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外山勝英 院長の独自取材記事

医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック

(藤沢市/湘南台駅)

最終更新日:2021/10/12

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック main

「医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック」は藤沢市北部の中心地・湘南台に2012年に開業した、透析治療専門のクリニックだ。週3回、1回4時間という長い治療時間を過ごすことに配慮された院内は、やさしい白を基調とした内装もスタッフの作る空気もとてもアットホーム。自宅からクリニックまでの送迎サービスも行っているので、高齢者にも通いやすい。院長の外山勝英先生は日本内科学会認定内科医・総合内科専門医をはじめ、日本透析医学会・日本腎臓学会の指導医・専門医で日本腎臓学会評議員でもある腎臓の専門家。クリニックのテーマの1つに合併症の予防を掲げ、安全で安心できる透析治療を実践する一方、後輩の医師や医療スタッフの育成にも力を入れている。外山院長に透析治療全般のことからクリニックの特徴、ご自身の医師としての信条まで詳しく教えてもらった。

(取材日2015年9月8日)

地元神奈川で、居心地がよく安心できる透析クリニックを

まずは院長に就任されるまでの経緯を教えてください。

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック1

出身は聖マリアンナ医科大学です。卒業後は内科全般を広く学べる第一内科に入局、研修医修了後は大学院に進みました。研究は腎臓病学を専門にしながらも、診療は幅広く行ってきました。2003年に講師になり、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院の腎臓・高血圧内科と透析療法部の診療責任者に。診療はもちろん、学生への講義は自分にとっても大変勉強になりましたね。その後、大学の医局は2006年にやめて、千葉の民間病院を経て、横須賀にある神奈川歯科大学に内科准教授として移ったのですが、ここでも腎臓病学だけでなく内科全般の診療と教育を手がけてきました。内科全体の勉強を教えるのもとてもよかったんですが、ちょうどそのころ、2007年に日本腎臓学会創立50周年記念事業として慢性腎臓病対策が取り上げられ、全国的に総合治療キャンペーンが行われました。その講演会の講師や座長として積極的に関わっていく中で「ああ俺は腎臓の医者なんだな」と改めて自覚したと言いますか。長く過ごしてきた地元・神奈川で今後は腎臓病の患者さんを診ていきたいと思うようになりました。2009年には内科教授にもなっていたのですが、2010年に善仁会グループへ思い切って移りました。横浜第一病院の副院長を経て、2012年に当クリニックの院長に就任しました。わが国の慢性腎臓病患者さんは1330万人と言われ、そのまま悪化していけば将来透析になるばかりか、その前に心筋梗塞や脳卒中などで亡くなる可能性も非常に高いので、早期の発見・治療介入が欠かせません。当クリニックは透析専門のクリニックですが、週1でグループの本院である横浜第一病院の方でも腎臓内科の診療を担当しており、少しでも透析の前段階での予防にも貢献したいと思っています。

腎臓病=透析というイメージを持ちがちなのですが、腎臓病・透析の現状はどのようなものなのでしょう。

腎臓病の多くは10〜15年かけてゆっくりと悪くなり、腎臓の機能がほとんど失われると最終的には透析が必要となります。透析導入の原疾患として最も多いのが糖尿病を原因とする糖尿病性腎症で約40%、次が慢性糸球体腎炎ですが最近は減少傾向にあり20%弱、3位の高血圧が原因の腎硬化症が約15%でこれは少しずつ増えています。ですから、透析になるまでの期間をできるだけ延ばすためには、糖尿病や高血圧の管理が非常に重要です。現在わが国の透析患者さんの数は約32万人弱、毎年3万人以上が新しく透析導入になっていますが、今後はこの数を少しでも減らすのが腎臓内科医の使命でもありますね。腎臓病の予防に最も大事なのは糖尿病や高血圧を予防することで、脳卒中や心筋梗塞などの予防にもつながります。1度透析導入になると腎移植を受けない限り生涯続けなければなりません。あまり腎移植が普及していないわが国は欧米に比べると透析患者さんに高齢の方が多いという特徴があります。全透析患者さんの平均年齢は67歳、新しく透析導入になる患者さんでは平均年齢は69歳となっており、これら高齢化はわが国ならではの特殊性と言えるかもしれません。

