全国のドクター9,186人の想いを取材
クリニック・病院 158,624件の情報を掲載(2024年4月26日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 世田谷区
  4. 九品仏駅
  5. 小口整形外科
  6. 小口茂樹 院長

小口茂樹 院長の独自取材記事

小口整形外科

(世田谷区/九品仏駅)

最終更新日:2021/10/12

小口茂樹院長 小口整形外科 main

骨粗しょう症や変形性膝関節症の治療経験が長い小口茂樹院長が1993年に開業した「小口整形外科」は、東急大井町線九品仏駅から徒歩8分の環八通り沿いにある。待合室を入ると、マクロレンズで撮影された美しい花に目を奪われる。なんと、小口院長が撮影したものだという。本業ではない花の撮影でこれほどの腕前であれば、レントゲン撮影はどれだけ精密に行うのだろう。思わずそんなことを考えてしまうほどうっとりさせられる写真だ。小口院長は「フィールドで撮るのが花に対する礼儀だと思う」と話し、「機械は100パーセント理屈だが、医療はそうではない」とも言う。命あるすべてのものに心を感じて寄り添おうとする、優しい医師だ。そんな小口院長に、専門としてきた運動器の老化の予防法や治療における心がけを伺った。

(取材日2015年7月18日)

大学病院では診てもらえない患者にもクリニックではしっかり向き合う

開業前は長年、大学病院などに勤務されていたと伺いました。

小口茂樹院長 小口整形外科1

群馬大学を卒業後、横須賀米国海軍病院を経て東京女子医科大学整形外科学教室に入局しました。そこでは、骨粗しょう症における骨塩定量の方法を主に専門にしてきました。骨粗しょう症では骨の量が大事だと言われていましたが、質も大事だということを提案しました。骨の量というのは、建物でいうとコンクリートの量です。柱や床、壁などにコンクリートが使われますが、間仕切り用の壁などは強度には関わっていないでしょう。強度をチェックするなら柱のコンクリートを見ないといけない。骨の質をどう見分ければいいかを専門にしてきました。また、それまではレントゲン写真から主観的に判定していた骨の量が、骨塩定量によって客観的に評価できるようになりました。内科や婦人科などレントゲン写真で骨の量を読めなかった先生も数値で読めるようになったのです。

骨の量が多いからと安心していてはいけないのですね。

船が正しく設計されても、溶接が一箇所間違っていたらひびが入り、部分的な欠陥が積み重なるともろくなって沈没してしまいます。骨折も同じです。では、骨の質をあげるにはどうしたらいいか。何よりも運動が大切です。まずは歩くことが基本中の基本ですね。でもそれを日常にすることが難しくて3日坊主になってしまうなら、ジムに通うなども手でしょう。私は近くに住んでいるので、時間があるときは歩いて通勤するようにしています。でも時間がない日も多い。そういうときは、お昼休みを活用します。近所の九品仏商店街に出るのではなく、一駅離れた片道20分くらいの自由が丘にお昼ごはんを食べに行くなど工夫しています。

このエリアのご出身なのですね。開業のきっかけはどのようなことだったのですか?

小口茂樹院長 小口整形外科2

私が大学にいたころ、整形外科での主流は人工関節でした。一方で、私の専門は骨粗しょう症や変形性関節症。つまり主流ではなかったので、大学ではないところで自分の道を探そうかなと思ったんです。変形性膝関節症の患者さんは非常に多いのですが、病気かというとそうではない。老化現象なんです。だから、大学病院では治療してもらえず、結局、診療所に戻される。でも、体重がかかるところがすり減るから、とても痛いんですよ。そういう方も、今は当院で治療できるようになりました。患者さんは近隣にお住まいの高齢の方がほとんど。この辺の方はお話をきちんとすれば理解してくださる、いい方ばかりなんですよ。また、外国人の方もたまに来られます。私は大学を出てから横須賀米国海軍病院で米軍を診察していたので、英語での診察も行っています。

画像ではなく患者さんと向き合う、部位だけでなく周りも診る

院内の設備にはどのようなものがありますか。

小口茂樹院長 小口整形外科3

まずは骨を確認するためのレントゲン。当院では立ったまま撮影します。横になって撮影するクリニックもありますが、腰や膝は、体重がかかって機能した状態を確認しないと意味がないと考えています。ですから、人は立ったままで受け、レントゲン装置が撮影部位に合わせて回転します。次に複数ある治療機器ですが、目的はすべて同じ。筋肉を温めて血流を良くし、炎症や疲労を洗い流すことです。まずは超短波。理屈は電子レンジと同じで、電子レンジの1000分の1ほどの熱で筋肉を温めていく機器です。ウォーターベッドは水圧でボコボコと刺激していくもの。昔のげんこつみたいなものでゴリゴリとしていた機器に対し、痛みがなく好評ですね。それから縮んだ筋肉を引っ張って伸ばす牽引装置や低周波治療器などを導入しています。

