伊藤 昌男 院長の独自取材記事
伊藤歯科医院
(千葉市美浜区/稲毛海岸駅)
最終更新日:2023/05/30

稲毛海岸駅から徒歩で約5分。稲毛駅からバスと徒歩の併用で約8分。高洲公園の前に立つ「伊藤歯科医院」の伊藤昌男院長は、40年以上も地域密着型の歯科診療を提供してきた。東京医科歯科大学の大学院における研究で博士号を修得し、根管治療によって歯を残す可能性を探ることを得意とする。埼玉県や、岐阜県などの遠方からも患者が訪れるという同院。患者の緊急時にも、逃げも隠れもせずに対応したいという思いから、歯科医院は居住部分と隣り合わせだ。真剣な診療方針を聞いた。
(取材日2017年6月19日)
歯は機械ではなく患者と歯科医師で協力して治療する
この地域で開院された経緯を、お聞かせください。

私は1970年に、東京医科歯科大学の大学院・博士課程を修了しました。その後は大学に残り、文部教官助手・講師として診療、研究、教育にあたったものです。しかし、間もなく大学紛争が激しくなり、東京医科歯科大学でも、講師としてのまともな活動が難しくなってしまったのです。廊下で学生とすれちがっても誰ひとり挨拶もしないような環境になり、苦しかったですね。同時期に教えに行っていた鶴見大学では、教えてもいない学生からも挨拶されていたものだから、大きなギャップを感じました。それで開業の道を選んだのです。当時のこの辺りは周囲に大規模な団地ができたばかり。歯科医院が求められていたのでここで開院しました。開業当時は、毎日すごい数の患者さんが訪れて忙しくてたまりませんでしたが、人に求められ、やりがいは大きかったですね。
歯科医院の隣に住まれていますね。
初めから、開業歯科医師というのは当たり前のように常にそこにいるべき、と思っていたのです。もしもビル内の歯科医院に通うスタイルだったら、クリニックが休みの日に出た急患を、地域の別の歯科医院にお願いすることになってしまいます。それはあまりしたくないと私は思ったわけです。そこで本当に緊急の際に備えて、時間外も含めていつでも診られるようにしておこう、と。新年間もない1月2日や夜中に呼び出された経験もありますが、通常はそんな事態ばかりでもありません。しかし、用意しておく必要はあるのが、地域の「かかりつけ歯科医師」だと私は考えています。ただ、そうした急患に限ってその後の通院が止まることも多いので、口腔内のケアは継続的に行うべきだとは知っていただきたいですね。
40年以上も診療を続けてきた中で、近年、感じておられることは何ですか?

その時さえ良ければ構わない、という短期的なものの見方をする患者さんが増えているように感じます。保険診療なのでそれほど費用はかからない場合でさえも、初回で痛みが止まれば、その時点で来院を止めてしまうという場合もよくあります。適切な処置をしなかったがゆえに、虫歯が悪化して歯を抜かねばならなくなってしまう状況は残念ですね。また、インターネットが普及してから増えたのは、こういう歯科医療器具を用いているか、というお問い合わせの電話です。ただし、機械が歯を治すわけではありません。大工さんと同じで、歯科医療というのは歯科医師一人ひとりの技能に大きく左右されるのです。そして、患者さん自身の治したいという思いも必要でしょう。機械ではなく、患者さん自身の配慮と歯科医師との協力によって治療していくのです。
かかりつけの歯科医院に通い自らの健康を守ってほしい
歯科医院には、継続的に通院するべきという考えをお持ちなのですね。