一生続けなければいけないものだからこそ、患者さんへの配慮が重要になりそうですね。

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック2

その通りです。血液透析は週に3回、1回につき4時間と長い治療時間がかかるものなので、まず大切にしているのはクリニックの雰囲気作りですね。堅苦しくないアットホームな空気を感じていただけるようにスタッフ全員で努力しています。同時に透析治療を行う上で非常に重要なのが、患者さんの合併症対策です。2014年のデータでは、約3万8000人の患者さんが新規に透析導入となる一方で、亡くなった患者さんは約3万1000人もいらっしゃいました。その死亡原因は1位が心不全、次が感染症で約20%、脳血管障害や心筋梗塞など心血管系疾患による死因が多いという特徴もあります。治療の快適さと共に患者さんを合併症から守ることはクリニックの重要なテーマにしています。

何より安全を重視した合併症対策

合併症対策は例えばどのようなものがあるのでしょうか。

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック3

まずは糖尿病の管理です。透析導入となる前の段階から血糖の管理が非常に重要なのは周知の通りですが、透析導入後も管理が悪いと網膜症や神経障害を引き起こしたり、さらに悪化させたりもします。何より患者さんの生命予後も悪くなります。透析患者さんの血糖管理はインスリン注射が治療の基本とされていましたが、認知症や高齢で1人暮らしなどで安全なインスリン治療が難しい患者さんもいらっしゃるし、低血糖に陥る危険もあります。それぞれの患者さんの血糖管理の程度によりますが、経口糖尿病薬への切り替えを含めて最適な糖尿病管理ができるように努めています。また、腎臓病の患者さんは貧血にもなるので、こちらの対策も重要です。治療にはエリスロポエチン注射を行い、透析患者さんに対してはこれくらいの値を目標にするという学会のガイドラインがあるんですが、普段体を使う仕事をしている人とあまり動かない人では目標にすべき値は違うのが当然。当クリニックではそれぞれの患者さんの生活背景に合わせた適正な目標値を設定して、貧血治療に取り組んでいます。

一人ひとりに合わせたケアが大事なのですね。

そうです。このほか、リンの管理も重要ですね。腎臓の働きが悪いとリンの排泄ができなくなり、高リン血症になると骨病変や血管の石灰化などいろいろな合併症が起こってきます。多くの場合、患者さんが食事でリンを取りすぎていることが多いので、なぜリンが高くなったのかをよくお話して食事制限を行ったり、必要なら薬の処方をし、定期的に管理栄養士による指導も行います。また、フットケアも非常に大切な合併症対策の1つ。透析患者さんはPAD(末梢動脈疾患)のリスクがあり、発見が遅いと足の切断に到ることもあります。そうなると当然患者さんご自身の生活の質はものすごく落ちますし、足切断に至る状態まで進んだ患者さんは生命予後が悪いこともわかっています。当クリニックにはフットケアを専門に担当している看護師もいますし、透析中でも患者さんの靴下を脱がせて定期的に足を診させていただき、少しでも異常があれば治療することを大事にしていますね。このほかにもカルニチン補充治療も積極的に取り組んでいます。

透析の装置はすべてオンラインHDF対応とのことですが、どのような特徴があるのですか?

