予防と治療、その後の生活まで
先を見据えた脳卒中の治療
関東中央病院
(世田谷区/用賀駅)
最終更新日:2020/11/26


- 保険診療
日本人の死亡原因第4位の脳卒中。脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など脳血管疾患のことを指し、死亡率の高さの問題だけでなく、後遺症で身体機能や言語機能を失い介護を要する生活になる可能性もあるため注意が必要だ。発症頻度が高く怖い病気という印象が強いが、実は脳卒中は予防できる病気ともいわれている。日々の生活の中で、生活習慣病の管理や、健康診断や脳ドックの定期受診で血管の状態を知っていくことを通して、発症の予防や再発防止につなげていくことが大切なのだそう。そこで、地域の中核病院として脳卒中の治療に力を入れ、救急患者も多く受け入れている「関東中央病院」脳神経外科医長の清本政先生に、脳卒中の症状や同院での治療について詳しく聞いた。 (取材日2020年7月30日)
目次
症状があれば必ず受診を。状況に応じた適切な治療で脳のダメージを最小限に
- Q脳卒中はどのような人に起こるのでしょうか?
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A
▲「脳卒中は予防することが可能な病気」と話す清本先生
生活習慣病がベースになる病気なので、高血圧や糖尿病、脂質異常症のある方、喫煙習慣のある方は脳卒中を起こしやすい傾向にあります。また不整脈、特に心房細動のある方は脳梗塞を起こすリスクが高いです。生活習慣病以外にも、ある程度の年齢になると脳卒中のリスクは高くなります。動脈硬化の進行や血管の脆弱さにより脳血管がつまったり、破れたりするからです。脳卒中は予防が大事なので、生活習慣病をきちんと管理すると同時に、前兆を早めにキャッチするために健康診断や脳ドックを定期的に受診することは非常に有用です。何か症状が起こった場合はもちろん、やがて大きな脳卒中につながると判断した場合には治療の対象となります。
- Q症状の特徴は? また症状があった場合はどうすればいいですか?
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A
▲気になる症状があれば早急に受診を
脳卒中の症状は損傷される脳の部位によってさまざまです。特に片側のまひの症状は特徴的で、顔のゆがみやしゃべりづらさ、手足の動かしづらさを感じたら脳卒中を強く疑います。このような症状があればできるだけ早く医療機関を受診してください。脳卒中の治療は早期の治療介入が大事で、発症からの時間により受けられる治療と受けられない治療があります。他にも頭痛やめまい、しびれ、見えづらさなどの症状がある場合はかかりつけの医療機関や脳神経科、総合診療科などに早めに相談されることをお勧めします。
- Qどのような検査や治療を行いますか?
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A
▲検査を通して経過を観察していく
検査では、体に負担が少ないMRIやCT検査で脳や血管の状態を評価します。血管の状態が良くないときにはさらに頸動脈の超音波検査や造影剤を用いたCT検査、カテーテル検査を行います。神経症状を中心に採血や基礎疾患の有無を含め総合的に評価し、まずは薬による治療を行います。さらに治療が必要であれば手術を検討します。生活習慣病の高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙の管理を行い、脳梗塞の場合は血をさらさらにする薬を内服します。再発しやすい病気のため継続した治療やフォローが大事になります。
- Q脳卒中を発症すると必ず手術になるのでしょうか?
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A
▲一人ひとりに合わせた治療方法を提案
脳卒中治療は脳の損傷や症状の悪化を防ぐことが目的であり、この先悪くなる可能性がどれくらいあるかを見据えた上で外科的治療の必要性を判断していきます。主にガイドラインや治療データを参考に判断しています。手術の適応があると判断した場合、当院では従来の切る手術の他に、体に負担の少ないカテーテル治療も行っています。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、治療の目的によっても治療法が異なります。症例ごとによく検討して治療方法を決めています。
- Q治療後のリハビリテーションが重要だと聞きました。
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A
▲チーム医療でさまざまな患者を支える
脳損傷により一度出た症状は後遺症として残ることが多いです。そこで重要なのがリハビリです。残された能力を最大限に生かし元の状態に近づけることをめざします。当院でも早い段階からリハビリを開始しています。急性期病院として僕らの役割は病気をしっかり治し落ち着いた状況をつくることと、その間にどんどん進行する体の衰えを最低限にとどめることです。その後、落ち着いた状況で次のステップである回復期リハビリテーション病院へとバトンを渡していきます。残念ながら元の生活に戻ることが難しい場合は、ソーシャルワーカーを加えて新しい生活様式を検討していきます。