加藤 景介 院長の独自取材記事
けやき内科
(名古屋市名東区/一社駅)
最終更新日:2024/09/13

名東区猪子石原の住宅地にある「けやき内科」。名東区のシンボルツリーであるケヤキのように、地域にどっしりと根づいた医療をとの思いから2009年に開院した。2024年1月には老人ホームとの連携を開始し、在宅酸素や人工呼吸器が必要な患者に対応するなど高齢者医療にも注力。多職種と連携しながら地域に必要な医療を届ける同院の院長は、呼吸器内科を専門とする加藤景介先生だ。診療方針は、検査体制を充実させて確実な医療につなげること。マルチスライスCT、肺機能検査器、一酸化窒素測定器などの先進検査機器を導入して、精密な臨床検査に努めている。加藤院長の診療に対する思いや院内の設備について聞いた。
(取材日2024年7月3日)
検査体制を充実させて、確実な診断と治療につなげる
落ち着いた雰囲気の院内ですね。

クリニックを設計する際、世界的な建築家の建築をイメージしてデザインしてもらいました。木や石などを多様した彼の有機的な建築が好きで、今年開設した老人ホームも彼の作風をイメージしてデザインしてもらったんですよ。院内は、ブラウンの家具や木製ブラインドなど落ち着いた色調のインテリアで統一しています。空間を広くするために天井を高くしたものの、完成してみると、冷房が効きにくいことが判明しました。そこで2つのシーリングファンを天井に取りつけたんです。それがゆったりした空間を演出し、カフェのような雰囲気にもなっていますね。冬には、暖炉風の暖房機器が活躍します。まきの炎が揺れて温かみを演出するんです。ウォーターサーバーや無線LANもご利用いただけますので、待ち時間もゆったりと過ごしていただけます。
先生が医師をめざされた時のことを教えてください。
私の父は消化器内科の医師で、幼い頃は夜中に急患で呼び出しがあったり、私の体調不良時に職場の病院へ連れて行ったりしてくれました。医療が身近だったということもありますが、きっかけは中学生の時です。学校の先生が血管の病気を発症し、それでも立派に教壇に立つ姿を見たことでした。後遺症で思うように黒板の字を書けないことは、先生ご本人が一番つらかったと思います。そんな姿を見て私は、病気で生活や仕事が制限されてしまう方々の力になりたいと考えるようになりました。医師になってからは、地元の公立陶生病院で研修する中で呼吸器疾患に関心を持つようになりました。瀬戸市は陶磁器産業が盛んで、粉塵による影響か他地域に比べて呼吸器疾患が多く、肺炎や肺結核といった感染症、気管支喘息やCOPDといった慢性疾患、在宅酸素や人工呼吸器を必要とするような呼吸不全など、呼吸器疾患の幅広い診療に携わりました。
診療方針について教えてください。

風邪症状を訴え、風邪薬の処方希望で来院される方も時にいらっしゃいますが、症状をお聞きしただけで風邪薬を処方するようなことはしません。患者さんが風邪と思っていても、実際には風邪ではなく肺炎や喘息などの呼吸器疾患が隠れていることもあるからです。常に隠れた疾患を見逃さないよう、詳細な検査を行うことで、適切な診断と治療につなげられると考えています。例えば咳が1ヵ月以上も長引く場合には、胸部エックス線検査や血液検査、肺機能検査以外にも、呼気NO測定、呼吸抵抗測定、喀痰検査、CT検査などの精密検査も必要に応じて行っています。
遠方からも呼吸器疾患の患者が来院
どんな患者さんが来院されていますか?

