畑中理院長の独自取材記事

桂歯科医院

(江東区／住吉駅)

最終更新日：2023/09/14

東京メトロ半蔵門線住吉駅B1出口から、徒歩8分。複数のクリニックが集まる医療モール1階に「桂歯科医院」はある。院内は明るく子どもにも親しみやすい雰囲気で、ほっと一息つけるような空間が広がる。完全予約制を取っており、忙しいビジネスパーソンや子育て世代でも通院しやすい環境を整えているのが特徴の一つだ。院長を務める畑中理先生は、歯科技工士から歯科医師に転身したという異色の経歴の持ち主。前職での経験を生かした入れ歯やかぶせ物などの補綴治療はもちろん、「痛くなってから治すための治療ではなく、痛くなる前に予防して健康を守る」をモットーに、予防歯科にも力を注いでいる。そんな先生にこれまでの歩み、診療におけるこだわり、訪れる人への想いなどについてじっくりと話を聞いた。

（取材日2023年8月8日）

歯科技工士の経験を生かし、地域に根差した診療を
完全予約制で誰もが通いやすい環境づくりを
患者の予防意識を高め、生きる喜びをサポート

歯科技工士の経験を生かし、地域に根差した診療を

もともとは歯科技工士だったと伺いました。

ええ。幼い頃から医療への憧れがあり、物作りや細かい作業が好きだったこともあって歯科技工士になりました。歯科技工士は1人で黙々と技工物を作るのが仕事です。やりがいはあったものの、もともと人と接することが好きだったことから、次第に「もっと患者さんとふれあいたい」という思いが強くなっていったんです。そこで、これまでの経験を生かしつつ患者さんと深く関わることのできる歯科医師へと方向転換しました。ですから、歯科医師としてのスタートは遅いんです。大学卒業後は、東京医科歯科大学で歯周病治療、歯科口腔外科、根管治療などを重点的に学び、勤務医としていくつかのクリニックで経験を積みました。

これまでの歩みの中で、印象に残っていることはありますか?

東京医科歯科大学にいた頃に、恩師と出会えたことです。歯周病の専門家として知られていた先生で、とにかく厳しい人で気軽には話すことができないような雰囲気だったのですが、補綴治療をきっかけに私のことを気にかけてくださるようになりました。もともと歯科技工士で補綴分野における知識と実績があったので、重宝がられたんだと思います。以来、先生のもとで歯周病の知識や技術を学び、その過程で得られたことは歯科医師としての財産といってもいいかもしれません。今の私の診療スタイルの基礎となっていますね。

開業までの経緯をお聞かせください。

クリニックに数年勤務した後、法人内の分院で院長を務めてから2004年に開業しました。ゆくゆくは自分のクリニックを持ちたいと思ってはいたものの、この地で開業できたのは縁とタイミングですね。当初は郷里である千葉県内で開業したいという思いもあったのですが、なかなかうまくいかず、しばらくして紹介されたのがここです。他の診療科の入った医療モールというのも私の考えにぴったりでした。患者さんはあちこちに通う必要がなく便利ですからね。こういった地域に根差した場所で医療貢献したいという気持ちが強かったので、理想に近い場所で開業できて本当に良かったなと感じます。

完全予約制で誰もが通いやすい環境づくりを

どんな患者さんが来られますか?

近所の方が多いですが、遠くから通ってくださる方も少なくありません。高齢の方からの入れ歯に関する相談も多いですね。歯科技工士時代に多くの入れ歯を作ってきましたので、噛み合わせにも十分配慮した入れ歯を監修できると自負しておりホームページで入れ歯に関する情報発信も行っています。もちろん入れ歯治療だけではなく、根管治療、予防歯科、審美歯科など幅広く対応しています。元歯科技工士としては、審美歯科も妥協できませんね。自身の経験を生かして高い技術力を持つ技工所を厳選し、色も形も細部に至るまでこだわり抜いた、天然の歯に限りなく近いかぶせ物・詰め物の提供をめざしています。

こちらならではの特徴はありますか?