心がけているのはどのようなことですか。

画像を診るのではなく患者さんをしっかり診るということですね。日常生活を含めて患者さんを診ることが大切。また、なぜ痛みが起きているのかという理由もしっかり話しますね。例えば股関節痛の訴えは、股関節の周囲の筋肉が痛みを引き起こしていることが多いのです。老化現象を起こした膝を保護しようと筋肉が必死になる。その筋肉が股関節に付いているから痛みが出る。「これは膝からきている痛みですよ」と膝の治療をしてあげれば治るんです。そういうメカニズムを説明すれば、患者さんも納得してくれますからね。最近の若い先生は画像だけを見て「股関節は問題ありません」と診断することがあるようですが、その部位だけ診ていては不十分なんです。

院長も痛い思いを経験したことはありますか。

小口茂樹院長 小口整形外科4

私にも下腿骨折の経験があります。痛い思いもしましたが、治る喜びも体験しました。患者さんが「年寄りだから、しょうがない。」と言いながらも来院するのは、やっぱり痛みを取り除きたいからなんですよ。痛みはなってみないとわからない。だからそれを治して日常生活や仕事に復帰できると、患者さんはとても喜びますよね。そんな姿を見るとやっていてよかったと思います。

とにかく体を動かすことが骨粗しょう症予防の第一歩

医師をめざした理由を教えてください。

小口茂樹院長 小口整形外科5

もともと理系だったんです。中学の頃からアマチュア無線にはまっていた。親父が造船関係の仕事をしていたこともあり、物を作ったり計算して設計したりすることに楽しさを感じていました。どう間違って機械が人間に変わったか、医療の道に進みました。機械は100パーセント理屈だけど、医学はそうではないところが面白さですね。例えば新しい薬の治験では、二重盲検といって、誰にもわからないように偽薬と本当の薬を患者さんに渡し、何割の人が本当の薬で改善したかをみます。では偽薬をもらった人の改善がゼロかというとそうでもない。気持ちも相当なファクターだったりするのです。それは機械にはあり得ない。だから医学は純粋科学ではないかもしれないが、それだけに深みもありますよね。

大学時代はどのようにお過ごしでしたか。

群馬大学時代は、馬小屋に住んでいたようなもんです(笑)。馬術部でしたから。馬たちは元競走馬だったから、前に前に出ようとするんです。なんとかして制するには、私のように体重が重い方がいいんですよ(笑)。バランスをとって乗るのはなかなか難しい。反射神経が一番鋭いのは馬術の選手だっていうくらいですからね。人馬一体というところまではいきませんでしたが、楽しかったですね。

お忙しい中、休みの日はどのようにお過ごしですか?

父親が亡くなってから、庭の手入れを引き継ぎました。コケとシダを育てています。きれいにするのは容易ではないんですよ。落ち葉が載っているだけで腐ってしまう。適度な湿気と日当たり、雑草対策がポイント。最近、面白く感じてきましたね。あとは写真かなあ。買ってきた花を室内で撮影するんです。きっかけは、患者さんとゲッカビジンが咲いたという話になった時、うちにも咲いたからと撮った写真を待合室に飾ったこと。以降、「次は何の花」と期待されるようになって(笑)。本当はフィールドで撮るのが花に対する礼儀だと思うのですが、撮りに行く時間はなかなかと取れなくてね。

最後に、今後の展望とメッセージをお願いします。

小口茂樹院長 小口整形外科6

年を取ってくると頭が固くなってきますね。整形外科の専門医資格を維持するために講習会に出ないといけないのですが、ついこの間までは自分より年上の人が講師だった。でも、今は40歳前後の医師が講師。そういう人から新しい治療法をもらって自分のものにしなくてはいけない。新しいことを吸収するのが難しくなってくる年齢ですが、フレッシュな治療法を取り入れ続ける努力はしていきたいと思っています。新しいものを取り入れた方が面白いですしね。患者さんには、とにかく体を動かし続けることの大切さを伝えたい。何歳になったら骨粗しょう症の検査をするとかカルシウムをどのくらい採ったほうがいいとかいうことよりも、運動をしてほしい。摂った材料を骨に置き換えるのは、自分の責任ですからね。

Access