしれませんね。私にも小学生の子どもがいますが、子育ての苦労や喜びを経験することで、親の立場にある患者さんの悩みや大変さを以前よりも共感できるようになっています。患者さんの背景はさまざまなので、思いやりのある医師でありたいですね。

これまで印象に残っているエピソードがありましたら教えてください。

新英士院長 中目黒メンタルクリニック4

医師になったばかりの頃、先輩に言われた言葉を覚えています。当時、私は患者さんの発言に悩んでいました。妄想癖があったり、嘘をついていたりということがあって、何が本当なのかを見極められなかったんですね。そこで先輩に相談したら、「患者さんの言っていることはすべて本当だ」と教えられたんです。たとえ患者さんが、昨日言ったことと正反対のことを今日言ったとしても、そのときに患者さんが言ったことが患者さんにとっての真実なんです。その話を信じる信じないは別問題で、患者さんの言っていることはすべて患者さんの気持ちを表しているのだから、受け止める努力をするように教えられました。この考えは私にとって衝撃的でしたが、とても納得のいくものでした。

患者が活用できる助成制度の情報を積極的に提供

患者さんと接する上で心がけていることは何ですか?

新英士院長 中目黒メンタルクリニック5

あまりにも多くのことを尋ねすぎないようにしています。精神科の医師として、患者さんの話に耳を傾けるのは当然のことですし、話の中から原因が見つかることもあります。ですが、何でもかんでも患者さんのことを聞くことが、必ずしも良い結果につながるとは限りません。あれこれ聞きすぎるとかえって悪くなることもあります。なので、触れても良い部分と触れてはいけない部分を見極めることが大切です。例えば、過去のトラウマや虐待の記憶は、最初から深く掘り起こすと患者さんにかなりの負担を与えます。たとえ患者さんが話したがっていても、聞くべきではない場合もあるんです。どうしても過去についての整理が必要な場合、専門のカウンセリングルームを紹介することもできます。いずれにしても、過去にとらわれすぎるのではなく、未来を考えるよう助けることも精神科の医師の役割だと考えています。

情報提供も積極的に行っているそうですね。

精神疾患で具合が悪くて働けなくなった場合、障害年金や通院治療費の負担を軽減する助成制度があります。また、収入の一部が保障されたまま求職できる制度や、国民健康保険、国民年金の支払い免除といった制度、さまざまな福祉サービスもあります。こうした制度を知らない人が多く、当院に来院される患者さんでも、助成制度の対象者なのに活用していない方が7割近くいます。私たちは医師として、患者さんに役立つ情報を伝える義務があります。役立つ情報を知らないために、十分な医療を受けられなかったという患者さんがいてほしくありませんから、患者さんが受けられるサポートに関しては積極的に情報提供しています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

新英士院長 中目黒メンタルクリニック6

精神疾患は、他の病気と同じく早期発見・治療が大切です。なかなか眠れない、気分が落ち込むといった症状があれば、気軽に相談してください。とりあえず来院して、何もなければそれでいいんです。迷った場合は自己判断ではなく、専門家にぜひ頼ってください。医学は早い勢いで進歩しており、不眠治療の薬も新しいタイプのものがでています。私もさまざまな情報を入手して勉強しているので、セカンドオピニオンとして活用していただくこともできますよ。

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