低侵襲で体への負担が少ない
全内視鏡下脊椎手術(FESS)
医療法人 光安整形外科
(福岡市中央区/大濠公園駅)
最終更新日:2022/06/20


- 保険診療
腰の病気として知られている椎間板ヘルニア。背骨の骨と骨の間にあるクッションである椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで強い痛みを生じる病気だ。また、背骨にはトンネル状の構造があり、そこがさまざまな原因で狭くなると手や脚の痛み、しびれなどの症状を引き起こすことも。「これを脊柱管狭窄症と言い、脊柱管が狭窄している部位によって呼び方も変わりますが、最も多いとされるのは腰部脊柱管狭窄症です」と、「光安整形外科」の菊池克彦副院長は話す。薬物治療などを行っても生活に支障を来すようになると、最近では内視鏡手術をするのが一般的だが、椎間板ヘルニアだけでなく、腰部脊柱管狭窄症にも対応できるように。中でも、同院でも注力しているという低侵襲の全内視鏡下脊椎手術(FESS)について、菊池副院長に詳しく聞いた。
(取材日2022年2月24日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q全内視鏡下脊椎手術(FESS)とはどのような手術ですか?
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A
以前から脊椎内視鏡手術は行われていましたが、さらに進化したのがFESSという手術です。何が進化したかというと、内視鏡の大きさが約16mmから8mmに小さくなったのが一つ。また、内視鏡手術はモニターを見ながら行うのですが、視野が非常にクリアになったことも進化した点。そして、アプローチ方法によっては局所麻酔でも可能となったことも大きな進歩です。FESSは傷が小さく、健常組織へのダメージが少ないため、術後の痛みを抑えて早い回復も期待できます。海外ではアメリカやドイツ、韓国などで数多く行われていますが、手技は難しく、技術の習得にも時間がかかるので、現段階では国内で実施できる施設はまだまだ少ないのです。
- Qどのような症状だと手術を受けることが可能なのでしょう。
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A
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頸椎症性神経根症などを対象とすることが多いですが、私は腰椎の椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症をメインに手術を行っています。FESSはピンポイント手術になるので1ヵ所の病変に対し実施しています。そのため病変が複数ある場合には、まず神経根ブロックなどの治療を行い責任病変を見極めます。痛み、しびれ、麻痺が代表的な症状で、重度の麻痺がある場合は早期に手術となることが多いでしょう。痛みに関しては薬やブロック注射で軽減をめざすことも多いですが、症状が改善しない場合にFESSを検討します。
- Q入院期間や保険適応の有無についても教えてください。
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A
2~3日での入院でも可能ではありますが、傷の痛みが非常に少ないため、術後に患者さんが用心せずに動いてしまうことが懸念されます。状態が落ち着いていないのに普段どおりに動いてしまうことを避けるため、当院ではご事情のある方を除き入院期間は1週間を目安にお伝えしています。また、FESSが受けられる年齢は中学生くらいからお年寄りと幅広く、保険診療での手術ですので、そういう意味では体だけでなく費用面でも負担の少ない手術だと言えるでしょう。FESSを受けられる方は、痛みなどに長い期間悩まれてきたケースがほとんどですから、低侵襲に加え、生活の質の向上が期待できることもこの手術のメリットだと思います。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1手術前日に入院
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手術前日に入院。医師とリハビリテーションを担当する理学療法士から術後避けるべき動作など、注意すべきことについて説明を受ける。手術に関する検査は外来ですべて済ませているため、入院後の検査は通常は不要だ。手術の6時間前までは軽い食事も可能で、飲み物に関しては手術3時間前まで特に制限はないため、入院当日は比較的落ち着いて過ごすことができるだろう。
- 2手術当日の準備
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朝に医師の診察を受ける。平日は夜に手術を行うことが多いため昼食まで取ることができ、飲水は手術の3時間前まで可能なので15時頃までは制限がない。18時過ぎに手術室へ入り19時頃から麻酔開始。麻酔科の医師が術者と連携して患者の様子を見ながら麻酔深度を調整。アプローチによって局所麻酔、もしくは全身麻酔で実施。19時過ぎから手術開始。
- 3全内視鏡下脊椎手術(FESS)開始
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手術はうつ伏せで行う。麻酔の作用を確認後、8mmほど皮膚を切開する。切開した穴に内視鏡を挿入。病変などが鮮明に映し出されたモニターを見ながら手術を行う。椎間板ヘルニアの場合は1時間ほど、脊柱管狭窄症の場合は1時間半程度で終了。手術終了後、約3時間後から立ち上がったり、看護師付き添いのもと歩行器を使用してトイレに行くことも可能だ。
- 4退院までの過ごし方
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再発防止のため術後4週間は簡易型コルセットを使用。そして術後6週間は運動や重労働は避けて過ごすことが重要だ。手術を受ける患者は腰に負荷がかかるバックグラウンドがあることが多いこと、特に椎間板ヘルニアは手術のときに椎間板に穴を開けるため無理をするとそこからまたヘルニアが再発する可能性が高まることが理由。入院中は禁忌動作を避けるためのリハビリを行う。体を支える体幹の筋トレ指導も受け、1週間ほどで退院。
- 5退院後のリハビリ
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退院後も外来でリハビリを行う。ここで、自宅で自分でも行えるリハビリの指導を受ける。理学療法士から普段の生活パターンなど細かい部分まで丁寧にヒアリングを受け、自分に合った指導を受けられる。患者の様子や指導内容などは医師とも共有するそう。リハビリは特に患者のモチベーションが大きく影響することから、メンタル面にも働きかける内容など工夫してもらえるので、疑問や悩みも遠慮なく伝えよう。