呼吸器疾患については名古屋市内だけではなく豊田市・岡崎市・岐阜県など遠方からも来院されています。他院で治療しても改善が見られないといった相談で来院されるケースですね。最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症で咳が治まらない方が増えました。来院された患者さんへは呼吸器専門のクリニックとして、しっかりと精密な検査をして診断をしています。呼吸器疾患の中で多いのは、気管支喘息の患者さんですね。定期的な通院が必要な病気ですので、10年以上通院されている患者さんもいらっしゃいます。もともとは喘息で通院されていた方が、年齢とともに高血圧症や脳血管障害を患うことが増えてきました。開院してこの十数年の間に患者さんの病気も変化していますから、生活習慣病も含めた呼吸器疾患以外の病気も包括的に診ています。
アレルギー疾患やCOPDの治療にも注力されているそうですね。
気管支喘息の半数強はアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患を併発し、それらを含めて治療をしていかないと改善が望めない場合も往々にしてあるので総合的に診ています。一方COPDは喫煙などに伴う慢性疾患で、生活習慣病の一つです。日本でもたくさんの患者さんがいると考えられていますが、治療を受けている人はわずかであることが問題視されています。その是正のためにも当院でも「禁煙の外来」を予約制で設けています。タバコをやめることに重点を置くというよりも、肺機能検査で喫煙による健康被害を把握した上で、張り薬や飲み薬なども使って禁煙のサポートをします。
呼気や喀痰検査など細かな検査も可能ということですが、その他の検査についても教えてください。

臨床検査技師と放射線技師が常駐し、総合病院と同等水準の検査体制を整えています。肺の機能をより詳細に検査する際に使用するCTは、マルチスライスCTを導入しました。撮影時間が短いので、被ばく量も少ないのが特徴です。高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の診断には欠かせない、HbA1c、生化学、血算などの血液検査についても、当日に結果が出せます。また、病状把握に有用なCAVI(血管年齢)測定器なども導入しています。
わかりやすい説明と患者の希望に寄り添った対応
診察の際にはどんなことに気をつけていますか?

易しい言葉でわかりやすい説明を心がけています。昨今は、高齢の方でもインターネットで調べた情報をメモして来院される方が多いのですが、中にはその情報を誤解されていることもあるのです。書いている内容は医学的根拠に基づいていても、患者さんの理解がずれている場合には、患者さんの状況にあてはめて誤解を訂正することも必要になります。時間はかかりますが、患者さんが適切に理解したり、患者さんが何を求めてどうしたいのかをすり合わせたりするためには、コミュニケーションは大切です。患者さんが私の話に納得されていない様子の時には、どうしてそう思うのかを確認するのですが、そんな時患者さんは「インターネットにはこう書いてあるんです」と言われることが多いです。「副作用が怖い」と不安を感じているのであれば別の薬を提案するなど、臨機応変に対応していますので、疑問があれば私でも看護師でもいいので遠慮なく伝えてほしいですね。
訪問診療も行っているそうですね。
高齢になって通院が困難になった患者さんの訪問診療や、在宅での酸素吸入と人工呼吸器の導入・管理も行っています。高齢者医療の問題として、酸素吸入や人工呼吸を導入されている患者さんが施設に入所しようと思っても、受け入れてもらえる施設が少ないのが現状です。私は呼吸器内科の医師として、そういった患者さんの受け皿が必要だと感じ、老人ホームを開設しました。基本的にクリニックで診療している以外は、老人ホームにいることが多いです。以前は、休日には市民ビックバンドでトロンボーンを演奏していましたが、なかなか時間が取れず辞めてしまいました。時間に余裕ができたら、この老人ホームで演奏会を開くのもいいですね。高齢者医療に携わっていると、医療だけではない精神的な生きがいや楽しみの大切さを実感します。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

今後は、自動会計システムなど医療のデジタル化も進めたいですね。オンライン診療やオンライン処方箋など医療の簡便化も加速していますが、その一方で、医師と対面で話したり検査したりと、リアルで向き合うことでわかることもたくさんあると思います。患者さんご自身はたいしたことはないと思っていても、検査をしてみると状態が悪くなっているケースもあります。特に喘息ではそういった症例をよく耳にします。自分の感覚だけでただの咳と判断せず、医師と対面して、今ある症状についてしっかりと検査してもらうことが大切です。院内感染対策については開業時から定期的に勉強会を行い、全職員の感染症対策への意識向上に努めています。新型コロナウイルス感染症が5類移行しても変わらず標準感染予防策を行い、発熱患者さんは分けて診察していますので、安心してご来院ください。