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田中 耕司 院長の独自取材記事

かしい心療クリニック

(福岡市東区/香椎駅)

最終更新日:2021/10/12

田中耕司院長 かしい心療クリニック main

2001年に開院した「かしい心療クリニック」はJR香椎駅の駅ビル3階にある。院長の田中耕司先生は、「気軽に来院できるクリニック」を目標に掲げ、これまで日々診療に取り組んできた。同院では、うつ病や不安障害などに加え、発達障害や虐待経験のある人の相談も増加している。医師4人、公認心理師5人、看護師3人という体制で診療を行っており、必要に応じて学校や警察、就労移行支援事業所といった他機関とも連携する。公認心理師が常駐してカウンセリングを提供していることが、大きな特徴になっている。夫婦問題や親子問題、学校や職場での悩み、犯罪被害や虐待体験、LGBTQといったさまざまな相談に、常にじっくりと耳を傾ける田中院長に、目に見えない心の問題について詳しく聞いた。

(取材日2020年8月6日)

めざしたのは通院のハードルが低いクリニック

まずは精神科の医師になられた理由からお聞かせいただけますか?

田中耕司院長 かしい心療クリニック1

もともと小説を読むのが好きで、人間のこころのひだのようなものが描写されている小説を好んで読んでいたことが影響していると思います。性格的には外科系が向いているのではないかと言われることもありましたが、私はもっと深みが欲しかったのです。精神科は人の生き方や考え方にふれることができますし、そういうことが仕事にできるのならばと思い、この分野を選びました。実を言うと、医師になりたての頃は、人の話を聞くのは得意ではなかったんです。精神科の医師になってから、先輩方の指導を受けながら聞く力を身につけていきました。ありがたいことに先輩や患者さんに恵まれ、さまざまな経験を積ませてもらいました。周りの方たちにこの分野の医師らしく育てていただいたと強く感じています。

2001年に開院されたそうですが、駅ビル内ということで利便性の高い場所ですね。

開院したのは約20年前ですから、「精神科は人目のつかないところでやらないと患者さんが入りづらいのではないか」という意見もありました。実際は、私自身がめざしていた「受診のハードルが高くない」「通院しやすいクリニック」というのを、患者さんたちも感じてくださっているようです。学校帰り、仕事帰りにちょっと相談してみようかなという感覚で、おみえになります。

約20年前と今では、世間の精神科に対するイメージも変化し、かなり身近なものになったのでは?

田中耕司院長 かしい心療クリニック2

それは大いにありますね。うつ病や不安障害、発達障害といった病気がメディアで取り上げられることで、病気に対する関心や理解も深まりました。もしかしたら自分もそうかもしれないと、人から勧められる前に自ら来院される方が増えました。以前よりも軽症の方の来院が増えましたし、若い人たちの受診も増えました。これも時代の流れで、気軽に受診できるように変化してきたことの成果だと思います。

子どもの時の体験を抱えながら生きている

今は学校内にスクールカウンセラーがいたり、環境も変化していますよね。

田中耕司院長 かしい心療クリニック3

ええ。そういった学校でのカウンセリングを受けてみて、そこで勧められて受診される学生の方もいらっしゃいますね。逆に、お話を聞いていく中で虐待の問題が明らかになってくると、学校や児童相談所といった他機関と連携しなければならない場合も出てきます。子育てにかかわる問題は地域全体で見守り支えなければいけない問題ですから、毎日のように夜遅くまで外にいる子どもを見かけたり、大声で叱責されているのが聞こえてくるようなことがあれば、児童相談所へご一報いただきたいと思います。

幼少期の体験は大人になっても大きな影響を与えるのですね。

虐待にもいろんな種類がありますし、虐待とまではいかないけれども不十分だったり不適切だったりする養育を含めて、マルトリートメントという言い方をします。大人になってからうつ病や不安障害で受診された方の中には、お話を聞いていく中で幼少期のマルトリートメントの後遺症として生きづらさを感じていたことがわかってくることがあります。PTSDという診断にならなくても、幼少期の体験はその人の生き方や価値観にずっと影響していることがあります。それだけ、子育てをするほうも大変なんだということもわかっておかなければならないことです。

では、患者さんに対し、どのようなことを心がけて診療されていますか?

田中耕司院長 かしい心療クリニック4

まずは決めつけをしないこと。そして、診断がつかないような軽症の場合でもしっかりお話を聞くことですね。当院のシステムとして、初診の方は、看護師、公認心理師、医師が手分けをして、じっくりとお話を聞くことを徹底しています。それは単なる情報収集ではなく、これまでの自分を振り返ることが治療になるからです。自分はこんなふうに生きてきて、今、自分はこんなことで悩んでいるんだと、患者さん自身がこれまでの人生を振り返ることで、気持ちや思いを整理することもできます。それだけで気持ちが楽になられる場合もあります。

充実スタッフ体制で多くの患者の心と向き合う

治療は、薬物療法・精神療法・心理療法を組み合わせているとお聞きしました。

田中耕司院長 かしい心療クリニック5

患者さんが症状を変化させる力を奪ってしまわないよう、症状があるからといって必ずしも薬物療法を行うわけではありません。必要であれば薬物療法を取り入れますが、軽い症状の場合や疾患ではない悩みの場合はカウンセリングが主になります。患者さんの中にはなるべく薬を使いたくないと思われる方もいらっしゃいますので、体調を整える目的で漢方薬を処方することもあります。心の病気は完治することが難しく、症状が改善したとしても問題の種は持ち続けていることがあります。大事なことは、それが開花しないようにメンテナンスすること。回復された患者さんが定期的に経過報告のために来院されるのも、そのひとつにあたります。来院時にはハッピーな話を持ってきてくれることが多いので、それが私の精神安定剤であり、医師として喜びを感じる瞬間でもありますね。

充実したスタッフ体制もクリニックの大きな特徴では?

はい。医師は4人、公認心理師5人、看護師3人、そして受付4人です。当院は予約の時点で主訴や病歴を伺っており、毎朝のミーティングでその日に予約されている患者さんについて、スタッフ全員で情報共有します。新患の方も、再来の方も、ひとつのチームとして全員で協力しあって治療を行っているのです。当院はカウンセリングに力を入れています。不登校やひきこもり、摂食障害や自傷行為といった問題を抱えている方や、マルトリートメントの中で育ってきた方、対人関係の問題を感じている方などに、カウンセリングを提供しています。また、犯罪被害やLGBTQといった周囲には相談しづらいとおっしゃるような話題についても、担当の公認心理師がお話を伺いながら支えていきます。必要に応じて、学校や警察、就労移行支援事業所といった他機関とも連携します。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田中耕司院長 かしい心療クリニック6

夫婦関係の悩みなどは診療対象ではないということで断られるクリニックもあるようですが、当院ではそういった疾患以前の悩みについてもできるだけすくい取っていけるようにしたいと思っています。そして、眠れない、食欲がない、いつもできていたことができなくなった、または長期間悩みが続いている、本来の自分らしくないと感じておられる方などは、お気軽にご相談ください。決して来院のハードルは高いところではありませんし、治療についても患者さんが望まないことはいたしません。患者さんが治療を選択できる幅を広くする努力もしておりますので、患者さんご自身で診断し抱え込まず、悩んでおられる方は安心していらしてください。

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