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母親だけの問題ではない産後うつ
多様化した背景に合わせて対応を

スタジオリカクリニック

(筑紫野市/原田駅)

最終更新日:2023/02/02

スタジオリカクリニック 母親だけの問題ではない産後うつ 多様化した背景に合わせて対応を スタジオリカクリニック 母親だけの問題ではない産後うつ 多様化した背景に合わせて対応を
  • 保険診療

近年、一般的に周知されるようになった「産後うつ」は、産後2週間から3ヵ月くらいの間に発症しやすいといわれている。その要因は、ホルモンの急激な変化や鉄分不足、周囲のサポートの乏しさ、疲労や睡眠不足など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているケースが多いと話す「スタジオリカクリニック」の田中理香院長。その一方で、「親の精神状態や接し方が子どもにどのような影響を及ぼしてしまうのか」といった問題はあまり知られていないことに対し警鐘を鳴らす。産後うつを予防するポイントは「無理をしすぎない育児環境をつくること」や「出産前にパートナーと家事や育児のシェアについて話しておくこと」だと語る田中院長。そんな産後うつの予防とケア、パートナーや周囲との関わり方、復職のタイミングなどについて詳しく話を聞いた。

(取材日2022年3月31日)

母親の問題だと思われがちな「産後うつ」は、多様化した時代背景や産後の栄養不足などが要因に

Q産後うつに関するチェックポイントはありますか?
A
スタジオリカクリニック 産後うつはさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多い

▲産後うつはさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多い

「食べても食べなくてもどちらでもいい」「何もしたくない」「最近笑ってない」など、食や趣味などへの関心がなくなったり、これまでできていたことができなくなったというのは重要なチェックポイントです。迷わず受診してください。地域の保健師さんや出産した病院の助産師さんなどに相談される方も多いと思うのですが、1ヵ月健診で赤ちゃんの相談はしても、ご自身の状態を申告される方は残念ながら少ないと思うんです。もちろん親身に話を聞いてもらうことで救われた方もおられると思います。しかし、心と体の両側面から観察指導することは難しいこともあるでしょう。そのため、専門機関への受診につなげる体制の構築が重要だと考えます。

Qこちらではどのような診療をされていますか。
A
スタジオリカクリニック 「患者が安らげる空間」を意識した落ち着いた院内

▲「患者が安らげる空間」を意識した落ち着いた院内

出産後はストックしていた血液がかなり減っている状態です。そこを補強していく必要があるのですが、母乳への影響が気になるからとお肉などを避け、消化の良いものばかり食べている方も。よく産後は痩せると言いますが、それは鉄分不足で血液が足りていない可能性があります。それがメンタルにも影響を及ぼしていることも考えられるのです。当院ではまず鉄欠乏の症状の有無を確認してから、血液検査を実施。鉄欠乏性貧血なら鉄材の処方、そのほか食事の改善、漢方薬で改善をめざします。産後うつは体、心、環境の問題、これを改善していく必要がありますので、解決しやすいものからアプローチしていくのが当院のスタンスです。

Q産後うつのケアや仕事への復帰についてお聞かせいただけますか?
A
スタジオリカクリニック 一人ひとりに合った対応を一緒に考えていく

▲一人ひとりに合った対応を一緒に考えていく

お産後に月経がすぐ始まってしまうとまた血液が失われるため、産後うつは体の問題が心の問題を招いていると言えるでしょう。体がつらいと家事や育児が思うようにできないのは当然。ですが、理解してもらえずパートナーとの関係が悪化するケースも。大事なのは家族のチーム力です。親のサポートが得られない、上の子もいる、夫の育児休業が取れないなど環境はさまざまですが、洗っていない山積みのお皿を見て、皆で大笑いできるような関係性づくりも大事だと思います。そして仕事への復帰。うつ病の方皆さんに言えますが、会社の繁忙期は避けるようアドバイスします。しかし、ご事情もありますので何を優先させるべきかを話し合うことが大事です。

Q親の精神状態や接し方によって子どもに与える影響が不安です。
A
スタジオリカクリニック 悩みすぎず、まずは相談をしてほしいと語る院長

▲悩みすぎず、まずは相談をしてほしいと語る院長

よく相談に来られるのがお子さんの発達についてです。心配しすぎであるケースが大半ですが、じつは親が過度に怒鳴ったり、イライラして子どもにあたってしまうといった状態が続くと、脳の発達に影響を及ぼし、発達障害に似た症状が出る場合があります。いわゆるネグレクトによるトラウマは、子どもたちの知能や語彙理解力にも影響があるといわれていますが、そのことについてはあまり知られていません。養育環境が子どもに与える影響は非常に大きく、逆に言えばどんな要素を持って生まれたとしても、環境次第で大きく変化するのです。そういったことから私はお子さんを養育する上での伴走者というスタンスで関わることを心がけています。

ドクターからのメッセージ

田中 理香院長

産後うつは多様化した時代背景も要因だと考えます。例えば、祖父母が就労していてサポートが得られない、待機児童の問題、高齢出産が増え親の介護と育児が重なってしまったなど。これは母子をゆったりと見守る環境が構築できていないということです。それに加えて、女性の中間管理職の登用が増え、自分の生活を犠牲にしている方も少なくないため、生活とキャリアのバランスで悩んでいる方に向けた総合的なアドバイスもしています。ただ子育ても生き方も正解はありません。すべて解決せずとも、受診して「今、心配しても仕方がない」とわかることも大事だと思うんです。このように、相談して現状を受け入れるのも一つの解決策ではないでしょうか。

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