境 洋二郎 院長の独自取材記事
横浜クリニック
(横浜市西区/横浜駅)
最終更新日:2024/10/30

多くの路線が乗り入れる横浜駅西口から徒歩5分ほど、地下街経由でのアクセスも可能な通いやすい場所に「横浜クリニック」はある。ビル7階のクリニックは2面に大きく窓がとられ、明るく開放感あふれる雰囲気。最奥に設けられた明るい診療室で、2022年3月に院長に就任した境洋二郎院長が迎えてくれた。「精神不調やそこからくる体調不良で生活上の制限が出ている方を助け、生活の改善に役立ちたいと考えています」と、優しい笑顔で語る。脳への興味関心から精神医学の道に進み、パニック症への認知行動療法についての研究実績も豊富に持つ境院長に、同院での診療やそれにかける想いなど、詳しく話してもらった。
(取材日2022年4月7日/情報更新日2024年8月1日)
パニック症や社交不安症を中心に、働き盛り世代を診療
まずはご経歴と院長就任の経緯などを伺えますか。

筑波大学医学専門学群を卒業後、国立国際医療研究センター、横浜労災病院を経て、東京大学大学院でストレス防御・心身医学、いわゆる心療内科の研究にあたりました。パニック症の方を対象に、脳内の糖代謝の状態を測定するといった研究で、不安症の方に特有の脳の動きや認知行動療法の前後での変化などを調査していました。その際に被験者を募らせていただいたのが当院と同じく貝谷久宣理事長による「医療法人和楽会」に属する「赤坂クリニック」でした。そこから法人とのご縁がつながり、カナダのマギル大学や福島県立医科大学、横浜労災病院心療内科副部長などを経て、2014年より「赤坂クリニック」での診療に携わるようになりました。週に1回「横浜クリニック」での診療も行ってきましたが、前院長の退職にあたり当院の院長を務めさせていただくことになりました。
どのような患者さんが多くいらしていますか。
10代から70代あたりまで幅広い層の患者さんにご受診いただいていますが、多いのは20〜40代のいわゆる働き盛り世代で、男女の偏りなくいらっしゃる印象です。場所柄、病気を持ちながら就労を続けている方、あるいは一時的に休職し、治療しながら復職をめざしている方がたくさんいらっしゃいます。他に、学生や主婦の方の受診も多くあります。神奈川随一のターミナルである横浜駅に近いという便利な立地から、近隣エリアに限らず、遠方からも多数ご来院いただいているようです。
どのようなご相談があるのでしょうか。

パニック症や社交不安症といった不安症と診断されるケースが多いのですが、症状は人によってさまざまです。パニック症では、突然のパニック発作を繰り返し経験し、また発作が起きるのでないかという予期不安を持ち、電車やバスなどの乗り物、美容院や歯科医院、人混みなどに行けなくなる広場恐怖の症状を伴っている方、うつ症状が併存している方などがいらっしゃいます。社交不安症では人前でのスピーチ、目上の人や初対面の人との対話の場で、不安・緊張や発汗や震え、動悸などの症状で苦しみ、生活に支障を来されています。うつ病では、気分の落ち込みや興味や喜びの低下、悲観的な思考、思考力・集中力の低下、食欲不振、睡眠障害やさまざまな身体症状が続いています。背景に発達障害の特性をお持ちの方もみられます。いずれにしても、症状により仕事や勉学、家庭生活に支障を来され、通常の社会活動を送ることができなくなることが問題です。
薬物療法と認知行動療法を組み合わせ、生活制限改善へ
こちらのクリニックではどういった診療を行っていらっしゃいますか。

