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武井 研二 院長の独自取材記事

武井小児科医院

(相模原市南区/小田急相模原駅)

最終更新日:2023/07/24

武井研二院長 武井小児科医院 main

小田急線小田急相模原駅近くの住宅地で半世紀以上にわたって、地域の子どもたちの健康を支えてきた「武井小児科医院」。2代目院長として小児科医療に心血を注ぐ武井研二院長は、小児科一般診療や健診、予防接種に加え、発達特性のある子どもを対象とした障がい児医療にも取り組む。また休診日には北里大学病院で外来診療を担当し、障がい児・者施設や療育機関、数々の施設の嘱託医も務める。子どもはもちろん、保護者の相談にも親身に応じ、家族ごと見守る姿勢が印象的だ。「どの子も持っている素晴らしい素質を花開かせるのが私たちの役目」と語る武井院長に、小児医療にかける思いや地域での取り組みを聞いた。

(取材日2023年3月3日)

発達特性のある子どもの診療も行う小児科

こちらは歴史のある小児科と聞きました。

武井研二院長 武井小児科医院1

父が1969年に開業した小児科です。私もこの場所で育ちましたので医師を志すのは自然な流れでした。医学生時代に障がい児童のプール教室を手伝ったのがきっかけで、てんかん患者さんや重症心身障がい児と関わるようになり、大学卒業後は北里大学病院小児科・小児神経グループで研鑽を積みました。その後相模原療育園という重症心身障がい児施設に7年間勤務していましたが、元来、地域医療に興味があり、父が高齢になったのを契機に、2009年に戻ってきました。

感染症対策も兼ねて改装したそうですね。

新型コロナウイルスの流行以降、発熱症状に特化した外来が必要になり、昨夏に院内を改装しました。診療室を増やし、感染者専用の入口も増設しています。2階には、心理師による心理検査、カウンセリングが受けられるスペースも設けましたし、駐車場も増設して、車の中でも検査・診察などができるようにしました。当院としては発熱を専門に診る外来を設けたことにより、地域の皆さんに、幅広い子どもたちに対応する小児科であると知ってもらえた面もありました。また、結果として、増設した場は個別対応が必要な特性のある子どもの診察・予防接種・待合の場としても利用中です。

診療面にはどのような特徴がありますか?

武井研二院長 武井小児科医院2

一般的な小児科や健診、予防接種はもちろん、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症などの発達特性のある子も積極的に診ています。基本的には、近隣や地域の方が中心ですが、児童相談所や子ども家庭相談課などからの紹介で来られる方もいます。地域の医院で良かったなと思うのは、大学病院と違って家族ぐるみで診療できるということです。特に患者さんのきょうだいも一緒に診ることができる点は大切なことです。例えば特性のある子をきょうだいに持つ子の中には、いろいろと悩んでいたり、思うところがあったりする子もいます。一緒に来院することで、その子にも目を向けることができ、必要があれば相談員をご紹介することもあります。

支援機関や多職種と連携して、子どもと家族に対応

障がいのあるお子さんの診療も行っているのですね。

武井研二院長 武井小児科医院3

私は、障がいというより発達特性と捉えています。発達特性のある子どもは「凹凸」があるので、欠点をしっかり診て、良いところを見出して伸ばすことが大切だと考えて診療を行っています。発達特性は、落ち着きがないとか集団生活が難しい、学力がなかなか上がらないことなどがきっかけとなって見つかります。お子さんのことを心配して、こども家庭相談課などの相談施設に行かれるご家族もいますが、学校の先生やカウンセラー、保健師さん、ケースワーカーから連絡をいただけるケースも、最近では多くなってきました。子どものことがきっかけで、親御さん自身に発達特性があることが判明することもあるので、必要があれば専門の病院をご紹介しています。

地域での連携にも取り組んでいると聞きました。

私は、休診日には北里大学病院非常勤医師として、てんかん、重症心身障がい児を対象とした外来診療を続け、障がい児・者関連施設などの嘱託医も務めています。自分一人でできることは限られていますから、多職種の人たちと信頼関係を構築してさまざまな情報を得ること、また医師だけで抱え込まず人に任せることが大切だと思っています。当院も、看護師や心理師、事務職など、さまざまなスタッフが頑張ってくれています。お子さんの背景や家庭のことも配慮しながら、児童相談所や市のシステム、発達関連施設、保育園、幼稚園、こども園、学校などと連携して、お手伝いができれば、と思っています。

診察の際には、どのようなことを心がけていますか?

