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井上 毅 院長の独自取材記事

井上医院

(世田谷区/梅ヶ丘駅)

最終更新日:2021/10/12

井上毅院長 井上医院 main

小田急線梅ヶ丘駅北口のロータリーを抜けてすぐの場所にある「井上医院」は、1996年の開業以来、長きにわたり地域住民の健康を守り続けている。循環器内科を専門とする井上毅院長は、医師として40年以上の経験を生かし、患者の体のケアだけでなく、心に寄り添った診療を行っている。「病気だけを診るのではなく、心に抱えていることも含めてその人自身を診ています」と語る井上院長。もの静かで丁寧な言葉からは、温かな人柄と医療現場に正面から向き合う姿勢が伝わってくる。同院での診療に加え、往診にも出ているという井上院長に、最近の患者の傾向や患者に対する想い、診療の際に心がけていること、休日のリフレッシュ法など、たっぷり語ってもらった。

(再取材日2020年9月11日)

患者の病気を診るだけでなく、心の想いも拾い上げたい

長きにわたりこの地で診療されていると伺いました。

井上毅院長 井上医院1

高齢のために引退された前院長から引き継ぐかたちで、1996年に私が後継者として開業しました。この25年ほどの間に地域の様子も変わりましたね。子どもが少なくなって高齢者が多くなり、そして独居のお年寄りが増えました。あるいは、同居人がいても日中は仕事のために出かけて、お年寄りは一人で家にいるという日中独居。当院でも、高齢のために足腰が弱くなったり体調が悪化するなどして、通院が難しくなる患者さんが増えています。患者さんの全体的な年齢層は、主に40歳代以上が来院され、特に60歳代より上の世代が多いですね。私の専門である循環器系疾患の患者さんも来られますが、風邪をひいた若い人や足腰が弱って遠くの大きな病院に行くことが難しい高齢の患者さん、いろいろな病気の悩みを持つ方々に来ていただいています。

来院される患者さんについて、最近気になることはありますか?

患者さんが10人いたら、その症状や悩みもそれぞれ違いますが、特に近年は、精神的な悩みを持っている方が多くなっていると感じます。自ら命を絶つような事件や学校でのいじめ、ちょっとしたことでけんかになるなどピリピリした社会になっていますよね。そんな中で生活していると、いつの間にか交感神経が緊張した状態になってリラックスする生活を忘れてしまいます。その精神状態が、循環器系、呼吸器系、消化器系など、体の至るところに不調となって出ているのだと思います。高齢者の中でも、少し動けるけれど、何だか体の調子が悪くなってきて、漠然と将来の不安を抱えて精神的につらくなっているという人が増えています。若い人でも知らないうちにパニック障害、うつ状態になり体の不調を訴えられ、来院される方が増えてきています。

そういう患者さんに対して、どのように対応されているのですか?

井上毅院長 井上医院2

患者さんの病気を診るだけでなく、心の想いを拾い上げるようにしています。町医者として顔が見える関係を大切にし、その人が普段と違う様子だったり、顔色が違っていたりするときにいつでも気づけるようにしていたい。そのためには家族構成を聞いたり、患者さんの話をよく聞くことが大切です。その上で、「あなたは交感神経が緊張して副交感神経が休む暇のないバランスの悪い状態だから、脳から良いホルモンが出ていません。生活の状況を改善したほうがいいですよ」と言うこともあります。また、体の病気なのかどうか心配で来院される方には、心電図、胸部・腹部レントゲン写真、血液検査を施工し、体には異常がないことを確認し治療をしています。

患者が安心してほほ笑んでくれる瞬間が最高にうれしい

診療で心がけていることを教えていただけますか?