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック4

HDFとは透析(HD)にろ過(Filtration)を加えた治療法で、従来の透析で取り除ける小分子に加え中分子にあたる老廃物も取り除けるようにしたものです。それにより何が違ってくるのかと言えば、例えば中分子にあたるβ2-ミクログロブリン という物質が取り除けることで、これが骨や内臓に溜まると起こる透析アミロイドーシスという合併症を予防できますし、頑固な痒みが改善されたりすることもあります。また、HDFにはオフラインとオンラインがあります。ろ過に専用の補液を使うオフラインHDFに対し、オンラインHDFでは補液にも透析液を使うので効率よく治療ができます。また、患者さんの中には透析中に血圧が過度に下がってしまう方もいらっしゃるのですが、そういうこともHDFでは少ないと言われてます。簡単にまとめますと、オンラインHDFを行うことで、より効率よく患者さんの身体にも負担がかからない透析治療ができるということですね。

知識や技術を地域、次世代に還元するのが医師としての使命

患者さんに接する際には、どのようなことを大切にしていらっしゃいますか?

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック5

「自分がもし患者さんだったらこういう風にしてもらいたいな」ということを考えながら患者さんの訴えを聞き、ポイントを聞き逃さないように努力はしています。認知症だと言われている患者さんに対しても、目線をしっかり合わせて、少し体に触れたりしながらお話しますと意外と心を開いて話してくれるんですよ。今も勉強中ですが、いろいろな工夫をしながら患者さんが言いたいことを言えるような雰囲気作りは大切にしています。先日、自分自身が患者として病院に行くことがあって実感したのですが、先生には自分はこんなにつらいんだということを聞いてもらいたいし、何よりも優しくしてほしいんですよね。それは忘れてはいけないなと思います。

グループ内のほかのクリニックや地域の病院との連携について教えてください。

グループの中の1クリニックなので、本院である横浜第一病院や県下に点在するクリニックとのつながりはもちろんで、お互いに助け合います。藤沢市民病院や湘南鎌倉総合病院などこの地域における基幹病院との連携は大切にしています。基幹病院の先生方が主催される勉強会や講演会には私もスタッフと一緒に積極的に参加しますし、特に講演会は大切。そうやって普段から基幹病院や地域の先生方と顔を合わせて信頼関係を作っておくことで、いざ自分のクリニックの患者さんが、大切な患者さんが具合が悪くなった時には信頼できる先生に頼みやすいですからね。また、基幹病院で透析導入した患者さんを、こちらで引き受けて維持透析治療を行うことも多くあります。

大学時代はアメフト部。そこでの経験がその後の役に立っていることも多いのではないでしょうか。

外山勝英院長 医療法人社団永康会 湘南台じんクリニック6

そうですね。アメフトも医療もチームで行うものなので、クラブ活動が教えてくれたものは多いと思います。何より1年生のオープン戦から6年生の秋のリーグ戦は卒業試験の真っただ中でしたが試合に出させていただきました。6年間アメフトを最後までやり遂げたことはまず自分自身の自信につながりましたし、あんなつらいことってたぶんないですからね(笑)。今の私の信条になっている「Mastery for service」という言葉も、アメフトを通じて出合ったものです。私が大学3年生の時に日本大学対関西学院大学の甲子園ボウルをテレビで観て、きっと泥臭い練習をたくさんやっているのでしょうが、試合では実にスマートにカッコよくプレーする関西学院大学のファンになりました。 Mastery for serviceはその関西学院大学の校歌の一部にあるのですが、同校のスクールモットーのようです。「奉仕のための練達」と訳されますが当時は意味はよくわからず、ずっと後になって医師として自分の座右の銘というものを考えた時に、これだなと思いました。私たち医師は日々勉強して知識と技術を学び、また人間形成にも努めないといけない、これが「Mastery―練達」ですね。それは自分のためだけではなくて「for service―奉仕のため」であって、患者さんはもちろん、後輩の医師や看護師・臨床工学技士などのスタッフの育成や地域での講演会などを通じて社会全体に還元しなければならない。それを信条に、腎臓学会の評議員としては腎臓専門医の育成に、他にもスタッフの育成、地域での研究会や講演会の開催なども積極的に手がけ、学んだものを地域の先生方やコメディカルのみなさんに伝えていくことに力を注いでいます。

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