妊娠の成立を促す一手と
不妊に悩む夫婦や若い世代に伝えたい知識
松田ウイメンズクリニック
(鹿児島市/高見馬場駅)
最終更新日:2024/05/30
- 保険診療
子どもが欲しいと望んでいるにもかかわらず、子どもに恵まれず不妊治療を受ける人の数は年々増加。一方で、インターネット上で流れる「40歳を過ぎても妊娠できる」といった情報をよりどころに、受診を先延ばしにする人や、不妊についての知識がない人も多くいる。長年、不妊に悩むカップルに寄り添い、不妊治療に注力してきた「松田ウイメンズクリニック」の松田和洋院長は「若い人たちが、将来妊娠を希望した時に困ったり慌てたりしなくてもいいように、不妊治療についての正しい知識を持ってもらい、自分の体の状態をしっかりと知っておいてほしいです」と話す。不妊症の原因や、なかなか妊娠ができない人、治療をしても結果が得られない人に向けて、次のステップアップにつながる検査・治療について話を聞いた。
(取材日2021年9月15日/情報更新日2024年5月20日)
目次
「子どもが欲しい」のになかなか妊娠できない夫婦の思いに応えるため、幅広い不妊治療に対応
- Q不妊症とは、どんな状態で何が原因で起こるのでしょうか?
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A
不妊症とは、妊娠を希望している健康な夫婦やカップルが性生活を送り、1年を経過しても妊娠しない状態のことを言います。女性の年齢が35歳未満で、1回の排卵での妊娠率は最大20%といわれることから、通常半年から1年以内に妊娠できるのが一般的です。しかし、女性が月経不順だったり子宮内膜症の既往歴があったりすると、妊娠しにくいことがわかっていますので、こういった場合は治療を先送りせず、年齢が若くても1年を待たずに不妊治療を行うクリニックを受診してください。また、不妊の原因は女性側の問題として考えられがちですが、近年は男女両方に原因があるケースや、男性側が不妊の原因になっているケースも知られてきています。
- Q不妊治療の流れと受診すべきタイミングを教えてください。
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A
まずは不妊症の原因がないか検査を行い、異常があればその異常に対する治療を行います。異常がなければタイミング療法を5~6回行い、妊娠が望めない場合は人工授精、次に体外受精と、順番にステップアップします。女性は年齢が上がると残存卵子数の低下や卵子の老化の関係から妊娠する確率が低下します。38歳以上の場合は半年間経過を見て、妊娠しなければ不妊治療専門のクリニックの受診をお勧めします。また、年齢が若い方も、不妊の原因に思い当たる節がある場合は1年を待たず早めに受診されるとよいでしょう。一般的な婦人科では対応できる範囲が限られているので、初めから不妊治療専門の医療機関を受診するほうが効率的だと思います。
- Q女性の不妊原因と治療の流れについて詳しく教えてください。
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A
子宮内膜症、子宮筋腫、骨盤腹膜炎、クラミジア感染や子宮内膜症から起こる卵管通過障害、卵管閉塞、腹部の手術など、女性の不妊原因は複雑です。治療方法の選定には、患者さんの年齢と、卵胞数を評価する「AMH値」がポイントになります。例えば、卵管通過障害や卵管の閉塞の原因がある場合は体外受精、子宮内膜症の一種で卵巣チョコレート嚢腫があってなかなか妊娠が望めない場合は、タイミング療法・人工授精・体外受精の進め方を早めるか、卵巣嚢腫の大きさによっては手術を行うなど、それぞれに適した方法を実施します。また、原因不明不妊の方も少なくありません。そうしたケースでも人工授精や体外受精といった治療は可能です。
- Q男性側で考えられる不妊の原因と治療の流れを教えてください。
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A
睾丸打撲、停留睾丸の手術、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、糖尿病、肥満、過度な喫煙などが原因で精巣にダメージを受け、精子数や精子運動性が低下していることが考えられます。まずは、精液検査で精子数や精子運動性を測定し、中程度低下している症例には、薬物療法を行いながら生活習慣の改善を行い、それで効果が表れない場合は人工授精へと移行します。また、男性不妊の原因で多い精索静脈瘤などは、精子数や精子運動性が極端に低下しているため、専門の医療機関での手術も検討します。無精子症の場合、専門の泌尿器科で精巣内の組織を取る精巣生検で精子の有無を確認。生存精子が見つかれば凍結保存して顕微授精による治療を行います。
- Q体外受精でも妊娠が望めない場合の対処方法はありますか?
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A
通常の体外受精は、女性の体内から取り出した卵子に精子を振りかけて受精卵としていきますが、精子の数が少ないなどの理由で受精が成立しない場合があります。そういったケースには、顕微鏡で1つの精子を直接卵子に注入して受精を促す顕微授精を行います。ほかにも、卵子の数が少ない場合は、ホルモンバランスを整え、採卵数の増加を図るためのアプローチを行ったり、受精卵の状態が悪い場合は食生活などの管理を行ったりする場合もあります。また、良好受精卵を移植しても着床障害で妊娠できない方の対応や、異常が認められた場合には、着床率の上昇を促すための対応を行うことも可能です。