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加賀山 文雄 院長の独自取材記事

加賀山歯科医院

(千代田区/神田駅)

最終更新日:2023/07/12

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院 main

JR山手線神田駅、都営新宿線岩本町駅からほど近い神田東松下町にある「加賀山歯科医院」は、開業以来100年以上にわたって、地域の歯科診療を支えてきた歯科クリニック。大通りに面したビルの2階にあり、大きな窓から自然光が差し込む診療室には、同院の歴史を象徴するオブジェとして、代々使い続けてきたユニットが手入れの行き届いた状態で置かれているのが印象的だ。そんな同院を、3代目として引き継いだ加賀山文雄院長は、歯科医師として30年以上のキャリアを持ち、多様な歯科診療に携わってきた。自身が生まれ育った街とのつながりを大切にして、町会活動にも積極的に取り組み、千代田区歯科医師会会長も務める加賀山院長に、同院の歴史や診療について話を聞いた。

(取材日2023年6月21日)

明治時代から3代続く地域に根づいた歯科医院

100年以上の歴史がある歯科医院だそうですね。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院1

1907年頃に、ここ神田東松下町で祖父が開業し、父、私と3代にわたり診療を行っています。当初は10坪もないような建物で、1階を歯科医院とし、その上に家族で住んでいました。私が子どもの頃、祖父はすでに引退していたので、父が診療を行っていましたが、2階で騒いでいると1階から父に怒られたものです。その後、移転をして現在の場所で3軒目になります。父が神田東松下町の町会長を務めていたこともあり、移転をしてもずっと同じ町内で診療をしてきました。そのため地域との結びつきは強いですね。今年2023年の5月には、神田祭でも久しぶりにおみこしを担ぎました。

歯科医師になられたのは、やはりご家族の影響でしょうか?

そうですね。親戚にも歯科医師が多かったので、子どもの頃から漠然と自分も歯科医師になるものだと思っていました。小学校の卒業文集には、将来の夢として「歯科医師」と書いていましたね。ですが、大正生まれの父はとても怖い存在でしたし、いつも忙しそうだったので、特に歯科医師に良いイメージがあったというわけではありません。私が歯科医師をめざす上で影響を受けたとすれば、7つ年上の兄からだと思います。大学卒業後は、その時すでに独立開業していた兄の歯科医院に勤めました。兄は大学病院などにも勤めた経験があり、人に物事を教えるのがうまかったので、技術的なことはもちろん、患者さんへの接し方などいろいろなことを学ばせてもらいました。現在は神田神保町で歯科医院を開業している兄と連携して患者さんを診ることもあります。

こちらの方針について教えてください。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院2

当院のような街の歯科医院は何でも総合的に行う必要があるので、何か特別なことをしたり、力を入れたりということはありません。虫歯治療と歯周病の予防をベースに大学で学んだ補綴(ほてつ)の技術を生かし、どの患者さんもなるべくきれいな歯にしてあげられるように努めています。当院の特徴として、20年、30年と長く通ってくれている方が多いので、年齢による口の中の変化を考慮しつつ治療をします。例えば、20〜30代の方であれば顎も歯も強く、固い噛み合わせに耐えられる歯の根もあるので、補綴物は少し固めの材料を使いますが、40〜60代、さらに高齢になっていくと、歯周病で歯がぐらついたり、骨が痩せたりして、詰めた材料に歯が負けて割れてしまうこともあります。その場合は金などすり減る材料に替えるなど、年齢のステージに合わせた治療を行います。

全身の健康のためにも口腔のメンテナンスは重要

定期的なメンテナンスで通われている方も多いそうですね。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院3

当院には80〜90代の患者さんも多く、だいたい月1回メンテナンスに来てくださっています。高齢の患者さんの場合、長時間ユニットに横になっていると気道が開いてむせてしまうことがあるので、例えば、1~3本ほど歯石除去などをするごとに一度体を起こして差し上げるようにします。歯だけを診るのではなく全身に視野を広げて診るなど、患者さん目線で気遣うことは心がけていますね。歯周病の治療はどちらかというと内科的な感じで、治療が終わって卒業ということがありません。改善に向かっている様子は写真などでわかりますが、手入れが悪くなったら、また元に戻ってしまったり、もっと悪化したりすることもありますから、保険適用の定期的なメンテナンスを続けていただきます。