パニック症や社交不安症といった不安症を専門としており、薬物療法と認知行動療法を組み合わせて治療を展開しています。不安症の多くで薬物療法や認知行動療法が有用ですが、病態によって適切な治療の組み合わせは異なります。突然のパニック発作や持続的な不安を抑えるために定期的な薬物療法を行いながら、適切な認知行動療法的な取り組みを合わせて行うことで、生活制限の改善をめざしていくのです。
認知行動療法ではどのようなアプローチがありますか。
例えばうつ病では物事の捉え方の癖が影響していることがあり、自らの捉え方の癖に気づき、多様で柔軟な捉え方をしていけるように導いていきます。薬物療法で継続的な症状の改善をめざし、ある程度落ち着いた段階で、再発予防を目的として行うケースが多くなっています。パニック症の予期不安や広場恐怖、社交不安症では、不安や恐怖の条件づけがなされていて、不安・恐怖やそれに伴う身体症状が出現します。病態を理解しながらエクスポージャーを中心とした行動療法を行うことが大切です。乗り物や人混み、人前など、恐怖条件づけされた場面で、条件づけられた症状が出ても、焦らず良しあしを決めず、つらい症状が一時的に高まっても、時間経過の中で落ち着くまで待つなど慌てず対応することを繰り返していくと、徐々に条件づけが消去され、予期不安が減り、行動の制限が取れ、できることが増えることが期待できるなど、生活の質の改善に役立つと考えられます。
こちらには複数の医師と臨床心理士が在籍されていますね。

現在、私を含む医師11人と4人の公認心理師・臨床心理士が在籍し、診療にあたっています。いずれも経験豊富な人材であり、また複数人在籍していることで相性の合うスタッフにお任せいただくことも可能です。当院は完全予約制であり、初診の際にも電話やウェブで予約を事前に取っていただいています。治療の質を高めるためにも定期通院していただくことを基本方針としていますので、通いやすい曜日を選んでご予約いただければと思います。曜日ごとの診療時間と担当医をウェブサイトで公開していますので、担当医師を選んで予約することもできます。不安症やうつ病では一人の医師が継続して診るほうが良いことも多いため、ぜひご活用いただければと思います。
機関との連携も視野に働く人のメンタルヘルスに注力
院長が精神科・心療内科の医師を志されたきっかけは?

もともと人間の脳の働きに興味があり、医学の道を選択しました。大学在学中や卒業後に、横浜労災病院心療内科で実習や研修をした際に、研究のみでなく臨床で一般的な働く人などをサポートしていきたいと思うようになりました。当時抱いた想いが現在の診療にもつながっています。
休日の気分転換法などあれば教えていただけますか。
コロナ禍の現在は難しくなってしまいましたが、旅行でしょうか。事前にいろいろと計画を立てたり、またはあまり計画を立てないままに、実際にいろいろな交通機関を使って出かけるのが好きです。福岡県出身で高校卒業まで九州で育ったのですが、それまでは地図上でしか知らなかった土地を、大学入学以降、実際に訪れ、自然や文化、その土地の名物などを楽しんでいます。
新型コロナウイルスの流行を受け、診療上感じられたことなどありますか。

個人差は大きいようですが、入学に際し地方から上京した学生や、新卒で社会人1年目の方など、授業や研修が慣れない環境の中、オンライン中心となってしまったことで不調を抱えてしまう方は見受けられました。また、反対に在宅ワークが中心となって通勤や煩わしい対人関係が減り、楽になったという方も、不安症の方には見られます。在宅ワークでは仕事を始めるにも終えるにもオンオフの切り替えが難しかったり、コミュニケーションの取りづらさが生じたり、生活リズムを崩してしまったり、運動不足になりやすい傾向があります。始業と終業のオンオフの切り替えを意識して、適度な運動や人との交流も取り入れながら過ごすことが大切です。また、間隔が開いて久しぶりにもともと不安のあった乗り物に乗ったり、対人関係を持ったりする際には、不安が高まるのが一般的ですので、そのことで増悪したと焦らず、徐々に慣らしていくことが良いでしょう。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
クリニックの近辺には、公的機関も含めて就労支援などを行う場が多くあります。そうしたサポートともうまく連携しながら、皆さんの生活改善に役立っていければと考えています。不安症やうつ病の治療、働く方のメンタルヘルスに取り組んでいます。環境調整や休養、薬物療法、認知行動療法、特性を踏まえた生活指導など、さまざまなアプローチを通して、つらい病状の改善や、休職からの復職や新たな就労をめざす方もサポートしたいと考えています。それぞれの方が安定した生活を送れるよう支援してまいります。お困りのことがあればぜひご相談ください。