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埴 英郎 院長の独自取材記事

愛生歯科

(世田谷区/下北沢駅)

最終更新日:2022/06/17

埴英郎院長 愛生歯科 main

京王井の頭線・小田急線の下北沢駅南西口から、商店街を抜けて茶沢通りを徒歩10分。代沢小学校前交差点を右折、左手に出てくるのが「愛生歯科」だ。現院長の埴英郎(はに・ひでお)先生の母が1959年に開業、以来60年以上、地域に根づいて診療を続けてきた。大学で研究者として働いていた埴院長が、同院を継承したのは1995年。以来、研究者時代の実績を診療に生かし、金属アレルギーに苦しむ患者の治療に取り組んできた。新しい機材や研究を積極的に導入する研究者気質、丁寧で静かな語り口で、仕事にも人柄にも誠実さがにじむ埴院長に、クリニックの診療内容や、歯科材料が影響する金属アレルギーとそれに対する取り組み、診療方針について話を聞いた。

(取材日2022年3月15日)

耐久性を追求し、誰に見られても恥ずかしくない治療を

診療方針を教えてください。

埴英郎院長 愛生歯科1

歯科治療は1回で終わるものではなく、手入れを重ねながら生涯を通じて行うものと考えています。歯は一度削ったら元には戻りませんし、削った分だけ脆くなってしまいます。繰り返し治療が行えるように、必要以上に削ったり抜いたりせず、最小限の侵襲で治療しています。特に神経のある所は空洞になっているので、外側を削ると歯質が薄くなり、強度が落ちるため削らないほうがいいですね。神経に近くなると、後々神経が死んでしまうこともありますから、壁は厚く残っているのが望ましいのです。だからといって、虫歯を残した状態で治療を終了してかぶせ物を固定したら、今度は中から進行してしまいます。そのような治療では、最初は神経が生きていても、後で必ず症状が出てきますから、虫歯の取り残しはないようにしないといけません。できるだけ削らない治療は、このあたりの兼ね合いが難しいところです。

治療の際に工夫していることは?

患者さんには、今行っている治療やこれから行うことを逐一説明しながら治療を進めています。その際、口腔内カメラで撮影したお口の中をお見せしながら話し、治療前後の写真も見比べていただくようにしています。口腔内カメラでは奥歯まではっきりと映すことができます。最近は患者さんの意識が高いようで、定期的にメンテナンスにおみえになる患者さんも増えてきました。昔は虫歯がひどくなってから駆け込んでくる患者さんが多かったのですが、今は少なくなりましたね。

日頃から心がけているのはどんなことですか?

埴英郎院長 愛生歯科2

歯科治療というのは痕跡が残る治療ですので、どういう治療をされてきたのか、治療された歯が何年かたつとどうなるのかが、後から診た歯科医療者にはっきりとわかります。良い治療をしていれば長く持ちやすく、虫歯がひどかったら長く持たないなど、患者さんの経過を目の当たりにすることになります。自分のした治療が10年後、20年後はどうなっていくかの予想もできますので、しっかりと長く持つ治療をしないといけない、とわかるのです。手を抜いた治療をすると、後年、患者さんが戻ってきたときに、私自身にもツケが回ってきます。後になっても、どこの歯科医師に見られても、恥ずかしくない治療をしようと心がけています。

歯科材料による金属アレルギーに早くから着目

クリニックの特徴を教えてください。

埴英郎院長 愛生歯科3

当院では歯科材料による金属アレルギーの対応を行っています。皮膚科でのパッチテストにより、金属アレルギーと診断された患者さんのかぶせ物や詰め物に使われている金属をわずかに削って成分を分析し、どんな金属が使われているか調べます。それにより、アレルゲンとなる金属元素を検索し、アレルゲンの含まれている部位を特定します。基本的に歯科材料は安全性に配慮されたものが使われていますが、お口の中の過酷な環境ではどんな金属でも少しずつ溶け出します。それが金属イオンとなって体内のタンパク質と結合することでアレルゲンとなります。特にニッケル、コバルト、水銀などはアレルギーを起こしやすく、チタンや金などは起こしにくいといわれていますが、まれに陽性を示すこともあります。金属アレルギーのある方は、歯科材料だけでなくピアスやネックレスなどでもアレルギーを起こすことが多いので、該当する方はご注意いただきたいですね。

