治療の選択肢の一つ
脳神経領域にも活用される漢方
公益財団法人日産厚生会 玉川クリニック
(世田谷区/二子玉川駅)
最終更新日:2018/12/25


- 保険診療
疲れやすい、だるい、食欲がないなど、「病院に行くほどではないが、なんとなく体調が優れない」という状態に悩む人は多い。こうした検査の結果には表れにくい症状を東洋医学では「未病」といい、治療の選択肢の一つとして漢方薬が処方されているという。月経不順や不妊といった女性特有の症状のほか、頭痛やめまいなど脳神経内科領域の症状にも状況に応じて活用される漢方薬について、漢方の外来に力を入れる「玉川クリニック」の石田和之先生に詳しく話を聞いた。(取材日2018年10月28日)
目次
漢方薬は治療の選択肢の一つ。片頭痛などの予防にも
- Qまずは西洋薬との違いを踏まえて漢方薬の特徴を教えてください。
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A
▲漢方薬は西洋薬と違い、複数の性質をもつ
西洋薬が単一成分でできているのに対し、漢方薬は薬効のある天然の生薬を組み合わせて出来ています。そのため、漢方薬の場合、ひとつの薬の効能はひとつではありません。例えば五苓散(ごれいさん)という漢方薬は、下痢・嘔吐などの胃腸炎、むくみ、頭痛、めまいなど、さまざまな症状に対応することができます。病原菌を殺すために抗生剤を処方する、というように、ひとつの症状に対して強い力を発揮する西洋薬とはこの点が大きく異なります。「この病気にはこの薬」という考え方ではなく、体全体の不調和からくる歪みを整え、自覚症状を緩和する目的で処方されるのが漢方薬だと考えるとわかりやすいでしょう。
- Q漢方薬にはどんな特徴がありますか。
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A
▲女性特有の症状に悩み来院する女性患者も多いという
漢方薬は「不定愁訴」として片付けられてしまいがちな不調など、検査結果に表れにくい症状への対応を得意としています。いわゆる「未病」と呼ばれる状態を改善するという考え方で、検査をすると異常はないのに「なんとなくだるい」「痛みがある」といった症状に対応します。虚弱体質の改善、加齢による不調、アレルギー、イライラや不眠などの慢性疾患、月経不順や不妊といった女性特有の症状にも適していますね。頭痛やめまい、片頭痛など脳神経内科領域にも使用でき、慢性的な頭痛の予防に用いることもあります。力が強い分、副作用も大きい西洋薬を頓服で飲み続けるより、漢方薬を日常的に服用して予防するほうが体に負担が少ないと思います。
- Q西洋薬より、力が緩やかに表れると考えていいですか。
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A
▲漢方内科の外来を担当する石田和之先生
漢方薬の中にも早く力が出るものはあります。ただし、肩こりや冷え性をはじめとする慢性的な症状は、1~2ヵ月継続して服用することで少しずつ症状が緩和していく場合が多いでしょう。長期的に服用するメリットは、主訴ではなかった部分にも良い影響がでる可能性があることです。漢方薬の服用と並行して、症状の遠因となる生活習慣の改善に取り組んでいただくことで、力の出方が早まることもありますよ。例えば、体の冷えが気になるという方で、冷たい食べ物をよく食べていたり、薄着だったりする場合は、食べ物や着るものに気を付けていただくといいですね。
- Q漢方の外来では、どのような診療をするのでしょう。
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A
▲副作用を防ぐため、問診ではアレルギーの有無を確認するという
漢方薬は、その人の体質や症状を把握した上で処方することが大切。同じ症状でも人によって処方は違い、同じ人でも年齢や季節の変化で体質が変われば薬も変わるので、必ず専門の医師がいる病院で相談することをお勧めします。当院では西洋医学でも行われる一般的な診察の後、顔色や舌を見る「望診(ぼうしん)」、声や呼吸などを聞く「聞診(ぶんしん)」、自覚症状などを確認する「問診」、脈やおなか、足を触る「切診(せっしん)」を行って状態を確認します。自覚症状が目や手であってもおなかや足に触れるので、最初は不思議な感じがするかもしれません。診察後は、薬の服用方法や期間、副作用についてできる限り詳しくご説明しています。
- Q漢方薬にも副作用はあるのでしょうか。
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A
▲問診だけでなく、腹診なども行った上で適切な診断を下してくれる
西洋薬よりは少ないですが、漢方薬も薬ですから、副作用がないわけではありません。多いのはむくみや胃もたれですね。薬や食物のアレルギーを持っていると、発疹が出たり、息苦しくなったりする場合もあります。漢方薬は体に良いというイメージがあるかもしれませんが、思わぬ副作用が表れないとも限らないので、漫然と市販の薬を飲み続けるのはお勧めできません。漢方の外来では初診時にアレルギー症状について伺っていますので、忘れずに申告してください。また、副作用に関する自覚症状がなくても、肝機能をチェックする血液検査や、尿検査は定期的に行っていただくようにしています。