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杉山 理 院長の独自取材記事

すぎやま内科

(名古屋市千種区/池下駅)

最終更新日:2021/10/12

杉山理院長 すぎやま内科 main

池下駅の駅ビル4階は、歯科や耳鼻咽喉科などのクリニックや薬局のある医療系のフロアになっている。この場所で診療を続けているのが「すぎやま内科」だ。十数年前に駅直結のマンションも完成し、若い世代も来院するようになったが、古くから住む地域住民は高齢化しており、同院の患者層も開業当初から通い続ける高齢の患者が約4割を占めるという。そういった患者の健康を注意深く見守っているのが、杉山理(さとる)院長だ。ライフワークとする細胞研究によってアルツハイマー病や心臓疾患に関する講演活動も行いながら、ユーモアを交えた軽妙な語り口で高齢患者を思いやりながら日々の診療を行う。研究者として、地域のかかりつけ医として古希を迎えてもなお、はつらつと医療に取り組む杉山先生に話を聞いた。

(取材日2019年7月10日)

ミトコンドリア研究をベースに心不全の研究へ

まずは医師になったきっかけを教えてください。

杉山理院長 すぎやま内科1

私が医師になったのには、実はこれといった理由はないんですよ。愛知医科大学の学長だった石川直久先生と私は高校の同級生でした。お互いに高校3年生の1月になって、さてどこに進学しようかと考えていたところ、石川君が医学部への進学を決めたことがきっかけになりました。彼の父親は医師で軍医でもありましたからね。私の実家は病院ではなかったのですが、「石川君が医学部に行くなら私も」という流れで名古屋大学の医学部に入学しました。卒業後は第一内科の大学院、その後基礎系の講師も務めました。当時の先生方には、戦時中に軍医をしていた方々も多く、腹の座った先生が多かったことを覚えています。

循環器を専門にされたのはどうしてですか?

私はそれほど器用ではなかったので、外科ではなく内科を選択しました。外科手術は過渡期を迎えるだろうという思いもあったのです。実際、現在の外科では内視鏡手術、さらにはロボットまで登場して来ています。私が医師になった当時の大きなテーマはがんと動脈硬化でしたので、私は動脈硬化を研究テーマにしながら循環器で臨床を重ねていました。ところが、ステントやカテーテルのような道具が主の時代に移り変わり、細胞内にあるミトコンドリアと病態の関連を研究するようになって心不全へと変わっていきました。

開院されて、現在はどんな患者さんが通われていますか?

杉山理院長 すぎやま内科2

50歳未満の人の有病率も下がっていますし、今は薬局で気軽に薬が買える時代ですから、近年の傾向として風邪で病院にかかる人も減ってきています。当院の患者さんでいえば後期高齢者が4割弱ですね。症状としては、高血圧、糖尿病、心不全、軽い狭心症、中にはステント手術をされた方などもいらっしゃいますし、花粉症の時期はアレルギーの患者さんも多いですね。私以外の医者には診てもらったことがないと言われる高齢患者さんも何人かいらっしゃるので、在宅医療もしています。また、アメリカの大規模な学術団体に参加していますので、外国の方もよくみえますね。

高齢者が楽しく人生を送れるよう、生涯学習を続ける

高齢の患者さんが多いということですが、診察時にはどんなことに気をつけていますか?

杉山理院長 すぎやま内科3

診察時には、カルテを見て診察室のドア口で私が患者さんのお名前を呼ぶようにしています。というのもお名前を呼んだときの反応で、いろいろなことがわかるからです。名前を呼んでも返事がないと難聴かもしれないですし、歩き方も状態を把握するのに参考になります。「今日はどうかな、元気かな」という気持ちで名前を呼ばせていただいています。いつもと動きが違うと思ったら、「先生、今日から杖にしたよ」と元気な声が返ってきて安心したりもしますよ。高齢の方は、不具合なことが増えて、自分の気持ちをわかってほしいという思いが強くなりますので、時には迎合的に接することも必要になることがあります。話すことで気が楽になることもあると思います。診察中も話を聞くようにしているのですが、どうしても時間がかかって外来は進まなくなります。そうすると、若い方は待っていられなくて、お帰りになってしまうんですけどね(笑)。

先生の診療理念をお聞かせください。

日本医師会が掲げる『医の倫理綱領』が私の基本理念です。その中でも『医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす』ということと、『医師は医業にあたって営利を目的としない』の二項目を重視しています。循環器でいえば、私が医師になった頃は心房細動はあまり重要視されていなかったんです。ですが、今は心房細動は脳梗塞の危険因子であることがわかってきた。75歳以上の1割近くの人が心房細動になり、高齢化社会になるにつれ、その重要性が増してきたというわけです。衛生状態や栄養状態など社会的背景が変化することで、時代とともに疾患も変化します。他にも、今は誰もがスマホを持つ時代ですが、青色LEDが睡眠障害になるとの意見もあります。何年か先には、思わぬ影響が起きる可能性もないとは言えません。生涯学習というのはお題目ではなく、医師を続ける上で大事なことなんです。

アルツハイマー病に関する研究もされているそうですね。

杉山理院長 すぎやま内科4

はい。アルツハイマー病では、アミロイドベータが沈着して悪くなるという説がありますが、それは間違いで現段階では薬で治療するのが難しいというのが私の結論です。薬物治療についても、遺伝子治療の治験はようやく始まったばかりですから、あと100年は必要だと思います。また、現在一般的に処方される薬は、継続して服用するのは12ヵ月が限度かと思います。そういった情報をきちんと患者さんに伝えることも大事。特に高齢者は、薬に頼るよりも、ストレスを減らすように時には怠けたり、好きなことをして自分に合ったペースで人生を楽しむことが一番だと伝えています。

地域から頼りにされるような診療所をめざして

地域の医療連携についても教えてください。

杉山理院長 すぎやま内科5

幸い、昔の研究仲間が病院長、副院長などをしている病院も多いので、当院で対処できない症状であれば、すぐに連絡して対応してもらうようにしています。当院は重症の方も多くみえるので、当院のスタッフは何度も救急車に付き添っています。患者さんからは、「先生、ここは駆け込み寺なんだから、頼むよ」といつも言われています(笑)。

待合室にはたくさんの写真や絵が飾られていますね。先生は写真もお好きなのですか?

ほとんどが患者さんや私の友人からいただいたものです。私も昔は写真を撮りましたが、今はデジタルの時代になってしまって写真はやっていません。地域の方々から信頼されている証のようでありがたいですね。一人暮らしの患者さんの中には、「今週、話をしたのは先生だけです」と言われる方も多いです。認知症予防の観点からも、人と交流することは必要なので、「デイサービスに行きなさい」と言うと、患者さんは「そんなところには行きたくない」と言うので、次回もまた「行きなさい」と言って、いつも押し問答ですよ。でも、そうやって会話をすることが大事なんです。

今後の展望をお願いします。

杉山理院長 すぎやま内科6

今の臨床から、われわれの世代が後期高齢者になったときのために生かせるようにしていきたいと思っています。私の娘が大学病院の糖尿病・内分泌科にいますが、娘に言わせると、私たち世代は燃え尽きない症候群だそうです。私自身は燃え尽きたいのですが、「ボケるといけないので、クローザーに頼らず完投してください」と言われています(笑)。最近は、いじめ、ひきこもりなどが増え社会問題になっていますが、アルツハイマー病の研究者としての意見を求められることもあるので、そういった関連の仕事もしていますし、日本老年医学会老年病専門医として若手の育成も含めて、自分にできることをしっかりと行っていきたいと思っています。

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