歯科材料による金属アレルギーに早い時期から着目されていたそうですね。

大学に勤務していた1987年頃、歯科で使用する金属の腐食をテーマに研究をしていました。保険治療で新たに導入が決まった金属の安全性に疑問の声が上がり、その安全性を検証するための研究に取り組んでいたのです。当時、知人の皮膚科医から「歯の金属を外した後にアレルギー症状の改善につながった患者がいるので、金属の成分を調べてもらえないか」と相談を持ちかけられました。分析してみると、パッチテストで陽性反応を起こした成分が含まれていました。ここから歯科の金属アレルギー研究が始まり、皮膚科と連携して、当院で分析と金属アレルギーに配慮した補綴治療を始めることになりました。さらにその後、東京医科歯科大学にアレルギーを専門に扱う外来ができ、そちらでも診療することになったという経緯です。

患者さんはどのような方が多いですか?

埴英郎院長 愛生歯科4

関東とその近県から来られている方もいますが、基本的には地域の患者さんが中心で、虫歯や歯周病など一般的な歯科診療を希望される方が多いです。当院は私の両親が開業して60年以上になりますので、昔からかかりつけにしてくださっている患者さんがほとんどです。母校である代沢小学校の子どもたちや、私の同級生、その家族など、親子で通ってくださる方もたくさんいらっしゃいます。また、神奈川県の介護施設に月2回、訪問診療に伺っています。私は、歯を失ったときに機能の改善や見た目の修復をめざす補綴を専門としています。補綴治療とは、取り外し可能な義歯や固定性のブリッジ、かぶせ物による治療のことをいいますが、中でも入れ歯は違和感で苦労する方も多いので、患者さんに快適な噛み心地を提供するため、力を入れて取り組んでいます。

地域の信頼を裏切らず、時代を越えてつながりたい

歴史あるクリニックですが、改めて開業の経緯を教えてください。

埴英郎院長 愛生歯科5

当院の開業は1959年で、母が開業し、私が引き継いだのは1995年です。開業した1959年は私が生まれた年なんですが、私が産まれる半年ほど前に開業したと聞いていますので、私はクリニックと一緒に育ってきたともいえますね。以来ずっとこの場所ですが、建物は1970年くらいに建て替えました。父は大学で研究していた歯科医師で、父も定年退職後はここで診療をしていました。両親ともに歯科医師でしたから、私も物心ついた時から自然とこの仕事を志すことになりました。子どもの頃から診療室に出入りしていて、治療器具を眺めるのが大好きでしたし、手先を使う細かい作業も好きだったので、歯科医師の仕事を志して良かったと思っています。

待合室の水槽を見ていると心が和みますね。

あの水槽も母の時代からずっとありますね。母は淡水魚を飼っていましたが、私は色が鮮やかな海水魚を飼うことにしました。最初は熱帯魚の専門店にメンテナンスを頼んでいたのですが、その様子を見ていたら、自分でやりたくなってしまって、自分でも手入れしています。今はコンゴウフグ、クマノミ、それとシリキリスズメというスズメダイの仲間がいます。このコンゴウフグが人懐っこくて、私が診療していると、水槽の中から見ているんですよ。外から帰ってくると、入り口をじっと見ているので目が合ったりします(笑)。餌がほしいときはすごくアピールをしますし、追いかけてくるからかわいくて、ついつい餌をあげてしまいます。患者さんからの評判も良くて、しゃがみこんで話しかけている方もいます。

今後の展望をお聞かせください。

埴英郎院長 愛生歯科6

当院には両親の代からかかりつけにしてくださる患者さんも多く、私が小さい頃からの顔なじみの方たちばかりです。歯科医師と患者さんという関係よりも、ご近所同士という感覚が強いかもしれません。だからこそ、地域の皆さんの信頼を裏切るような治療をしてはならないですし、絶対に手抜きはできません。私の長男も歯科医師になり、研究者として働きながら診療もしているので、将来は後を継いでもらいたいですね。そうすれば、私が引退しても長く患者さんの治療をお引き受けできます。歯科医療においては、経緯を把握し、継続して治療を行うメリットはとても大きいのです。いつどんな治療をしたかわかっていれば、その後の治療に生かすことができますから。歯科医師も患者さんも、時代を越えてつながっていけるクリニックでありたいと思います。

自由診療費用の目安

自由診療とは

金属を使わない補綴治療/5万5000円~

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