井上毅院長 井上医院3

「病気を診て、人を見ない」のではなく、心に抱えていることも含め、どちらも大事に診るように心がけています。患者さんも人それぞれなので、その人なりのお考えをお持ちになっています。病気の説明をする中で、考え方の違いでもって病気の内容をご理解いただけないときは、自分の力不足を嘆いています。人の深層というものは本当に難しいものだと思いますね。年を経るにしたがって、日々これでいいのかと反省しつつ医療に励んでいます。また、当院では紙のカルテを大事にしています。気がついたことをすぐに書き入れることができますし、患者さんが訴えている痛みの箇所を細かくスケッチすることもできます。患者さんの顔を見ること、触診することを心がけていますので、パソコンに入力していると、どうしても画面ばかり見てしまうことが多くなるのです。

医師としてのやりがいはどのようなところにありますか?

患者さんから「ありがとう」と言っていただける瞬間もとてもうれしいのですが、言葉はなくても、患者さんが診察の最後に安心した様子でニコッとした表情を見せてくれる瞬間もすごくうれしいですね。患者さんは、自分の病気や心身の状態に真剣に悩んで、困って来院されていますから、私もその患者さんに真剣に向き合うために緊張しています。患者さんの頭から足までを慎重に診るためにアンテナを張っているのですが、診察のときは自然にそんな感じになるのです。ですから、診療を終えて、お互いに納得して「良かった」となってようやく緩むとき、患者さんがホッとして笑顔を見せてくれる瞬間が一番幸せですね。

心に残る患者さんとのエピソードはありますか?

井上毅院長 井上医院4

「体の調子が悪い」と言って来院された患者さんがいたのですが、検査をしていろいろ調べても、どこにも悪いところがありませんでした。もしかしたら心に原因があるかもしれないと思い「何か悩み事はありませんか?」と話を聞いてみました。そうしていると、すぐそばの窓からブラインド越しに、とてもきれいな木漏れ日が差してきたので、「こんなきれいな日が差しているので外に出て光にあたって、もっとリラックスしてみてはいかがですか」と伝えたところ、その患者さんがサーっと涙を流したことが忘れられません。人は閉じこもってしまうと、感覚が衰えてしまいます。外に出て、日を浴び、五感で自然を感じることはとても大切だと思います。

外に出て歩き、自然を感じることで心身の健康を保つ

往診にも対応されていらっしゃるのですね。

井上毅院長 井上医院5

往診は地域医療の原点だと考えていますので、どんなに忙しくても1日1軒は伺うようにしています。基本的には長く通院してこられた患者さんを中心に往診しています。これまで当院に通っていたけど足が不自由になってしまったなど、そのような患者さんがメインです。今は在宅医療に特化した医療機関やドクターがどんどん増えていますが、患者さんの経済的な理由から、在宅医療専門のドクターにかかれない人もいらっしゃいます。当院では診察の合間の12時から15時の間に往診していますが、私自身の健康も考えて患者さんの家まで歩いて行っています。豪徳寺や東松原あたりにも歩いて行きますよ。

健康維持の秘訣を教えてください。

毎晩夕食を済ませた後、1時間ほど歩くようにしています。とにかく歩くことです。歩くことで筋肉量、筋肉の強さ、柔軟性を保ち、各関節の硬さもとれます。その上、脳細胞まで活性し、認知症予防にもなり困らないくらいの日常生活を過ごすことができます。汗をかいたその夜は、ぐっすりと眠れますよ。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

井上毅院長 井上医院6

新型コロナウイルスの影響で家の外に出ない人が増え、運動不足が懸念されています。特に高齢者は、歩く機会が減ることで足腰が弱くなりますので心配です。歩かないと筋肉や関節が衰え、自然に体全体の老化現象が進みます。それを止めるにはまず薬やサプリメントではなく、歩くことが大切。歩くことによって健康を維持し、老化を防ぎましょう。1日の目安は、40~50代は1万歩、60代は5000歩、70代は3000歩ですので、中高年世代と高齢の方は可能な限り、積極的に歩いてほしいですね。また、新型コロナウイルスのために通院が遠のいてしまっている方は、事前に連絡をいただければ予約診療を行うなど柔軟に対応できますので、気軽にご相談ください。

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