「守り、残す」を基本にした
段階的な歯周病の治療&ケア
あぼ歯科医院
(大阪市中央区/心斎橋駅)
最終更新日:2023/02/07


- 保険診療
2016年の厚生労働省の調査によると、30代以上の2人に1人に歯周病の症状が見られるという。その事実を知ると「怖いな」と誰もが感じるのではないだろうか。しかし、日頃の歯磨きがついさぼりがちになっている人や、歯磨きの際に歯茎から血が出ていることに気づいても、さほど気にならないという人も中にはいるだろう。歯周病ははっきりした自覚症状がないまま進行する。悪化すると顎の骨が減って、歯がぐらつき、大切な歯を失うリスクも高い。最近では全身の健康にもたらす悪影響も指摘されている。病気を予防し、重症化を防ぐためには、まずは正しい知識を身につけることが大切。そこで、歯周病の予防・治療に力を入れる「あぼ歯科医院」の阿保淳一院長に、歯周病の特徴や治療について詳しく聞いた。
(取材日2022年8月24日)
目次
基本的な治療・ケアを徹底。歯周病の予防・改善・良い状態の継続をめざす
- Q歯周病とはどのような病気ですか?
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A
▲歯周病治療の経験が豊富な阿保院長
細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患です。成人の多くが罹患しているといわれ、歯茎の間に歯垢がたまり、その中にすむ細菌によって歯茎に炎症が起きている状態を指します。炎症に伴って歯茎の腫れや出血、口臭やネバつきなどが発生しますが、ほとんどの場合は痛みがなく、自覚のないまま進行するので注意が必要です。歯垢が歯石となって歯に固着すると、ブラッシングだけで取り除くことはできません。また、歯と歯茎の間の歯周ポケットと呼ばれる溝が深くなり、汚れがたまりやすくなって炎症がひどくなるという悪循環にも陥ります。さらに、細菌の影響で歯を支えている骨が溶けて歯がぐらつき、最終的には失うことにもなりかねません。
- Q治療はどのように進めますか?
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A
▲歯周病治療のための院内設備も充実している
歯周基本治療と呼ばれる治療を行います。まず炎症の有無や歯と歯茎の間にある歯周ポケットの深さを調べ、エックス線検査で内部の状態も確認します。歯周ポケットの深さを調べるのは、深ければ深いほど骨に悪影響が及んでいる可能性が高いからです。その後、歯の表面や歯周ポケットの比較的浅い部分にたまった汚れを取るクリーニングを行います。歯周ポケットの奥の汚れもきれいにする必要がありますが、毎日の歯磨きがきちんとできないと、またすぐに汚れがたまるので、深い部分のクリーニングは正しいブラッシングを身につけてから行います。最終的には、炎症が治まって歯茎が引き締まり、歯周ポケットに汚れが入りにくくなる状態をめざします。
- Q熱心にブラッシング指導をされていますね。
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A
▲それぞれの患者に合った歯ブラシを勧めてくれる
正しいお手入れを行うことは歯周病予防の第一歩ですし、軽い炎症なら汚れをしっかり取り除くことで改善につながりますので、日々のブラッシングはとても大切です。当院では、熟練した歯科衛生士が私の指示に従ってブラッシング指導を行い、可能な限り同じスタッフが毎回のケアを担当するようにしています。また、ご自宅で効果的なブラッシングを行っていただきたいので、「歯ブラシのソムリエ」のように厳選したお手入れグッズを紹介し、患者さんのお口の中の状態や磨き方の癖などに適したグッズ選びをアドバイスします。
- Q進行した歯周病にはどのような治療を行うのですか?
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A
▲歯周病治療は早い段階での治療が重要になってくる
段階的にステップを踏みながら、歯茎の状態の改善をめざすのが当院の基本方針です。継続的な診療によって、汚れを取るだけでいいケースとそれ以外をふるいにかける必要があるからです。また、詰め物やかぶせ物の形状が磨きにくさの原因となっているケースや、歯の根っこの凹みやひびから細菌が侵入し炎症を起こしているケースがあり、こうした場合には適した処置が必要となります。一方、歯周ポケットが深く、深い部分にまで細菌の悪影響が及んでいる、顎の骨が減っているといった場合は、外科的な治療も検討します。ただし、こうした大がかりな治療が必要となる前に、定期検診を受けて歯周病を見つけ早い段階で対処することが何よりも重要です。
- Q進行した場合の外科的な治療について教えてください。
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A
▲まずは早めの受診が大切だそうだ
歯周組織再生療法と呼ばれ、特殊な薬で骨、歯のセメント質、歯根膜などの歯周組織の再生を促す治療法です。具体的には、歯茎を切開して深い部分の歯垢や歯石を徹底的に除去した後、ジェル状の薬を塗布して閉じます。当院ではこの治療に保険適用が可能なこともあって、他院で抜歯しかないと言われたという患者さんが来院されることも少なくありません。ただし、適応条件が限定される上、治療に時間がかかり、誰もがパッと魔法のように治るというわけではありません。「ひどくなっても便利な治療法がある」とはくれぐれも考えず、早めの受診や定期的な検診、日頃のお手入れをぜひ心がけてください。