問題がなくても、少なくとも半年に1回は定期検診をするべきでしょう。口腔内の環境を維持し続けなければ予防はできないのです。逆に、きちんと予防すれば、後になってから痛くなるなど問題は出づらい。痛くなってからでは、もとの状態に戻すことが難しいのも口腔内のみならず生活習慣に関わる疾患の特徴と言えるでしょう。歯磨きのやり方から、通っている歯科医院の歯科衛生士たちにしっかり教えてもらう。「自分の口の中の健康を自ら守りたいという思いは、歯科医師だけではなく、患者さんにも必要なのだ」とは痛感しているのです。歯科医師がいくら良い治療をしても、その後に注意点を守っていただけなければ、環境はすぐに戻ってしまいますからね。
口腔内の長期的なケアと言えば歯周病治療が頭に浮かびますが、これについてはどうお考えですか?
歯周病は生活習慣病などほとんどの疾患につながり得る、万病のもと。免疫の入り口でもある口腔内を細菌だらけにしたら、これは、歯科と医科が連携する糖尿病治療などにおいてはもはや常識ですが、しかし、患者さんによっては「痛くもないから何もしない」ものになりがちです。ここでも、患者さんの「治したいと強く思っているかどうか」が大きく影響してきます。さしあたっては歯磨きをしっかりやるべきで、歯科衛生士の指導によって、できれば歯周ポケットが大きくならないうちに、歯と歯茎の間をマッサージするように磨き続けてほしいですね。歯周病に限らず、歯磨きの習慣こそが、まずは口腔内の環境を良くするためのメンテナンスになるはずです。「1〜2分で済んでしまう」という方は、まだ念入りに磨く方法を知らないかもしれません。当院をはじめ、かかりつけの歯科医師に相談することをお勧めします。
かかりつけ歯科医院で受けられる治療のメリットは、どんな点にあると思われますか?

大きな診療機関の長所は、歯科医師が何人もいて、互いに相談して最善の治療に向かえること。一方で、個人診療所の長所は、大学病院や総合病院の歯科よりも、きめ細かな治療が可能なことだと思います。私で言えば根管治療をじっくりやってきました。これなどは、1本ずつの歯を丁寧に治療できる点では、小回りの利く診療所だからこそ長くやり続けられることですね。長期的な健康管理も、個人医院が得意とするところです。だからこそ、かかりつけ医の言うことは聞き続けたほうがいいでしょう。例えば、あと3回ほど通えば、あとは定期的なメンテナンスでよいというようなタイミングで、患者さんが自分で「もう痛くないから」と通院をやめてしまえば、後の口腔内のトラブルを招きかねませんよ。
自費診療にという助言も、内容次第で聞いてみてほしい
根管治療をやり続けてきた中での思いも、お聞かせください。

根管治療は、歯を残すための治療です。自分の歯で噛み続けたいというのは誰もが持つ願いですし、その思いに応えることは歯科の基礎だと思っています。歯の欠損を補うためには、入れ歯、かぶせ物、インプラントなど多くの方法がありますが、どんなに精巧なものでも、人工物であることに変わりはありません。ただし、気をつけるべきなのは、何でもかんでも抜かなければいいというものでもないということ。口腔内全体の健康を将来にわたって維持するために、時には抜歯の判断も要るのです。そのあたりは、細かく診てきました。
アジアの街や国内の城見物がお好きだと聞きました。
アジアは人が純粋で、どこか、昔の日本を思わせるところが好きですね、日本の城を見ることも好きです。昔ながらの城は、足腰にとってきついものもありますが(笑)、松江城や彦根城などは、また行ってみたいですね。
最後に、患者へのメッセージをお願いします。

歯科医師の言う内容を守る、あるいは、真剣に検討してみるだけでも、かなり口腔内の健康のためになる場合がありますよ、とはお伝えしておきたいですね。当院でも、例えば根管治療にあたり、本当に健康のためになると思うからこそ自費診療をお勧めする場合もありますが、その一言で「やめます」と即断されてしまう時には、正直に言うと残念ですね。自費診療か保険診療かではなく、その内容をよく聞いていただきたいのです。方法として妥当な場合には、口腔内の健康のために、時には、歯科医師のお勧めにも耳を傾けてもいいように思いますよ。