完全予約制を取っており、誰もが気軽にストレスなく通えるよう環境を整えていることですね。私自身、病院などで待たされるのが苦手なので、患者さんをできる限りお待たせしないように心がけています。患者さんはさまざまな都合を割いて通院してくださっているので、時間的なストレスを感じてもらいたくないんです。診療にかける時間もしっかり管理していますから、前の患者さんが終わっていなくて待つということもほぼなく、スムーズに治療を受けてもらえると思います。そうやって待合室の混雑を緩和することは、感染症対策にもつながっています。

診療における先生のこだわりを教えてください。

「歯の健康を維持すること」、つまり予防歯科ですね。問題が起きなければ、歯を削ったり抜いたりする必要もないですから、結局、予防が一番重要なのです。また、治療が必要な場合は「徹底して行うこと」も私のこだわり。そのために、悪い部分だけでなく口腔内全体を診ることを大事にしています。例えば、治療後に再びトラブルが起こる場合は、噛み合わせが引き金になっている可能性があります。噛み合わせが悪い状態で治療しても同じことの繰り返しになりかねないので、それを整えながら根本的な問題の解決を図っていくわけです。とはいえ、中には「虫歯だけ治してほしい」という方もいますので、丁寧に説明してご自身にどこまで治療するかを選んでもらうようにしています。その上で、本当にお口の健康を望まれるのであれば、納得していただける治療をとことん追求したいですね。

患者の予防意識を高め、生きる喜びをサポート

スタッフとの連携も重視されていると聞きました。

当院は、ブラッシング指導やPMTCと呼ばれる専用機器を用いたクリーニングなど予防に注力していますし、入れ歯や審美歯科など質の高い治療を求められる患者さんが多いので、スタッフの果たす役割が大きいのです。2人の歯科衛生士はベテランでスキルも高く、患者さんへの配慮も行き届いていますし、お子さんへの食育や、高齢の方の摂食・嚥下指導にも詳しいのです。そろそろ、彼女たちの知識やスキルを受け継ぐ、若いスタッフの育成にも取り組みたいと考えています。

スタッフ教育に力を入れているのですね。

そうです。私は、歯科医師は治療だけをすれば良いというものではなく、歯科衛生士も歯科衛生士の仕事をすれば良いだけのものではない。チームで連携していろんな業務を果たすべきだと思っています。そんな方針を理解してくれる仲間を育てたいですね。私も補綴物の調整や型採りも細かく指導しますから、勉強してもらえる環境だと思いますし、セミナーなどへの参加も支援しています。また今後は高齢の患者さんも増えているのでスタッフとともに訪問診療も始めようと考えています。

患者さんと接する上で、先生が大事にしていることは何ですか?

来てくださった方に笑顔になっていただくことでしょうか。そのために、わかりやすくお伝えして不安を取り除けるよう心がけています。例えば、何をしているかわかりやすくお伝えするために、ペン型の小型口腔内カメラを活用して、常にお口の中をライブ映像でお見せできるようにしています。ご自身の状況を正しく知ることができれば、しっかりと治療に取り組もうという意識も芽生えるのではないでしょうか。治療やメンテナンス後の歯を確認し、「この歯を守っていこう」と思えたら、予防にもより積極的になれると思うんです。また、患者さんに押しつけないことも大切にしています。口腔内に潜む問題をわかりやすく伝え、歯の大切さとともに繰り返し伝えて、患者さん自身がその必要性を感じられたら、チャンスを逃さずにブラッシングなどのケア方法をお伝えします。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

どんな小さなことでも構わないので、お困りの点があればご相談ください。歯科医師と歯科技工士、それぞれの技術を持っているからこそのアプローチをご提案できるかもしれませんので、セカンドオピニオンも歓迎です。歯科疾患は、すぐに命の危機につながる問題ではないだけに、先延ばしにしたりケアをおろそかにしたりしてしまうこともあるでしょう。ですが、歯は本当に大切なものであり、口の健康は命に直結するものです。満足に噛めて食事がおいしく感じられることが、生きがいだと話される方も多いのです。それだけに、生涯の快適な生活のためには若いうちからのケアとメンテナンスがとても重要です。天然歯は何か問題が起きれば二度と元に戻ることはありませんから、歯の健康を守ることで、口の中から一人でも多くの方の生きる喜びをサポートしていきたいと思います。