武井研二院長 武井小児科医院4

患者さんと家族が安心感を持てるようにすることです。まずはしっかりお話を聞き、説明するときはわかりやすく丁寧に話すように心がけています。お子さんに対しては褒めることはもちろん、認めることが大切だと考えています。また、病気を診ながら、例えば発達は大丈夫か、家庭環境に問題はなさそうかなど、その子の家庭背景なども気にするようにしています。予防接種は回数が多いので、お子さんやご家族の様子を把握する機会にもなっています。一般のお子さんの中にもグレーゾーンのケースがあります。家族の理解が重要で、お母さんだけでなく、お父さん、祖父母などの場合も来てもらいますし、きょうだいを支えることにも力を入れています。

子ども一人ひとりの特性を見極め、より良い成長を支援

発達特性について社会の理解は進んでいるのでしょうか。

武井研二院長 武井小児科医院5

以前よりは状況が改善され、発達特性に関する社会の理解はかなり深まってきたと思いますが、今も、周囲が接し方や対応方法を知らないために、発達特性のお子さんが予防接種を受けられなかったり、医療機関の受診を断られたりすることがあります。そうしたお子さんや家庭に寄り添うための制度もあるのですが、そのことを知らないご家族もたくさんいます。発達特性のあるお子さんの場合、小学校に入学する前に適切なトレーニングやサポートを受けられるようにすることが大切だと思います。さまざまな施設や支援体制も充実してきています。当院にも相談していただいて、どのような支援を受ければよいか、一緒に悩んでいければと思います。

今後の展望について聞かせてください。

大学病院や支援施設などでの勤務や当院の診療の中で、医療的ケア児も含めて多様な子どもたちと関わり、患者さんやご家族から多くのことを教わりました。それをほかの患者さんや家庭に還元したいと考えています。また、以前は、発達特性を適切に診断して治療していかなければならないと考えていましたが、今は、診断するというよりは、患者さんやご家族と向き合い、地域をよく知り、相談できる場所をつくる、結びつける、居場所をつくることが私の仕事だと考えています。当院だけでできることには限りがありますし、さまざまな人と関わることで自分の学びにもなります。そして、当院のような地域のクリニックでも、周囲と協力し合ってできることがあることをほかの先生とも共有したいと考えています。新型コロナウイルス感染症流行下では困難なこともありましたが、新たな発見や変化もあったので、それをプラスに生かしていければと思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

武井研二院長 武井小児科医院6

どの子も、親から受け継いだ素晴らしい素質を持っています。私たちがすべきことは、その才能が花開くのを温かく見守ることだと思います。お子さんの「力」を信じること、保護者家族の皆さんが本来お持ちの「力」を引き出すことを当院のスタッフ一同、「心の糧」としたいと思います。一般的な病気のお子さんも、何かしらの特性があるお子さんのことで悩んでいる親御さんも、気軽に相談に来てほしいと思います。必要があれば患者さんに合わせて、地域のほかの先生や大学病院などをご紹介しますし、お子さん本人はもちろん、家族や地域の支援に関わる皆さんと一緒に悩み、それぞれの問題に立ち向かえればと思います。病気や発達特性のあるお子さんの親御さんには、行政の取り組みや地域のさまざまな仕組み・助成制度があることを知っていただきたいと考えています。それを知るきっかけとして、当院があればいいなと思っています。

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