口腔のケアは大切なのですね。

全身の健康は口腔からということは昔からよくいわれています。「歯は健康の見える窓」とか、「よい歯で よくかみ よいからだ」というような標語もありましたね。口の中をきれいにしておくと、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症予防にもつながりますし、重症化に至らないと期待できるというエビデンスも出ています。そういう報道などを目にしている患者さんたちは、以前よりも予防歯科に対する意識が高くなってきているのではないでしょうか。歯周病菌は、体に住む菌の中でもトップクラスの悪玉です。唾液から喉や気管に入り、傷があればそこから侵入して体中を巡り全身疾患につながりかねません。そういうお話は、患者さんにも伝えていますね。

先生の診療方針について聞かせてください。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院4

口腔内の治療だけでなく、患者さんがその状態に至った背景を考えます。生活環境が影響しているなら、そういうところまでケアできるように努めていますね。診療が忙しいとおろそかになってしまいがちですが、患者さんとコミュニケーションを取る中で、「もしかしたら、これがヒントになるのではないか」ということが出てくることもあります。まずは患者さんの話をしっかりと聞き、治療への希望なども伺って、お互いにベストな治療ができるように心がけています。実際の治療では、痛みに配慮した治療を心がけること、なるべく抜歯せず少しでも自分の歯を残せるように手を尽くすことを大切にしています。

人とのつながりを大切に、さまざまな地域活動にも尽力

千代田区歯科医師会の会長を務められているそうですね。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院5

そうです。千代田区には千代田区歯科医師会と、麹町歯科医師会、丸の内歯科医師会があり、それぞれ長い歴史を持っています。この神田エリアは、歴史的にも古いところで、当院もそうですが、家族ぐるみ、町会ぐるみで歩まれてきた先生が多いのが特徴です。歯科医師会では、学校の校医や歯科検診などへの協力をはじめ、地域の健康啓発活動や地域のイベントへも積極的に参画して、地域社会との絆を深めることをめざしています。具体的には千代田区との協働で、歯とお口の健康習慣事業として秋葉原で「アキバキャンペーン」を開催したり、千代田区主催のフレイル事業オーラルフレイル検診に協力したりしています。

会長として、どのような歯科医師会をめざされるのでしょうか。

行政や保健所など各方面と連携して、オープンな感じで運営していきたいですね。面白くて魅力ある組織にしたいですし、特に、大学の同窓や学閥にとらわれず、さまざまな先生に参加していただこうと考えています。最近は、歯科医師会に入らない先生も増えていますが、地域のニーズをくみとり、行政や社会に働きかけて住民の皆さんの健康に役立てるためには、やはり、歯科医師会という組織の力が必要です。個々の先生にとっても、歯科医師会に参加すれば視野が広がり、出身大学などの垣根を越えた横のつながりもできます。そもそも千代田区は、東京や日本のリーダーシップをとらなくてはならないという意識があります。千代田区の先生方が楽しく活動していれば、東京中、ひいては日本の先生が注目してくれると、そのぐらいの心意気で取り組んでいきたいと思っています。

最後に今後の展望をお願いします。

加賀山文雄院長 加賀山歯科医院6

最近は、医科の先生や薬剤師の方との交流が増えており、例えば、在宅医療を医科と歯科のチームで行うための会議などにも参加しています。まだ具体的ではありませんが、近い将来、訪問歯科へも取り組んでいこうと考えています。実際、今まで通ってくださった患者さんが、通院できなくなったというケースが少しずつ増えてきました。自分が担当した患者さんで予後がわからなくなっている方に対して、こちらから出向いていっても良いのかなと思うので、訪問歯科診療の体制を整えていきたいですね。また、この辺りは夜間人口がとても減った時期もあったのですが、この10年ぐらいの間に、集合住宅などができてファミリー層も増えました。クリニックとしての長い歴史におごらず、新鮮な気持ちで地域のニーズに応え、お子さんや若い世代にも受け入れられるようなクリニックをめざしていきたいなと思っています。

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